TOMIさんのゆうばり映画祭レポート'05(第16回)

 数年来の念願であった『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭』(北海道夕張市)への 初参加を決めました。毎年2月に開催されており、第16回となる今年(2005年)の日程は2月24日(木) 〜28日(月)の5日間。8月開催の『湯布院映画祭』へは初参加の2000年 以来ほぼ毎年参加している私ですが、北海道はさすがに遠いですし、温暖な 岡山の地に生まれ育ちウィンタースポーツも全くやらない者にとっては、 真冬の開催ということで雪と寒さに恐れをなし、昨年までは具体的に計画を 練る所まで踏み出せずにいたのです。
 それが今回、参加を決意するに至ったのは、次のような理由によるもの。 ほとんどが個人的な理由で、どうでもいい事ではありますが...。
○数年前、映画を通じて知り合った東京在住の友人(以前は北海道に在住)が 毎年のように同映画祭に参加    しており、案内役を頼めること。
○現在の職場が、早めに申請しておけば休暇を取り易い環境にあること。
○昨年の同映画祭は閉幕時期に荒天に見舞われ空港も閉鎖されたが、 2年続けて天候不良になる可能性は低いのではと読み、チャンスだと判断したこと。
○少し悲観的すぎる見方かもしれませんが、映画祭がいつまでも続くという 保障はないでしょうから、継続開催に大きな不安のない今の内に、と考えたこと。 (映画祭の生みの親、元・名物市長の中田氏は、残念 ながら03年9月にお亡くなりに。開会式や閉会式での氏の挨拶は、大きな見ものになっていたそう。 ご存命中に参加したかったものです)
○昨年公開された韓国映画の充実ぶりは恐るべきものでした。各映画賞の 外国映画ベスト・テンでも半分近くが韓国映画で占められるほど。 『ゆうばり』では02年には「猟奇的な彼女」(一般公開は03年1 月)、03年には「ラブストーリー」(04年1月公開)、昨04年には「箪笥」(夏公開)、と毎年の ように話題の韓国映画がいち早く上映されています。きっと今年も”内容に太鼓判の新作”がプログラム に入れられる筈、と読んだこと。(参加申込み後の今月13日に上映作品等が発表され、今年は ”日韓 国交正常化40周年記念”ということで、 韓国映画がアニメも含め6本も上映される事が判明!)

 「幸福の黄色いハンカチ」の舞台となった夕張。その地で開催される 『ゆうばり映画祭』は『湯布院映画祭』より観客数が1桁多いらしく、 各種ツアーが組まれています。私は、東京発のツアーに申し込み。  岡山空港から新千歳空港まで個人で飛び道内発のツアーを利用すると いう手もあるのですが航空運賃が高いため、新幹線で東京まで出て羽田空港発の ツアーを利用した方が安くつくのです。それに、東京在住の友人と一緒に行きますし。 (ツアーの航空会社は、昨年12月にオープンした羽田空港の第2ターミナルを 使用しているANA(全日空)であり、新しい施設を見学できるのも楽しみ。 空弁も忘れず買うつもりです)

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ゆうばり映画祭レポート'05(序)

 新千歳空港からは専用列車が仕立てられ、 ツアーの参加者は、初日から参加可能なゲストの方々と一緒に夕張入り出来る事になっています。 夕張が近づいてくると沿線の駅のホームでは地元の方々が出迎えてくれるそうですし、 夕張駅に到着すると盛大な歓迎セレモニーが催されるのだとか。 また、映画祭の会場周辺では炊き出し等のサービスもあるみたいで、 そういう温かいもてなしに触れられるのも大きな魅力の一つ。 『湯布院』でも食堂や土産物店に入ると、店員が「映画祭に来られたんですか」と 気さくに話し掛けてくれますが、こういう積極的な歓迎行事はありません。 (『ゆうばり映画祭』は夕張市の主催イベントなので、 ここまで地元の人々の協力が得られるのでしょうね)。

 上映会場も『湯布院』は1ヶ所のみですが、『ゆうばり』は7ヶ所ほど有り、 それに比して上映本数も今年は何と70本以上(一般からのコンペ応募作品等も含む)に!  韓国映画以外の外国映画も例年10本前後がプログラムに入れられています。 ちなみに、昨年上映された国内外の主だった作品は「ブラザー・ベア」 「キューティーハニー」「チルソクの夏」「マッハ!」「花と蛇」...など。 今年はオープニングが「シャークテイル」で、クロージングが香川県でロケされた 「阿修羅城の瞳」(主演の市川染五郎・宮沢りえさんもゲスト予定)。 その他は「ローレライ」「ナショナル・トレジャー」の日米の大作、 「チルソクの夏」の佐々部監督の新作「カーテンコール」、『湯布院映画祭』や 『東京国際映画祭』でも上映された奥田瑛二監督の「るにん」...などが予定されています。 観たい2作品が同じ時間帯に別の会場で上映されるケースも出てきますから、 どの作品を観るか、どのイベントに参加するか、の選択にぎりぎりまで頭を悩ませそうです。
 また、コンペが2部門で開催され、グランプリが選出されます (「猟奇的な彼女」は02年の『ヤング・ファンタスティック・グランプリ部門』での グランプリ作品)。もちろん、ゲストも多数(30〜40名ぐらい)来場予定。 前述の方々の他にも、京野ことみ・伊藤歩・相武紗季などの若い女優ゲストの名前が 上っているのが楽しみな所。

 帰ったら、例によってまたレポートさせてもらうつもりですので、 宜しくお願いします。『湯布院映画祭』と違い、シンポジウムはありませんし、 パーティーも1〜2回のみのようですが、何しろ映画の上映本数が半端でなく多く、 映画祭で観た作品だけでベスト・テンが選出できる程のため、 どれくらいの書込み量になるのかは予測不能。

 ところで、『湯布院映画祭』は8月の開催。『ゆうばり』は2月。 ちょうど半年離れています。参加のたび楽しさが増すばかりの『湯布院映画祭』は 1年後の次回が待ちきれない思いですが、これから毎年2月に『ゆうばり』へ 参加するようになれば、半年おきに南と北の映画祭に参加できる事になるので、 寂しさを感じる暇もなくなってくれるのでは---。まあ、それは贅沢というもの。 『湯布院』は新幹線と特急列車を乗り継げば5時間ほどで着きますし、 費用を節約しようと思ったら行き帰り『青春18切符』を利用するという手もありますが、 『ゆうばり』へは飛行機を使わざるを得ず、 費用も時間もかなりかかります。来年以降2度目の参加は難しいでしょうから、 今回は最初で最後のつもりで隅から隅まで堪能してくるつもりです。 そうそう、メイン会場の一つである[ゆうばり文化スポーツセンター]は 日本最大のスクリーンを完備しているのだそう。音響面も含め、しっかり確認してきますので。 (この両映画祭の開催時期が逆だったら、参加する側は気候的にかなり有り難いのですが...。 やはり観光シーズンを外しての開催になるので、この時期になってしまうのでしょうね。 それに、”雪があるからこその『ゆうばり映画祭』”という声も聞きますし。 本当にそうなのか、も確かめてくるつもりです)

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ゆうばり映画祭レポート'05(1)

 お天気にも恵まれ、初の『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭』を 十二分に堪能してきました。たくさんの土産話でポケットは、 はちきれんばかりにパンパンの状態。映画そのものもしっかりと楽しみましたが、 それ以上に心を掴まれたのが---。詳しくはレポートの中で紹介していきましょう。

 第16回目となる今回の映画祭のテーマは”友情”。 色んな国の映画人との友情は勿論ですが、今年は特に【日韓国交正常化40周年】を 記念して【日韓友情年】に定められており、韓国映画が6本も上映されましたし、 同国映画界から数多くの映画人がゲストでやって来てくれました。【『ゆうばり映画祭』の 歴史は、韓国の映画人たちとの相互理解を深め、友情の絆を強める交流の歩み (映画祭の公式カタログより)】と言ってもよく、第1回目からほとんど毎年のように同国の 映画人を審査員やゲストに招いています。今回はその集大成になったのかもしれません。  ≪ヤング・ファンタスティック・グランプリ部門≫で審査委員長を務められたのは、 第1回の本映画祭で審査員として参加され以後も関わりの深い韓国のイ・チャンホ監督。 開幕直前になって飛び込んできたのは、「サマリア」のキム・ギドク監督(本作で昨年の 【ベルリン映画祭 監督賞】を受賞)が急遽ゲストで来夕して下さる事が決定したと いう朗報。また過去にはあの「猟奇的な彼女」が受賞した≪ヤング・ファンタ部門≫の今年の グランプリも、鑑賞した時からたぶんこれだと予想していた韓国映画に輝きました。
 とにかく様々なシーンで印象的だったのが、韓国映画と韓国の映画人たち。今年の映画祭は、 色んな意味で韓国映画が中心であったように思います。

 今回の『ゆうばり』のゲストには、私が今まで4回参加した『湯布院映画祭』で お目にかかった方が多く、そんな過去の実績を武器(?)に気軽に話しかけることが出来、 その分思い出も増えました。初めてお会いするゲストの方とフランクにお喋りすることも可能。 そういう雰囲気に満ち溢れているのが、地方の映画祭の大きな長所でしょう。
 93年にゲストで来られた「キル・ビル」のタランティーノ監督は、 「夕張の雪は世界一美しい! 神が雪を降らせている場所だ」との言葉を残していかれましたが、 その訳がかなりの部分理解できた気がする夢のような5日間でした。 夢の記憶は、それがどんなに楽しいものであっても...、思い出がたくさんあればあるほど、 どんどん忘れていってしまうもの。今回のレポートは、皆さんに『ゆうばり』の 素晴らしさを少しでも知って頂きたいという思いと、個人的には夢の日々をいつまでも忘れぬ ように記録しておくため、との意味合いのものになりそうです。取り出して解凍すれば、 いつでも新鮮な思い出が復元できるよう、キラキラと輝いていた夕張の雪の冷たさで迅速な冷凍保存をめざしたいと思います。春になる前に仕上げられるでしょうか。  拙いレポートではありますが、寒さに強い方も弱い方も、良ければ、雪に覆われた 小さな町で16年も続く奇跡のような映画祭を体験していって下さい。

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ゆうばり映画祭レポート'05(2)

■第1日目 2月24日(木) パート1
 前夜に東京入りしてビジネスホテルに宿泊し、当日の朝、羽田空港で同行する東京在住の 友人と落ち合います。新千歳空港へ着いてから昼食時間が取られているので、空弁は購入せず。 定刻の10時を10分ほど遅れて離陸した飛行機は、好天の下順調なフライトで 約1時間20分後には新千歳空港に降り立ちました。周りは、当然のような雪景色です。
 到着ロビーを出ると、【ゆうばり映画祭応援団】の方たち20〜30人が揃いの法被や ジャンパー姿で「お帰りなさ〜い!」と出迎えて下さいました。 嬉しいサプライズです。いきなりで照れ臭かったため、こちらからは会釈しか返せず、 ちょっと反省。各自で昼食を済ませた後、空港に隣接する新千歳空港駅の改札口前に集合し、 5輌編成の専用列車に乗り込みます。私たち一般のツアー客は5号車で、 メインゲストが1号車、2〜4号車には一般ゲストや上映される作品の関係者・マスコミ関係の 取材陣等が乗っていたみたいです。
 列車は13時に出発。窓外は無論、白銀の世界です。車中では間もなく、 夕張メロンのゼリーとパックのお茶が夕張市からのプレゼントとして配られました。 車内放送で、映画祭の名物プロデューサー:小松沢陽一氏の挨拶が流れます。 少しずつ区切り、通訳によって英訳されながら。”国際”映画祭なのだと実感させられた 最初でした。挨拶の締めくくりは「『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2005』と いう映画が始まります。主役は皆さんです。夢のような5日間をお過ごし下さい」。
 夕張の5つぐらい手前の駅からは、ホームで地元の方たちが出迎えて下さいます。 子供からお年寄りまで。もっともその対象はメインゲストが乗車している1号車中心であり、 私たちの5号車からでは歓迎の舞とかはほとんど見えず、動き出した車窓からホームの 人たちと手を振り合うことぐらい。でも、こういうものは気持ちの問題。凍てつく中、 多くの人たちが待っていてくれるというだけで、心が温められます。後から知ったのですが、 1号車には松方弘樹さんや吉行和子さんらが乗っていらっしゃったようです。
 1時間半程かけて、終着駅の夕張に到着。地名は有名ですが駅は意外なほど小さく、 4・5号車はホームからはみ出してしまうので車中を3号車まで移動して降車です。 改札口が近くなると、吹奏楽による賑やかな曲が聞こえてきます。寒空の下、 歓迎の生演奏曲に選ばれたのは、お馴染み『マツケンサンバU』。市民が200〜300人ぐらい 出迎えてくれています。掛けられる挨拶の声は、ここでも「お帰りなさ〜い!」。 熱い牛乳と、ジャガイモを串に刺したフライも無料で配られて、口の中を少し火傷し ながらご馳走になりました。
 宿は、小高い丘の上にある[ひまわり]という所で、 ここは元は高校だった建物を宿泊所に改装した施設。私たちの部屋は4階。 エレペーターがないので、重い荷物を下げながら階段を上るのが些か大変でした。 部屋は教室を3分の1ぐらいに分割したゆったりとした(がらんとしたとも言います)広さで、 8人分ぐらいの布団は楽勝で敷けるでしょう。風呂は1階の大浴場へ。 そして洗面所やトイレは、学校と同じように部屋の外にあり共同で使用します。 学生時代に戻ったみたいで、なかなか楽しいものでした。 (ツアーで選択できる宿泊施設は3ヶ所あり、一番安い所がここなのです)
 ひと休みした後は、各宿泊施設から出るバスで、開会式の会場となっている [ゆうばり文化スポーツセンター]へ向かいます。これは決してバカにしたり 悪口で書くのではないのですが、ここまで目にした夕張は本当に小さな町でした。 駅の規模は前述の通りですし、駅前には商店らしい商店もほとんど有りません。 バスは国道を走っていきますが、コンビニもなさそうです。スキー場があるので、 駅に隣接して大きなホテル(映画祭のウエルカム・パーティーが開催される場所)は 建っていますが。
 こんな寂しい町で、よくぞ”国際”映画祭を立ち上げ、16回も続けてきたものです。 実は、こう思わせる事こそが、初めて来たゲストや観客を『ゆうばり映画祭』の 虜にする”罠”の第一歩だったとは...。それに気づいた時にはもう、手遅れなのですが。

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ゆうばり映画祭レポート'05(3)

 ■第1日目 2月24日(木) パート2
☆☆☆☆☆ 開会式(1) ☆☆☆☆☆

 バスは10分程で[ゆうばり文化スポーツセンター]へ到着。入口の脇には、 オープニング作品「シャーク・テイル」とクロージング作品「阿修羅城の瞳」の 雪像が作られています。開場時間の17時まで、しばらく行列です。すぐ前には、 韓国人の若者グループが十数人並んでいます。わざわざ韓国からやって来たので しょうか。後から分ったのですが、映画祭で上映された韓国映画のスタッフも混じって いたみたいです。ツアー参加者には、映画祭の全プログラムに入場できる個人名入りの パスが配られており、忘れず首から下げておきます。
 入場開始。ゲストの顔がはっきり見えるよう前方の席をめざしますが、 前から十数列は関係者席が占拠。それでも、中央辺りの関係者席のすぐ後ろを確保することが 出来ました。最終的には千人近い観客が入場していたのでは。マスコミ関係も 多数詰めかけています。色んな看板や掲示も、日本語と英語の2カ国表示。

 17時30分、オープニング・セレモニーの開始です。舞台に設置された何本もの 筒から炎が吹き上がる、ど派手な演出。超大型スピーカーからはドラマティックな 曲が空気を震わせるように響き渡ります。司会は、映画祭ではお馴染みらしい2人の男女。 この開会式、及び日曜日の閉会式とも適度にショー・アップされ、進行もスムーズ、 舞台上のゲスト等の誘導も”ミス夕張”の女性が適確にサポートして...と、 なかなか見事なものでした。また、マイクの前に立つ人物の拡大映像がその後方の スクリーンに映写されるので表情もよく分ります。
 まず≪マックスファクター ビューティースピリット賞≫の授与式です。 これは、映画祭の10回目を記念して設立された賞で、映画界で活躍する プロフェッショナルな女性を毎年4〜5名表彰しており、過去には 中村玉緒・工藤夕貴・高島礼子・原田美枝子・淡路恵子・宮本信子等の各氏が 受賞しています。化粧品の名前を冠した賞━━というのも、ハリウッドの女優たちの メイクアップのため開発され発展してきたのが、このマックスファクターだったのです。
 1人目の受賞者は、女優の吉行和子さん。紹介され、客席から立ち上がり登壇されます。 「マックスファクターは若い頃憧れの化粧品で、大事に使っていました。 先ほど控え室で、副賞として化粧品をたくさん貰えると知って、とても喜んでいます。 それを使って、またこれから頑張ろうと思います」。
 続いても女優です。「深田恭子さん!」。彼女は現在連続ドラマに主演していますし、 各映画賞でも受賞ラッシュとなっている忙しい身ですから、本当に登場するのか 少し心配でしたが、ちゃんと駆けつけてくれました。若々しい黒のドレスに黒い花の飾りを 髪につけたドレッシーな姿。何歳になっても、天然の初々しさは失われていません。 「歴史ある化粧品の名前のついた賞を貰い、私も映画の歴史に少しでも名前を残せるよう、 これからも色んな役にチャレンジしていきます」。フカキョンは 、昨年の快作「下妻物語」でしっかりと2004年の映画史にその名を刻み込みました。

 3人目は、映画音楽の大島ミチルさん。 「今年の映画祭には色々ご縁があって、私が最初に映画音楽を手がけたのが、 本日ゲストでいらっしゃっている松方さんの作品なのです。東映京都撮影所に呼ばれ、 ヤニ臭い部屋でいきなり濃厚なラブシーンのフィルムを見せられました。 その後呑みに連れていかれ、”東映京都に来るのに、一升瓶の手土産もなしか” と脅されたものでした(笑)。そして最新作が、日曜日にゲストで来られる吉永小百合さんの 『北の零年』なのです。ありがとうございました」。
 ヘアメイクの豊川京子さんの受賞コメントは「この映画祭のアットホームな 雰囲気に憧れていました。今回、初めて参加することが出来て、大変うれしいです」。  最後の5人目は、言わずと知れたワダエミさん。1985年の黒澤明作品「乱」で ≪アカデミー賞最優秀コスチュームデザイン賞≫を受賞。最近では、大ヒット作の 「HERO」や「LOVERS」を担当されています。これらの中国映画では、 衣装デザインのみにとどまらず、メイクなども含めトータル的に手がけられているそう。 「日本で貰った初めての賞です」。そんなバカなとびっくりですが、本当なのだとか。 「この所ずっと外国でばかり仕事しています。日本の監督から声をかけてもらえないんです。 この会場には日本の監督も多く来ておられますので、ぜひ仕事の依頼を下さい!」。
 表彰式の終わりは、フォトセッションタイム。5人が舞台の前端近くに並び、 マスコミや一般のカメラマンが正面の客席フロアからフラッシュの嵐を浴びせます。

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ゆうばり映画祭レポート'05(4)

 ■第1日目 2月24日(木) パート3
☆☆☆☆☆ 開会式(2) ☆☆☆☆☆

 次に、客席の数十人のゲストが紹介されていきます。席から立ち上がり後方に向き直って 一礼する彼らへ送られる歓迎の拍手。ゲストの余りの多さに、紹介が一段落ついた時には、 拍手のしすぎで掌が少し痺れたような感じさえしました。  豪華な審査員たちの紹介に移ります。≪ファンタスティック・オフシアター・コンペティション 部門≫の審査委員長は、「ヴァイブレータ」で寺島しのぶさんに数々の主演女優賞を もたらした廣木隆一監督。舞台に登場しての挨拶です、「喋るのも審査するのも苦手。 でも、夕張の白い雪のような気持ちで厳しく審査します」。寺島さんも審査員のお一人な のですが、スケジュールの都合で到着は明日になる予定。  ≪ヤング・ファンタスティック・グランプリ部門≫は、韓国の映画監督イ・チャンホ氏が 審査委員長です。彼は第1回の映画祭に審査員として来夕。以来、何度も映画祭に参加して おられますし、自身の監督作の一部を夕張で撮影し、映画祭で上映された事も。 「そういう積み重ねがあって、今回審査委員長を務める資格が出来たのではないでしょうか。 残念なのは、故・中田前市長の開会宣言がもう聞けない事。新市長がどんな挨拶をする のか楽しみ!(爆笑)今日は中田さんを思い出し、モノマネしてみます(拍手)」。 日本語で「夕張映画祭、バンザ〜イ!」と叫びながら両手を上げて開会宣言を真似ると、 場内からは大拍手! きっとそっくりだったのでしょう。名物だった中田前市長の開会宣言を 一度見てみたかったという、もはや叶わぬ私の願いは、こういう形で半ば実現したのでした。 他3名の審査員は、いずれも日本の映画監督です。「レディジョーカー」の平山秀幸氏、 「世界の中心で、愛をさけぶ」の行定勲氏、「るにん」が本映画祭でも招待上映される奥田瑛二氏。 舞台上に監督が4人も並ぶと、実に壮観です。
 両部門の審査員8名の両端に、映画祭プロデューサーの小松沢氏と プログラミングディレクター:映画評論家の塩田時敏氏が加わり、地元の幼稚園児たちから 花束をプレゼントされます。小松沢氏がマイクの前へ。感激屋の氏は”泣きの小松沢” として有名。「ワダエミさん、国内で初めての受賞だなんて、皆さんびっくりされたでしょう? 『ゆうばり』はそういう目配り、気配りが出来る映画祭なんです。市民と一体となった 映画祭と、全国から来て下さる観客の皆さんとは”相思相愛”と言ってもいいんじゃない でしょうか」、しっかりと涙声になっています。でも、ほんとに温かい雰囲気のセレモニーに 浸っていると、ちょっとした事で涙ぐんでしまいそう。もう、氏の事を笑えません。

 俳優ゲストの松方弘樹さんは、「シャーク・テイル」の日本語吹替版にご出演。 それから、明日25日には別会場で『松方弘樹劇場』と銘打って、 彼の主演作「江戸城大乱」と初監督作品「OKITE やくざの詩」が 上映されます。シャーク・テイルの大きなぬいぐるみを抱きかかえながらの登場です。 彼が吹き替えたのは、オリジナルではロバート・デニーロが声優を担当した役。 「なので、オファーを貰って、すぐ快諾しました」。今夜はこの後、字幕版が オープニングを飾り、吹替版は明後日・土曜日の昼間に上映されます。
 現市長の後藤氏が挨拶に立たれます。イ・チャンホ監督があんな派手な前ふりを したものですから、かなりやりにくかったことでしょう。「夕張市民が随分前から 一致協力して準備を進めてきました」と、まずは型通りの、でも心のこもった挨拶から 始まります。ひと呼吸置いて、「開会宣言は、プレッシャーですね」(笑)。 「中田市長は両手を上げて宣言しました。私は、前市長に敬意を表して片手にしておきたいと 思います」。その言葉通り片手を上げて「『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2005』 開会します!」。場内から割れんばかりの拍手が。メガネをかけた柔和な後藤市長の、 いい挨拶でした。

 開会式も終了の時間━━。舞台の両袖から、クラッカーのように爆裂音と共に数十センチの 長さのテープ状の銀紙が大量に発射され、空中を乱舞します! 舞台に近い私の席には、 銀紙テープが何本も舞い落ちてきたため、記念につい数本持ち帰ってしまいました。 『国際映画祭』の名にふさわしい、華やかで温かな1時間半ほどのセレモニーでした。 本映画祭がこんなに人気のある秘密が、早くも分った気がします。このイベントを 体験しただけで、もう”来て良かった!”と満足感で一杯になったのでした。

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ゆうばり映画祭レポート'05(5)

 ■第1日目 2月24日(木) パート4
☆☆☆☆ ウェルカム・パーティー ☆☆☆☆

 開会式に引き続き、オープニング作品「シャーク・テイル」の上映です。 昨年はクロージングが「ブラザー・ベア」でした。2002年には「モンスターズ・インク」も 上映されましたし、近年は毎回のようにアニメの話題作がプログラムに入れられているようです。 ところで本映画祭には観客の投票によって決定される≪ファンタランド大賞≫という賞も設け られており、各作品の上映会場にて用紙が配られます。その作品を5段階で評価し、 投票するもの。結果発表は、28日(月)に行なわれる『さよならビュッフェ』の 会場に於いて。
 昨年の映画祭の公式カタログに、本会場のスクリーンは日本最大と記載されてありました。 楽しみにやって来てチェックしてみたら、確かに巨大ではありますが、会場自体も大きいため、 圧倒されるほどのサイズには感じられませんでした。それから、音響面について。 ここは言わば体育館ですから若干心配していたものの、シネコンなどのクリアで重厚な サウンドには及ばぬながら、特に不満を抱かないで済むレベルであったと思います。

 「シャーク・テイル」終了後は、バスで夕張駅に隣接するホテル[マウントレースイ]に 移動して『ウエルカム・パーティー』です。開始時間の21時30分頃には、2階のパーティー会場は ゲストや関係者・一般参加者等ですし詰め状態に。
 始まりの乾杯の後、まず≪鉄ちゃんシネマ大賞≫の表彰です。 これは2003年9月にお亡くなりになられた、本映画祭の生みの親・前市長の 中田鉄治氏の夢を引き継いで昨年創設された賞で、【映画文化に関するあらゆる分野で、 『映画が好きで好きでたまらない”映画文化のために熱心に活動している”人または団体』 (資料より)】に贈られます。今年の受賞者は、浦河町の映画館『大黒座』の三上雪子さん。 賞金と記念レリーフ、及び、確か三上さんの亡くなったご主人が好きだった言葉”映画を 見ない人生よりも 見る人生の方が豊かです”が夕張の書道家によってしたためられた 表彰状代わりの書が贈呈されました。
 歓談タイムとなり、列に並んで料理を何種類も皿に盛り、 お腹を満たします。ひと通り食した後、ゲストの姿を求めて会場内を捜索。 まずは廣木監督に接近を試みます。ちょうど新作を撮られている事は、岡山から毎年 『湯布院映画祭』に参加されている映画祭の先輩Oさんより情報を入手済み。 「あの作品(どこまで公表していいのか分らないので、伏せた書き方にさせてもらいます)は、 もう完成されたのですか?」。昨年末にクランクアップ。現在は仕上げの最終段階のようです。 更にその次の作品も、夏から秋にかけて撮影予定なのだそう。ここ3〜4年、本当に精力的に 撮られています。「『湯布院』へ出品されるんでしょう?」。昨年の「ラマン」が、 「ヴァイブレータ」に比べれば不評だったためか、3年連続の『湯布院映画祭』には いまいち乗り気でなさそうな監督でした。本心は違うと思うのですが...。 「30周年でもありますし、ぜひ来て下さい!」と言って、お別れしたのでした。

 壇上では餅つきも行なわれ、海外からのゲストも初めての体験に笑顔で挑んでいました。 松方さんはパーティーが盛り上がった所でご到着。押し寄せる一般客たちにサービスポーズで 「携帯でも何でも構わないから、どんどん撮って下さいよ」。太っ腹です。パーティーは 2つの会場をぶち抜いたようにして行なわれており、小さい方の会場では チャリティーオークションを開催中。売上金は、新潟地震とスマトラ沖地震の被災者の ための募金に回されます。奥田監督はなかなか見つからず、やっと姿を見かけたかと 思えば女性陣に囲まれていて、ちょっとやそっとでは近寄れません。10分ほど経ってから 出直してくると、もう立ち去られた後でした。残念。
 平山監督がおられたので、「2001年に『笑う蛙』が『湯布院映画祭』で 上映された時、参加していた者です」とご挨拶に。監督の最新作「レディ・ジョーカー」は 賛否両論が飛び交っていますが、「たくさん批評されるのは、いい事だと思いますよ」と 歓迎の姿勢。「やはり映画祭は、自分の作品と一緒に来たいですね」。次作も着々と 準備中みたいです、「また、あっと驚くような新しいジャンルの映画を お見せ出来ると思いますから」。「『湯布院』は今年30周年なんですよ。ポスターを 和田誠さんに担当してもらう事になったみたいです」とお教えすると、 「よく口説いたもんですね」と監督も嬉しそうな表情を見せられました。別れ際、 かけて下さった言葉は━━「また、どこかの映画祭で会いましょう」。

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ゆうばり映画祭レポート'05(6)

 ■第1日目 2月24日(木) パート5
☆☆☆☆☆ 「最後の晩餐」 ☆☆☆☆☆

 『ゆうばり映画祭』では連日深夜まで、どこかの会場で上映が行われており、 この日も23時300分から2作品がプログラムに組み込まれています。 私たちが選択したのは[夕張商工会議所]の「最後の晩餐」。 本作は【市民組織ゆうばりシネマサポーターズ】と【ゆうばり映画祭応援団】に よって選ばれたもので、入場は無料。こういう無料上映が30本以上もあり、 このジャンルの作品を集中して追いかけている観客も少なくないようです。
 パーティーが終ったのは23時前。外は北海道らしい冷え込みとなっており、 暖かい館内からいきなり深夜の外気に触れると、余計に寒く感じられます。 慌てて毛糸の帽子を耳まで深くかぶり、手袋をはめたのでした。 私にとっては初めての道を、友人に連れられ会場へと向かいます。車もめったに通らず、 もし一人で歩いていたなら、心細い事この上なかったでしょう。会期中、 何度も行き来する事になる道ですが、この夜は本当に会場へと繋がっているのか 少しだけ不安でした。10分余りで、商店街に何十枚もの映画の看板が掲げられ ている【キネマ街道】の入口に到着。これを見るのも念願の一つであり、 ようやく目にした最初の1枚は「七人の侍」。他にも数枚視界に入ってきましたが、 [夕張商工会議所]はそこからすぐのため、残りは明日以降のお楽しみです。

 建物を2階へ上ると、会議室のような部屋に折り畳みイスが30〜40脚並べられています。 床に傾斜などはないので、前の人の頭が邪魔にならないよう最前列を確保。 観客は最終的には、ほぼ満員の30人ぐらいが集まったでしょうか。 上映前の挨拶には、脚本・監督の福谷修氏と原作者の人気ホラー作家: 大石圭氏が登場。大石氏はにこにこと優しい顔をしておられ、 またなかなかイケメンの監督はとにかく話が面白く、まるでコンビ漫才を見ているようでした。 こういう人たちが、こんな映画を作るとはちょっと信じられないぐらい。 そう、何と”Jホラー初の映倫不許可”作品なのです。監督に言わせると、 「上品なカニバリズム(詳しい意味はあえて書きません)映画なんですけどね」。 日本の場合、カニバリズムが題材というだけでNGなのだとか。
 さて、映画は━━。描き方はそれほどグロテスクではなく、 この手のものとしては本当に上品。香港との合作であり、 英語字幕付きです。主演は、加藤雅也。女優陣は三輪ひとみ・原史奈・前田綾香さん等、 なかなかの顔ぶれ。そして何と、ポスターには写真も名前も載って いなかった松方弘樹さんが重要な刑事役で出演されているのです! 主演の加藤さんつながりで出てくれる事になったのだそう。勿論、 初のホラー映画出演。「あえて宣伝媒体から消したんです、 観客に嬉しい驚きを仕掛けようとして。それからもう一つ、 加藤雅也と松方さんがポスターに写っていると、ヤクザ映画と 勘違いされる恐れがあるものですから。『ハンニバル』や『呪怨』なども 研究し、のりのりで演技してくれました」(監督談)。人の道、 警察官の道を踏み外していく松方さん...。映倫不許可の別の理由は、 刑事の描き方に問題があったからとの事。観客にしてみれば、 その方が面白いのですが。映画の冒頭には女優からのコメントが入り、 最後にはメイキング映像が付加された夕張用の特別パージョンでの上映でした。 こういう作品が無料で観られるなんて! 恐るべし、『ゆうばり映画祭』。

 再び監督が一人で登場。作品によっては、上映後に監督等とのティーチインが 実施されるようになっています。私も一つ質問を、 「本作は現在東京で劇場公開されていますが、映倫を通っていないのに 一般公開は可能なのでしょうか?」。興行連盟に加盟していない劇場では 上映が可能なのだそうです。ミニシアター等にはそういう劇場が少なくなく、 ようやく交渉に成功し公開できたのだとか。「今後、大阪・名古屋・広島などでの 公開が決まっています」。また、映倫の審査には審査料がかかるので、 予算の少ないVシネマなどではそれが惜しくて審査にかけないものも多いのだそう。 そして、ビデオ発売時の”売り”として劇場公開の実績が欲しくて、 無審査でもかけてくれる劇場で公開するので、映倫を通っていない作品の上映は それほど珍しい事ではないようです。
 子供からお年寄りまで家族で楽しめる「シャーク・テイル」を 表の顔とするなら、深夜にふさわしい本作は”裏の顔”。何でも来い、 の『ゆうばり』ならばこその作品と言えるでしょう。初日にして早くも、 両極端の作品に触れる事が出来ました。もう、くらくらです。

 会場を後にしたのは、深夜の2時頃。長い1日でした。 来た道を駅前まで戻り、そこから更に宿舎をめざします。北海道の雪はサラサラで、 歩道や道の脇に積もっている雪が街灯の明かりにキラキラと光っています。 つい見惚れてしまうファンタスティックな美しさ。雪の夜道をてくてくと30分ばかりも歩いて、 ようやく宿舎へ帰りつきましたが、あまり苦になりませんでした。 夜空には煌々と満月が輝き、明朝の冷え込みと好天を約束してくれています。

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ゆうばり映画祭レポート'05(7)

 ■2日目 2月25日(金) パート1
☆☆☆☆☆ 「隣人13号」 ☆☆☆☆☆

 風呂に入り就寝したのは、3時半頃。朝食は7時30分からなので、 7時過ぎに起床。室内は各部屋備え付けのエアコンで暖かですが、 窓には結晶状になった雪が張り付いています。予想通りの快晴━━。 洗面を済ませ、1階の食堂へ。バイキング方式の朝食です。10品以上あり、 フルーツやコーヒーまで用意されています。毎日少しずつメニューが変わり、 最終日まで飽きずに食べられました。その日の上映会場によっては昼食はおにぎりや パンで済ませなければならず、『湯布院』でもそうでしたが、朝食をしっかりと 摂るのが映画祭を元気に乗り切る秘訣の一つと言っていいでしょう。会期中は、 多い日には7ヶ所ぐらいの会場で色々な映画が上映されます。 映画祭への出発前、各々がセレクトした作品を友人と突き合わせてみたら、 1本を除いて見事に一致していました。本日2人がチョイスした1本目の作品 「隣人13号」が始まるのは11時から。まだ時間があるので、朝食後にもう一眠り。 空き時間があれば、睡眠を取ったり体を休めたりして体力の回復に努めるのが、 二つ目の秘訣のようです。

 再び起床し、10時少し前に徒歩で出発します。 他会場の上映開始が早かったため、宿舎からのバスは9時半に出発済み。 会期中は毎朝、主要な宿泊施設から各会場へバスが出ますし、 日中は各会場を巡るシャトル・バスも運行されています。 丘を下る途中で、宿舎のマイクロバスを運転するおじさんが通りがかり「送りますよ」と 声をかけてくれます。駅前のコンビニで食料や飲み物を仕入れていくつもりだったので、 有り難くそこまで乗せて行ってもらいました。いい1日になりそうです。 たぶんここらで唯一のこのコンビニは北海道内だけにあるチェーンの夕張店で、 24時間営業ではありません。確か6時から24時まで。壁や窓には、 過去の映画祭に参加したゲストの生写真を何枚も貼ってポスター風に したものが掲げられています。当店に限った事ではなく、 色んな商店や会場の中にも様々な写真を用いた同様のものが飾られてありました。 ゲストの多彩さは世界規模レベルであり、写真を眺めているだけで 何度もため息が出てしまうほど。
 ここからは昨夜と同じ道を辿っていきます。やがて、 「七人の侍」の看板から始まる【キネマ街道】の入口へ。今日の1本目の会場 [ホテル シューパロ]はちょうど【キネマ街道】を歩ききった辺りに位置するホテル。 到着するまでに、ほとんどの映画看板を目にする事が出来る訳です。 「あっ、『ウエストサイド物語』! 『東京物語』! 『ローマの休日』!」。名作を見つけるたび、つい声が出てしまいます。

 数分でホテルへ。上映会場は2階の宴会場のような場所で、 一応はミニシアターぐらいのちゃんとしたスクリーンもあります。 但しここも床に傾斜がないため、前の人の頭が多少邪魔になる事は避けられません。 うまく最前列に着席。今日は世間ではまだ平日の金曜日、 それでも150人から200人ぐらいが入場していたでしょうか(キャパは350席ぐらい)。
 英語字幕入りで上映された「隣人13号」は、コミックスの実写化です。 あちこちから何度も映画化の申入れを受けながらずっと首を縦に振らなかった 原作者がようやくOKを出したのは、ミュージシャンのプロモーションビデオ等を 手がけてきた井上靖雄監督。本作が初メガホンですが、さすがに映像がしっかりしています。 主人公の村崎十三を演じるのは、小栗旬。小学生の頃に受けたイジメの 復讐を果たすため地元に帰ってきた彼は、アパートの13号室に入居します...。 ”もう1人の主人公”中村獅童が「いま、会いにゆきます」とは180度違う役柄を、 怪演。以前、製作発表会見の席で「好感度が下がるので、 この映画は絶対観ないで!」と半分マジで喋っていましたが、 決して大げさではありません。異様な迫力に満ち満ちていました。 パフィーの吉村由美が、映画が凄惨になりすぎないように持ち味の 軽妙さを適度にふりまいて好演。映画は、初監督作とは思えぬ完成度でした。 原作者がようやく映像化を許可しただけのことはあります。
 上映後は、井上監督の舞台挨拶とティーチイン。「台詞のある映像が初めてでした。 全体的にはテンポよく見せたいと思っていましたが、役者の演技の流れも 重要視して作りました」。「もし海外でリメークされるとしたら、 『呪怨』のように自分で再映画化したいと思いますか?」との質問には、 「基本的には同じものは作りたくないです。今回の出来に満足していますし」。 退場時、監督にサインを貰っていた友人は、映画祭の報道担当からリクエストされ、 監督と握手を交わしているポーズで写真に収まっていました。

 会場の外へ出ると、ロビーのソファーに奥田監督が座っていらっしゃるのを発見。 早速そばへ行って、「昨年の『湯布院映画祭』で少しお話させてもらった者です」と 声をかけさせてもらいます。「るにん」の公開は、秋になるのだそう。 3作目のクランクインも秋頃の予定。「その新作をまた『湯布院』に持ってきて下さい!」。 別に『湯布院映画祭』の回し者ではありませんが、『ゆうばり』はさすがに遠く、 今回は最初で最後のつもりで参加。『湯布院』へは今夏も”帰郷”するつもりですから、 どうしてもこんな言い方になってしまうのです。

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ゆうばり映画祭レポート'05(8)

 ■2日目 2月25日(金) パート2
☆☆☆☆ 「カーテンコール」ほか ☆☆☆☆

 次のセレクト作品の上映会場[市民会館大ホール]は、昨夜の[商工会議所]の向かい。 映画の看板を見ながら、朝来た道を戻ります。看板は、 逆方向からでないと見つけにくい場所にもあり、会期中何度も【キネマ街道】を 行き来しましたが、ほとんどその度ごと新しい看板が発見されたのでした。 [市民会館]にはレストランがあり、早速昼食を取ります。今日はこの後、 こちらの会場に腰を落ち着け、いずれも招待作品である3本を鑑賞する予定。 オープニング作品の「シャーク・テイル」も招待作品であり、先ほど観た「隣人13号」は ≪ヤング・ファンタスティック・グランプリ部門≫(以下≪ヤング・ファンタ部門≫と略) への出品作となっています。会場ロビーの台の上に、嬉しいものが置かれていました。 【ゆうばり映画祭応援団】では、前日行われたイベント等を速報としてまとめたチラシ形式の 【団報】を発行しており、各会場で自由に入手できるようになっているのです。 初日分が刷り上っていたので、楽しく目を通しました。

 15時30分から上映されるのは「カーテンコール」。昨年の映画祭で、 瑞々しい青春映画の傑作「チルソクの夏」が大好評だった佐々部清監督の新作です。 当会館は、かなり立派なスクリーンを有しています。文句のない大きさ。 座席数は約600席で、階段状になっており、どの席からでもスクリーンがよく見えます。 300〜350人ぐらいが入場し、かなりの盛況ぶり。各会場では上映前に必ず司会者が、 その映画の紹介や、ゲストがいらっしゃる時にはインタビュー等を行ってくれます。 小松沢プロデューサーが勢いよく登場。『松方弘樹劇場』のイベントを終え、 こちらへ駆けつけたのだそう。「ここに来れば優しくなれる町なんですよね、 夕張は。さて、この映画は『チルソクの夏』に負けないぐらい、胸にぐっときます。 ハンカチのご用意をお忘れなく。上映後にはゲストの舞台挨拶がありますので、 そのままお待ち下さい」。
 「カーテンコール」は、「チルソクの夏」が好きな人なら同じように引きつけ られるでしょう。ただ、本作は原案が別の人であり、監督自身の体験を元にして 大事に温めて映画化した「チルソクの夏」ほどには胸を締めつけられないかもしれません。 私は涙腺を刺激されまくりでしたけど...。昭和30年代、映画が娯楽の王様だった時代に、 映画館の従業員でありながら幕間芸人として観客に愛されることになった安川修平と、 その家族の物語。「ぶち男前ではないが、いい男」と劇中で評される修平役・藤井隆の 好演が光っています。彼の演技を観ながら、あと10年ぐらいしたらもしかして” 2代目寅さん”がいけるのではと、ふと思ったりしました。年老いた修平役は、 ミュージシャンの井上堯之。井上さんは演技は全くの素人ですが、 「チルソクの夏」の山本譲二さん同様、印象に残る演技を引き出されていました。 佐々部監督は、本業が役者でない出演者の演出が特に見事です。
 修平について取材するタウン誌の記者・香織役を演じるのは、伊藤歩さん。 彼がかつて勤めていた下関の『みなと劇場』を訪ねた香織は、昭和33年より今日まで 勤め続けてきた従業員の絹代(藤村志保)から修平の事をあれこれ聞き出します。 藤村さんは遣り甲斐のある役で、充実のご出演だったでしょう。館内に 「チルソクの夏」のポスターが貼られているのが小さく見えたり、同作の ヒロイン・水谷妃里ちゃんが出演しているのは楽屋落ち的な楽しみ。 そして、当時の流行歌が物語を彩る大切な要素となっているのも「チルソクの夏」 に同じ。最も重要な曲は「いつでも夢を」であり、それを歌う吉永小百合さんは、 奇しくも日曜日にゲストで来夕されるご予定。勿論、 昔の作品の映像も流されます。若き日の倍賞千恵子、吉永小百合、健さんに、 勝新! 頬が緩んでくるのが分ります。引退の舞台で修平が妻のことを紹介する台詞には、 肩が震えて困りました。

 再び小松沢氏が現れ、「さて、ゲストをお迎えしましょう」。 ━━主演の伊藤歩さんと、プロデューサー氏が舞台に登場。大きな拍手で歓迎です。 佐々部監督は現在”泣けるミステリー”と評判の原作を映画化する「四日間の奇蹟」を 撮影中のためおいで頂けず、残念。まずはプロデューサーから、「昨年初めてこの 映画祭に来て、今年もお呼び頂き嬉しく思っています。これが国内初上映です」。 伊藤さんにマイクが向けられると、カメラのフラッシュが飛び交います。肩を出した、 黒の若々しいドレス姿。撮影の舞台裏などを話してくれました。下関や北九州の辺りで ロケが行われたのは、猛暑だった昨年の夏。「劇場内にも熱がこもり、エキストラの 観客の人が熱中症にかかりかけた事もありました」。それでも、こんな作品に 参加できるなら、少々の苦労は我慢できます。この映画に出演したエキストラの 人たちが羨ましい! ”下関シリーズ”は、3作目・4作目と続いていきそうです。 続けていって欲しいです。小松沢さんが締めくくろうとしますが、思いが溢れて言葉が うまく出てきません。氏は、映画館の息子として生まれてきたそうなのです。 「佐々部監督は『半落ち』などのメジャー系も、こういう作品も、バランスよく 両ジャンルのものを撮っています。『カーテンコール』、応援して下さい!」。 秋公開の予定です。

 次作品は、18時20分からの「クライシス・オブ・アメリカ」。1本ずつ入れ替えですが、 外で待つのは寒いため、入場開始直前まで会場内のロビーにいて構いません。 案内があってから、一旦外に出て列に並びます。監督は「羊たちの沈黙」で 【アカデミー作品賞・監督賞】を受賞したジョナサン・デミで、 主演もオスカー俳優のデンゼル・ワシントン。”大統領選の熱狂を背景に、 マインド・コントロールの恐怖を描いた衝撃作(資料より)”でした。
 本日最後の作品は、21時開映の「ロング・エンゲージメント」。上映前には、 司会の小松沢氏が「いきなりですいません」と、鑑賞のため後方の客席にいらして いた本日ご到着の寺島しのぶさんを紹介。廣木監督や伊藤歩さんも来場して おられたようです。「プロの映画人も注目している作品なんです」。ところで、 映画祭の少し前に岡本喜八監督が亡くなられました。「今日、東京では”送る会”が 催されています。『ゆうばり映画祭』も、監督ご夫妻には大変お世話になりました。 そこで━━」。会場のみんなで黙祷を捧げたのでした。

 この日の終映は23時過ぎ。十分遅い時刻ですが、 何しろ前夜は帰路についたのが深夜2時でしたから、それに比べれば随分早い 時間に思えます。きっと、映画祭には”映画祭時間”が流れているのでしょう。 今夜はまともな睡眠が取れそうです。

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ゆうばり映画祭レポート'05(9)

 ■3日目 2月26日(土) パート1
☆☆☆☆ 日韓友情年スペシャル(1) ☆☆☆☆

 今朝も上天気。一番問題なのは飛行機に乗る月曜日の天候なのですが、 この調子だと十分保ってくれそうに思えます。今日は土曜日ということで各会場とも充実の ラインアップです。[ゆうばり文化スポーツセンター]では、「シャーク・テイル(吹替版)」 「ローレライ」「ナショナル・トレジャー」の大作3連発。[市民会館大ホール]では、 【日韓国交正常化40周年】を記念し”日韓友情年スペシャル”と銘打って韓国映画3本を 特集上映。私は、「ローレライ」の原作者:福井晴敏氏の小説の大ファンであり、 1日でも早く同作を観たいと切望していたのですが、3月5日から一般公開されるため見送って、 まだまだ大規模に公開されにくい韓国映画の方を選択したのでした。もし「ローレライ」の 公開が4月以降であったとしたら、待ちきれぬ思いから、 大スクリーンの『ゆうばり』での同作の鑑賞にもっと傾いたかもしれません。 (「ローレライ」は幸いシネコンの一番大きなスクリーンで公開され、 地元における最高の環境で鑑賞できました。小さなスクリーンでしか観られなかったなら、 『ゆうばり』をちょっと恨みに思ったかもしれません。観たい映画ばかり一杯 上映しやがって、と。そうならなくて良かった)
 1本目は、10時30分からの「公共の敵」。午前中の上映にも関わらず、 ここ1〜2年急激に上昇した韓国映画人気を反映してか観客は300人近く入っていたでしょう。 昨夜に続き、まず司会の小松沢氏が登場、「朝早くなのに、多くの人が来てくれたんですね」。 客席には韓国から、『ゆうばり』とは姉妹映画祭の代表団もおいでになっています。 実は開幕直前に、予定外のビッグゲストが来夕してくれそうだとの朗報が飛び込んできました。 そのゲストとは、本日の2本目で上映される「サマリア」のキム・ギドク監督。 同監督は、本作で昨年の『ベルリン映画祭』の【監督賞】を受賞。更に「サマリア」の 次の作品「3−iron(空き家)」で『ヴェネチア映画祭』の【監督賞】にも 輝いています。同じ年に”世界三大映画祭”の内の二つで【監督賞】を獲得するのですから、 凄いとしか言いようがありません。世界で最も注目されている監督の1人でしょう。 「キム・ギドク監督も昨夜、無事到着されました」。笑顔で拍手を送りました。 「さあ、今日もいっぱい楽しみましょう!」。
 「公共の敵」は、「シルミド」のカン・ウソク監督が2002年に4年振りで放った作品。 題名が指すのは、”ヤクザ”や”市民に危害を加える犯罪者”たち。本作には、 いい意味で裏切られました。主人公は、ボクシングで銀メダルを取り、 警部補の位で刑事に採用されたカン。演じるのは「オアシス」の名優ソル・ギョングです。 社会派の堅苦しい問題作かと思っていたら、大違い。 他の者が2階級昇進する間に2階級降格してきた問題刑事カンの捜査ぶりを笑いあり怒り ありで描いた、まるで韓国版「踊る大捜査線」。ということは、パート2もあり...?  そう、「公共の敵2」は今年韓国で公開され、またまた大ヒットになっています。 その予告編も、本編上映前にまだ韓国バージョンのままで披露されました。

 13時からは[市民会館]前の広場で、滞在中のゲスト全員を集めた 『フォト・セッション(撮影会)』が行われます。雪を固めて作ったステージには椅子が 10脚ほど。メインのゲストだけかと思っていたら、大型バスやマイクロバスから続々と 降り立ち、50〜60人のゲストが舞台上に勢揃い。圧巻です!  スキーウエア風の女優らしい華やかな装いで目立っていたのは、 京野ことみさん。彼女は本日深夜に上映される初主演作「鞄・KABAN」 で舞台挨拶を務められます。伊藤歩さんは髪を丸く結い上げ、昨日とは別人のよう。 寺島しのぶさんは、大人の女優の落ち着いた雰囲気。生で見る彼女は2003年の 『湯布院映画祭』以来ですが、同年の主演女優賞を独占し、風格が滲み出ています。 特に誰かの挨拶がある訳でもなく、セッションは2〜3分で呆気なく終了。 私はカメラを持参しませんでしたが、友人は毎回しっかりと映画祭の色んなシーンを フィルムに収めており、今回は36枚撮りで4本分を撮りきったのだとか。 その友人を探していたら、サイン待ちの列に並んでいます。もしや...?!  そう、「サマリア」のキム・ギドク監督が十数人に囲まれているではないですか。 過去4回参加した『湯布院映画祭』でも私は一度もサインを貰った事がなく、 勿論ここまでの本映画祭でも有りません。でも━━。こんな機会は2度とないと思い、 つい列に加わりサインを頂戴してしまいました。監督は近寄り難い感じは全くなく、 どちらかといえば物静かな方ですが、内にはきっと映画に対するマグマのような エネルギーの塊りを抱えておられるのでしょう。

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ゆうばり映画祭レポート'05(10)

 ■3日目 2月26日(土) パート2
☆☆☆☆ 日韓友情年スペシャル(2) ☆☆☆☆

 14時からは、その「サマリア」。同時刻[ゆうばり文化スポーツセンター]では 「ローレライ」が上映され、原作者の福井晴敏氏が舞台挨拶に立つ事になっています。 氏は、俳優ではないためかスケジュールの都合でか『フォト・セッション』には 参加しておられなかったようです。「サマリア」の上映時間は95分。「ローレライ」 は128分。福井氏の舞台挨拶が上映後なら、「サマリア」を観た後タクシーを飛ばせば 間に合うかもと思ったのですが、係員に確認したところ上映前だったため、諦めました。
 観客は300人以上に増えていたでしょう。小松沢氏とプログラミング・ディレクターの 塩田氏が登場。「キム・ギドクさんは現在の映画界を代表する監督です。『サマリア』だけは、 何としてでも上映したかった!」。キャップをかぶった監督が 舞台に登場されます。長く続く大拍手! 通訳は、韓国映画の翻訳でお馴染みの 根本理恵さん。彼女は≪ヤング・ファンタ部門≫の審査委員長イ・チャンホ氏を はじめ主だった韓国人ゲストの通訳を務められ、見事なサポートぶりでした。 監督の挨拶は、「夕張に来られて嬉しいです。現在『弓』という作品の仕上げに かかっており、編集作業を中断してやって来ました。『サマリア』は10本目の監督作。 過去の作品は残忍で恐ろしいと言われていたが、「春夏秋冬そして春」以降は ソフトになってきたと評されるようになりました。『サマリア』も 一見ソフトに思えるが、内容は恐いものを秘めています。でも、途中で驚いても、 どうか最後まで観て下さい。目をそむけずに」。

 本編の前に、主演の少女2人の挨拶がフィルムで流されます。「サマリア」は...、 とても目をそらす事など出来ない、切なく、どこまでも重苦しく、 そして突き抜けている凄い傑作でした。
 上映後はティーチインで、再び監督が登場されます。観客からの最初の質問は、 「水に関する非日常的な映像(「春夏秋冬そして春」の湖の上の寺院、 「サマリア」での湖に入っていく車・・・等)は、いつ頃からイメージするようになったの ですか?」。監督は軍隊生活を海兵隊で過ごし、4年間毎日海を見ていたのだそう。 「海は色んな姿を持っており、生きる姿とよく似ています。水を通して人生を描いて みたいと思って、ああいう映像を撮りました」。友人も質問します、 「映画祭での一番の期待作で、お礼を言いたいほどいい作品でした。 脚本についてですが、オリジナルなのか、原作のある作品もあるのか。 また誰かと共同で書かれるのか、単独執筆なのか教えて下さい」。 「『弓』で12本目になりますが、全てが自分独りで書いたオリジナルシナリオです。 他の人とはどうしても考え方が違うので、自分で書いています。『サマリア』は シナリオではもっと悲劇的なラストでしたが、撮影が始まって改変しました」。 何人もから次々手が上がります。「残酷なシーンに込められた意味は?」。 「残酷だと思えるシーンは、一番美しいシーンだと思って撮っています」。 音楽について、「まず編集まで終えてから、音楽監督に選曲してもらい、 大体その中から決めます」。オリジナル曲ではなく、聴いたことのあるクラシックから 選ぶようにしているのだそう。「『サマリア』は、誰が誰をどういう風に 見ているのか観点を問う作品です。観点が違うから、誤解も生まれる。加害者も、 観点を変えれば被害者であるとも言えるのです」。

 3本目は「DMZ/非武装地帯」。イ・キュヒョン監督が客席から登壇されます。 ジャーナリストとして長年日本に居住され、著作も多数。日本語での挨拶です。 「日本に来てから15年目になります。日本の人に韓国的な映画を見せたいと 思ったんですね。それは何かと考えたら、軍隊なんです。私たちが従軍した当時は 3年間の徴兵(現在は2年間)でした。ほんとに長かった。特に、青春時代の3年間ですから。 軍隊で男は成長します。成長の物語には一番の題材だと思って、 この作品を撮りました」。1979年、韓国の朴大統領が暗殺された時、監督は38度線の DMZに駐留しており、”これは戦争になる”と思い、開戦になったら”30秒で死ぬ”と 覚悟されたのだそう。「この映画で、その時期の恐さと笑い、涙と笑いを一緒に 体験してもらえると思う。先ほどキム・ギドク監督は軍隊で毎日海を眺めていたと 言っていましたが、私にとってはDMZでした」。最後に映画祭の印象をお尋ねします。 「夕張に来て、びっくりしました。京都の映画村を見るような感じで、 ノスタルジアに溢れています。映画の看板などから、子供の頃の懐かしさを感じました。 来て、良かった! 皆さん、今晩のストーブパーティーにも参加して、 私にこの映画の感想を聞かせて下さい」。
 映画は19時頃に終了。外の広場では、その『ストーブパーティー』が 始まっています━━。

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ゆうばり映画祭レポート'05(11)

 ■3日目 2月26日(土) パート3
☆☆☆ 「So Cute」と「鞄・KABAN」 ☆☆☆

 『ストーブパーティー』とは、野外バーベキュー大会のようなもの。 色んな肉が炭火で焼かれたり、鉄板の上で料理されています。鍋ものもありますし、 夕張メロンのシャーベットが小さい塊りに砕かれて配られたりも。 肉が焼きあがるのを囲んで待ちますが、寒空の下いかんせん火力が弱く、 なかなか配給にありつけません。それでも、鹿肉・マトン・すじ鍋などを一応口にして、 気持ちだけカンパしておきました。プロが調理している訳ではありませんから、 味付けはまあ二の次。それなりにワイワイとパーティー気分に浸れましたので、 よしとしておきましょう。そうそう、フジテレビアナウンサーの軽部さんと 笠井さんがご婦人方に囲まれ食されている姿もお見かけしました。お2人はCSで 放送されているエンタメ番組がらみのトークイベントを開催するため来夕されたようです。

 [市民会館]では19時30分から奥田監督の「るにん」が 上映されますが、昨夏の『湯布院』で観ているのでパスして、 [ホテル シューパロ]まで【キネマ街道】を歩いて移動。歩道には、 バケツに水を張って作ったのか鉢をひっくり返したような氷の被いが並べられ、 その中に立てられたローソクの炎が、足元を幻想的に照らしています。
 20時30分から始まるのは、≪ヤング・ファンタ部門≫の 「So Cute(原題)」。これも韓国映画です。たぶん開会式の入場待ちの 列にいたのと同じ韓国人の女の子のグループが列の先頭にいて、客席でも 中央の最前列に陣取っていました。観客は150〜200人ぐらい。フィルムに はまだ字幕が入れられておらず、会場後方に設置した機械から字幕を映写します。 タイミングのずれとか心配しましたが、特に違和感なく観られました。 主役の女の子が、素朴だけどキュート! 過去、韓国映画界からは数多くの ゲストをお招きしているのに、残念というか不思議なことに女優ゲストはたぶんゼロ。 来年はぜひ初の女性ゲストが来夕してくれますように。
 終了後はティーチインです。38歳には見えない若々しい感じのキム・スヒョン監督の デビュー作。7〜8人から次々質問が出され、たっぷり30分ぐらい続いたのでした。
 本日のトリは、招待作品の「鞄・KABAN」。 「So Cute」が終わり、入替えのためホールから出ると、 かなりの人が並んでいます。会場は2階なのですが、列は階段を下って1階ロビーに まで伸びていました。さすが、京野ことみさんは人気女優だけのことはあります。 それでも何とか、中央からは外れましたが前から2列目の席を確保。舞台挨拶で京野さんは、 私たちがいる方のサイドに立たれたので、しっかりと間近で見られました。
 舞台挨拶は、上映前に。深夜の23時30分ですから、まあ前に行うのが当然でしょう。 女優には、ちと酷な時間かも。なんの、まだ若いから大丈夫。ことみさん、連続ドラマ 出演中にも関わらず、よくおいで下さいました。まずは小松沢氏が登場、 「こんな遅い時間なのに、一杯の人が入ってくれてるんですね」。 土曜夜ということもあってか300人近い観客が詰め掛けています。 「今年の映画祭はほんとに盛況で、どの会場もたくさんのお客さんが 入ってくれてるんですよ。新しい映画を観ようとしてくれている。 いい映画祭になっています。さあ、ゲストの方々をお迎えしましょう!」。
 初山監督と主演の京野ことみさん、父親役の大杉漣さんらが登場。 ことみさんにはフラッシュの嵐が、大杉さんには「よっ!」と掛け声が浴びせられます。 ことみさんは、これが映画初主演。初山監督にとっても、初メガホンとなります。 挨拶はまず地元・北海道出身の監督から。シャイな方で緊張しながらも、 「みんなでタッグを組んで、素敵な映画を作りました」と言うべき事は しっかりと口にされていました。黒ずくめの大杉さんは、6年ぶりの『ゆうばり』なのだそう。 「本日は、こんな遅い時間にありがとうございます。寒いと脅されて、 ヒマラヤでも大丈夫そうな高級下着を買って身につけてきたんですが...、暑いです」 などと笑わせてくれます。ことみさんが演じるのは、対人恐怖症の鞄屋の娘。 「喋り方が難しかったです。優しい時間の流れている作品なので、 帰りは外が大変寒くなってるでしょうから、ここでしっかり映画の温かさ に浸っていって下さい」。最後に小松沢氏から一言、 「過去にコンペ部門へ作品を応募してくれた監督なんかが一本立ちして、 劇場公開されるような作品を作って戻ってきてくれてるんですね。こうして若い映画人が 伸びてきているのも、真夜中にも関わらず駆けつけてくれる観客の皆さんのお陰です」。  韓国語の字幕付きでの上映。ことみさんらしい演技が見ものの作品でした。

 帰路についたのは、1時30分頃。【キネマ街道】の途中、橋の下りの緩い傾斜で 初めて足を滑らせ転倒してしまいました。が、雪がサラサラだったので服が汚れる こともありませんでしたし、大杉さんに負けないぐらい厚着していましたので、 別に何でもありませんでした。幸い、夕張で転んだのはこの1回だけ。 こんなちょっとだけ悪い事もあれば、逆も━━。宿舎への登り道で、 同じ宿に泊まっているご婦人が、私たち2人を自家用車に乗せて下さったのです。 こんな時間にこの道を登って行くのは、[ひまわり]に泊まっている 映画祭参加者しかいないだろうと。確か札幌から来られていたようです。 時間が時間ですから、お仲間はもう就寝中で、彼女1人だけで「鞄・KABAN」か、 あるいは別会場での上映に行っておられたのでしょう。気さくになれる、 優しい気持ちになれる、親切になれる...、もしかして映画そのものの魅力より、 人とのふれあいの方が『映画祭』の醍醐味なのかもしれません。

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ゆうばり映画祭レポート'05(12)

 ■4日目 2月27日(日) パート1
☆☆☆ 「人魚姫」と「ビートキッズ」 ☆☆☆

 もう当然のような、好天の朝。今夜はいよいよ閉会式が行われますが、 明日もお昼過ぎまでイベントが控えているので、最終日につきものの寂しさはまだ有りません。 今日のセレクト作品は、10時開映。会場は、昨夜と同じ[ホテル シューパロ]です。 [市民会館]での本日のプログラムは、フランスで大ヒットした感動作の「コーラス」と、 28日に発表された≪アカデミー賞≫で【脚本賞】を受賞した「エターナル・サンシャイン」。 どちらも見逃せない作品ですが、地元での公開が決定しているので、別作品を選択しました。 また[ゆうばり文化スポーツセンター]では、吉永小百合さんをお迎えしての 「北の零年」の上映会。同作は、昨年の映画祭が終了した翌日から夕張でもロケが行われ、 地元の人たちがボランティアスタッフを務めたりエキストラで出演したりと 協力を惜しまなかったため、お世話になった事に対してと大ヒットのお礼に 小百合さんが急遽やって来てくれる事になったのです。【団報】や翌日の新聞記事などで、 大盛況だったのを知りました。

 1本目の韓国映画「人魚姫(原題)」は≪ヤング・ファンタ部門≫への出品作。 ロマンティックで幻想的な、いいポスターです。観客は200人弱といった所。 他会場の話題作の方に多くの人が駆けつけているでしょうから、これぐらいが 妥当な動員なのでは。昨夜の「So Cute」と同様、字幕は会場の機械 から映写されます。
 ふいに行方をくらました父を探すため、父母の故郷の島を訪れた娘のナヨンは、 過去にタイムスリップしてしまいます。そこで彼女は、若き日の父と母が恋を 育てていく様を見守ることになるのでした━━。観ている時は気づきませんでしたが
、主人公とその母親の若き頃の一人二役を演じたのは、何と「スキャンダル」で ペ・ヨンジュンの相手役を務めたチョン・ドヨンだったのです。 中盤辺りからずっと演技の上手さに感心していたものの、本作ではほんとに 純朴な役なので、鑑賞後に確認してみるまで気づきませんでした。それを知り、 作品の評価が星半個ぐらいアップしたように思います。
 上映後はパク・フンシク監督の舞台挨拶とティーチインですが、 次の「ビートキッズ」を最前列で観たかったのでその列に早く並ぶためと、 当会場の椅子は映画館や市民会館等のものと違い長時間座っているとちょっと辛いので、 友人を残して私は会場の外へ。

 13時から上映される招待作品「ビートキッズ」の列はまだそれほど長くはなく、 これなら何とか希望の席を確保できるでしょう。実はこの映画の脚本を執筆されたのは、 映画監督の原田眞人氏なのです。『湯布院映画祭』の実行委員で東京在住のAさんが 原田監督のHPを運営されている関係もあって、 私は同HPの掲示板にも時々書込みを行っており、今回の『ゆうばり』行きとそこで 「ビートキッズ」が上映される件も告知済み。帰ったら、映画の感想等を報告する事に なっているのです。という訳で、しっかり観るために最前列を狙ったという次第。 やがて入場開始となり、ほぼ目論見通りの席をゲットする事が出来ました。本作は、 俳優・塩屋俊氏の監督デビュー作。現役高校生4人組バンド”HUNGRY DAYS”の 森口貴大が主役に抜擢され、ヒロインを最近CMやグラビア等で頻繁に見かけるように なった相武紗季が務めます。観客は150〜200人くらいだったでしょうか。 ”HUNGRY DAYS”の名前を聞いたのは今回が初めて。若い女の子の間で どれくらい人気があるのか見当がつきませんでしたが、特に追っかけなどはいなかったようです。 英語字幕付きでの上映。

 大阪は岸和田育ちの高校生・エージ(森口)は、ひょんなことからブラスバンド部に 入部し、部長のナナオ(相武紗季)という女生徒との交流を通じて、体に刻み込まれた だんじりのリズムをやがてロックで炸裂させることになるのです━━。 観ていて嬉しくてたまらなくなってくる、躍動感溢れる青春映画の秀作!  本映画祭で3本の指に入る大好きな作品となりました。他の2本は「サマリア」と 「カーテンコール」で、それらは最初からの期待作。本作は、失礼な言い方かも しれませんが”拾い物”的なお得感たっぷりの面白さが充満しています。 特に前半は余りの素晴らしさに、別に感動的なシーンでもないのに何だか 涙が込み上げてきて困るほど。映画のリズムと、私自身の生理的なリズムとが 見事にシンクロしていたのでしょう。
 今までほとんど知らなかった相武紗季ちゃんが、 こんなに素敵な女優だとは思いませんでした。彼女に息を吹き込まれたナナオの キャラクターが、もう最高! 一遍に大注目の新人女優となりました。塩屋監督は アクターズクリニックを主宰しており、彼女はそこの生徒で女優としての素質は 以前から認められていたのだそう。ただナナオ役には、ドラムを叩けなければ ならないという難問が・・・。ところがある日、彼女がドラムをやっていた事が 明らかになり、即断でヒロインに決定されたのでした。そういう巡り合わせも含め、 正にはまり役と言っていいでしょう。
 この映画のもう一つの大きな魅力は、大阪弁。エイジの父親役の 豊川悦司さんがいい味出しまくりです。脚本と演出の若々しいタッチは嬉しい驚きですし、 普通ならクライマックスの盛り上がりに使うような場面を惜しげもなく中盤に持ってくる 展開は、十分な疾走感を物語に付加する事に成功。とにかく元気になれる快作です。 劇場で公開されたなら、絶対もう一度観に行きます。監督や主演の2人に、 早く拍手を送りたい! 舞台挨拶は、この後すぐです。

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ゆうばり映画祭レポート'05(13)

 ■4日目 2月27日(日) パート2
☆☆☆ 「ビートキッズ」舞台挨拶ほか ☆☆☆

 塩屋監督、相武紗季さん、”HUNGRY DAYS”の4人が登場。 森口くん以外の3人も、バンドのメンバー役でたっぷりと出演しています。 最初に監督から、「本日はありがとうございます。1月の終わりに大阪で試写会を行い、 今回が2度目の上映になります」。紗季さんは映画以上に大人っぽい雰囲気です。 撮影はたぶん昨年の夏頃。ハイティーンの女の子は、半年も経てば随分と成長する ものですから。「おいで頂いて、ありがとうございます。観て頂けて嬉しいです」。 ”HUNGRY DAYS”の4人は、とにかく頑張ったという事をアピール。 続いては裏話的な内容を語ってもらいます。役者だけあって舞台慣れしている監督は、 「音楽面が素晴らしい仕上がりになりました。スキップしたくなるような映画を 作りたかったんですね。原作と”HUNGRY DAYS”と相武紗季に出会えて 出来上がったこの映画で、これから勝負するぞ!って感じです」。 紗季さんは撮影の思い出を、「印象に残っているのは、マーチングバンドの 大会のシーンですね。ずっと練習してましたから。みんなの頑張りが 表われていたと思います」。ナナオとの共通点を訊かれ、 「悩みを人に打ち明けられない所が似てるかな」。森口くんは、父親役の豊川さんとの 取っ組み合いの喧嘩のシーンを挙げました、「どうやろうかと思っていたら、 『本気でこいよ』と言ってもらい、抵抗なく出来ました」。  観客からの感想をお伝えするコーナーは設けられていませんでしたが、 もしあったなら、素晴らしい映画を届けてくれたお礼を申し述べると共に、 こんな素敵な作品で主役を務める事の出来た主役の相武さんと森口くんに 「おめでとう!」の祝福を贈っていたでしょう。本作は4月上旬に、 地元の大阪で先行公開。東京等では6月頃の予定です。最後に監督からお願いが、 「口コミで広めてほしいですね。北海道はヒットの発信源になる事が多い。 だから、ここへ来たんです!」。

 会場を出てみると、監督はロビーにとどまり、サインに応じたり映画の感想を 聞いたりしていらっしゃいます。私もひと言お伝えしたくて、列に。サインを 貰いながら、「いい映画をありがとうございます。そして、ここまでの 作品を完成させられて、おめでとうございます。映画祭でベスト3に入るぐらい 大好きな作品でした」。帰ったら、原田監督のHPに感想を書き込む旨お話しすると、 「素晴らしい脚本を書いてくれた原田監督のお陰です。宜しくお伝え下さい」。

 この後は[ゆうばり文化スポーツセンター]にて17時よりクロージング作品 「阿修羅城の瞳」の上映と、引き続き『受賞式・閉会式』が執り行われます。 当ホテル前からも専用バスが出ますが、まだ30分ばかり時間があるため、 昼食へ。外は・・・、雪になっています。ダウンジャケットのフードを かぶって向かうのは、ホテル近くの「藤の家」というおそば屋。 カレーそばが名物だと事前に調べておいたのです。映画祭ゲストの 色紙が大量に飾られた店内では数人が順番待ちしていたものの、5分ほどで座れましたし、 お客のほとんどがカレーそばを注文するので出来上がるのも早く、 バスの出発時刻に無事間に合いました。

 同じようにバスに揺られながら開会式に向かったのが、3日前の木曜日。 あっという間の4日間でした。車窓から、降雪に煙る周りの家並みを眺めながら、 改めて感嘆します━━”こんな小さな街で、こんな素晴らしい国際映画祭が 開催されているなんて!”。不思議です。そして、16回も 続いている事が嬉しくてたまらなくなります。
 バスは間もなく[ゆうばり文化スポーツセンター] へ到着。開会式の時のような列はありません。もう開場しているのかと思いきや、 雪が降っているので、列は館内のロビーに蛇行して作られていたのでした。 もう200〜300人が並んでいるでしょう。前の方の席につくのは難しいかもしれません。

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ゆうばり映画祭レポート'05(14)

■4日目 2月27日(日) パート3
☆☆☆ 「阿修羅城の瞳」と『授賞式・閉会式』(1) ☆☆☆

 開場時間となり、20〜30人ずつ区切られて入場していきます。 開会式よりはゲスト席が少なくなっており、一般席が前の方まで 用意されていますが、二つ並んだいい席は見つかりません。少し 後方に友人の顔なじみが座っていて、一旦はその隣りにしたものの、 後方の通路の後ろの席が階段状になっており見易いし、ゆったりと 幅広であることに気づき、そちらへ移ったのでした。どんどん観客が 増え続け、広い館内がほぼ満席に。テレビカメラも5〜6台入っています。
 「阿修羅城の瞳」の舞台挨拶。滝田洋二郎監督と主演のお2人、 市川染五郎さんと宮沢りえさんが大きな拍手に迎えられ登場されます。まず監督から、 「先週完成したばかり。初の上映になります」。染五郎さんが簡単に映画の内容を紹介、 「恋をすると鬼になる宿命を背負った女と、江戸で一番の鬼殺しの男の物語です。 私の役は、かなりカブいてます。りえさんはノースリーブの黒のドレス姿、 「鬼になるぐらい恋するってカッコいいですよね」。外が寒かったので、 と少し恥ずかしそうに、赤のレッグウォーマーをつけられている事を告白。 最初からのファッションのようで、全然おかしくありませんでしたよ。 撮影に関して監督は、「現存する日本最古の芝居小屋の金丸座(香川県) でロケし、昔の空気と場所に触れ、いいシーンが撮れたと思います」。 りえさんは、「染五郎さんはいつも役のことを考えており、常につばき (役名)に恋してくれていました」。初めての立ち回りにも挑戦、 「かかってきてくれたスタントマンさんたちに随分お世話になりました」。 監督は何度か当映画祭へ来られた事があるそうですが、お二人は初めて。 薄着で寒そうに見えるりえさんを司会者が気にしますが、「大丈夫です。 『北の国から』のロケで富良野に長期間いましたから」。 最後に映画祭の感想を訊かれ、りえさんは「こんな雪の多い寒い地に、 こんなに熱い映画祭があるなんて・・・!」と目を輝かせていました。 そういう映画祭の締めくくりとしてご自分の主演作が上映される事に も感激しておられたのでしょう。

 染五郎さんが語られた通り、「阿修羅城の瞳」は鬼殺し・病葉出門(わくらばいずも)と、 真実の愛にめぐり逢ったとき伝説の鬼・阿修羅王に変身してしまうつばきとの、極めて カブいた純愛物語。昨年度の主演女優賞を数多く獲得し、 現在のりにのっている宮沢りえさんが、とても魅力的に撮られていました。 清潔感を失わない妖艶さを全身から溢れさせ、深みのある美しさに視線は釘付け。 彼女を観ているだけでも十分に楽しめました。本作のもう一つの注目は、 「パッチギ!」のヒロイン役で眩いばかりに輝いていた沢尻エリカさんが出演している事。 彼女の役は、渡り巫女(軽業師のように大道芸でおひねりを貰っているような集団) 仲間でのりえさんの妹分的存在でしたが、出番がほんの少ししかなく残念でした。

 上映が終ると間なしに、舞台ではハープをメインにした弦楽四重奏が奏でられ始めます。 その演奏にのって、スライドでスクリーンに映写されるのは、映画祭の様々な場面━━。 「隣人13号」の井上監督と握手を交わす友人の姿も登場しましたし、 会期中に第1回からの累計観客数が30万人に達し、記念の30万人目に確か ”映画祭の永久無料招待券”が贈呈される所も映し出されました。 今映画祭の観客数は過去最高の26500人余りを記録したそうです。
 『授賞式・閉会式』は、≪ファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門≫の 受賞作の発表から始まります。まず、プログラミング・ディレクターの映画評論家: 塩田時敏氏が挨拶を。韓国映画と同国の映画人が目立った今映画祭ですが、 開幕直前に哀しいニュースが報じられました。「ブラザーフッド」等に 出演されていた韓国の人気女優イ・ウンジュさんがお亡くなりになった事。 塩田氏が驚きの事実を語られます、「実は彼女に、 今回の映画祭の審査員を要請していたんです。一度は引き受けてもらえそうな感触 だったのですが、結局流れてしまい...。来夕してくれていたなら、 映画祭の温かさに触れ自殺を思い止まってくれたのではと、本当に無念です」。 失礼ながら、いつもはどちらかと言えば無愛想な塩田氏の口から、 こういう心情が剥き出しにされたような言葉を聞かされると、 余計にじ〜んときてしまいます。「夕張市民と『ゆうばり映画祭』は 世界の映画人を応援します。ここへ来て下さい、勇気を取り戻せます!」。

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ゆうばり映画祭レポート'05(15)

■4日目 2月27日(日) パート4
☆☆☆☆☆ 『授賞式・閉会式』(2) ☆☆☆☆☆

 ≪ファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門≫の 【審査員特別賞】は、保坂大輔監督の「世界は彼女のためにある」。 審査員のミッシェル・ソン氏(韓国)から「才能を感じた。次回作を観てみたい」との 選評が紹介されます。監督は、「思ってもみなかったので驚いています。 スタッフたちと感動を分かち合いたい。来年も来られるよう頑張ります」と 喜びの声を。【グランプリ】は、真利子哲也監督の「マリコ13騎」です。 真利子監督は、昨年に続き二年連続でのグランプリ受賞なのだとか。 アレックス・ツァールテン審査員(ドイツ)から「グランプリに相応しい才能を示した」 との賛辞が送られます。どちらも、たぶんこういう所でしかキャッチ できない作品でしょうから、時間が合えば観たかったのですが...。 ほんとにこの映画祭は、上映作品が多すぎます! 寺島しのぶさんも審査員のお1人、 「皆さん、お疲れさまでした。初めて審査員というものを務めさせてもらいましたが、 1人の客になったつもりで候補の12本を観ました。人に何かを伝えるというのは 難しい事なんだと、改めて思い知らされました。 来年もまた来たいぐらいです」。真利子監督の受賞の弁は、 「去年は満足に挨拶も出来ませんでした。今年は、 テンションが高くなるような作品を作ってきました。 気合いでも何でも込めて、表現に結びつけたい。またゼロから始めたいです」。
 審査委員長の廣木監督からは総括の言葉、「受賞したスタッフの皆さん、 おめでとう。選から漏れた作品の関係者の皆さんもお疲れ様でした。 僕も何年か前にここで賞を貰ったのを思い出します。審査員全員が面白く観たのが 【グランプリ】を獲った作品でした。どの作品も、多少乱暴ではあっても 熱が伝わってきました。みな、凄く上手い。テクニックに驚きました。 熱が伝わってくる作品が好きなので、これからもそういうものを 『ゆうばり』で観たい!」。

 続いては、≪ヤング・ファンタスティック・グランプリ部門≫。 【グランプリ】作品は、明日10時より[市民会館大ホール]に おいて無料上映会が開かれます。観られなかった作品の中から選出されれば 一番いいのですが。まず【南俊子賞】(1993年に亡くなられた映画評論家の 南俊子さんの遺志を継ぐべく、翌年に創設された賞)が、映画評論家の 品田雄吉氏より発表されます━━井上靖雄監督の「隣人13号」。 友人が握手している所を写真に撮られた監督の作品です。井上監督は ちょっと信じられないといった表情で、「海外の色んなコンペに出して、 バイオレンス色が強く残酷すぎて拒絶されてきたが、『ゆうばり』は 受け入れてくれた。何なんだ、『ゆうばり』は!?(笑) 遠方からのお客さんも多く観てくれて、感謝しています」。 品田氏が満足そうにコメントされます、「気持ち悪い映画です(笑)。 それが”売り”。うまく気持ち悪くなっており、成功している。 とにかくアイデアがいい。いつしか、早く”13号の獅童”が 出てこないかなと願っていました」。
 【審査員特別賞】は、フランス映画の「INNOCENCE(原題)」。 時間が合わず、観られなかった作品です。長身の女性監督 ルシール・アザリロヴィック氏は、控え目に喜びをふりまきながら、 「ありがとう。夕張に来られただけで嬉しかったです。 友人もたくさん出来たし、選んでくれて大変嬉しいです。 日本で公開してくれる配給会社にも感謝します!」。  【グランプリ】の発表は、審査委員長のイ・チャンホ監督。 「寂しい...。発表してしまうと、映画祭もいよいよ終わりに近づいてしまいますから。 でも...、発表します。━━『人魚姫』!」。韓国映画なので、 くしゃくしゃの笑顔です。パク監督は謙虚に、「エントリーされた他の5作品も、 とても素晴らしかった。皆さんを代表して私が貰ったような気がします。 参加でき、感謝しています。観客の皆さん全員にお礼を!」。
 審査員からの選評。奥田監督は役者の血がそうさせるのか、爆笑させてくれます。 「俺もまだ2本しか撮ってないのに、何で≪ヤング・ファンタ≫のコンペに 招待されないんだろうね。あ、50歳過ぎると、もうヤングじゃないんだ(笑)。 パク監督が『人魚姫』で描いた愛情が強烈な印象だった。審査員の意見も一致した。 『INNOCENCE』は少女世界に引き込まれていった。 次の作品がどういうものになるのか楽しみ。『So Cute』の監督も、 二作目を早く観たいと思わされました」。行定監督は、 「普段は審査される側。評価する側はつらいです。世界には魅力的な女優が たくさんいます! 韓国の二作品とも女優がすごく良かった」。 平山監督も審査の大変さに言及、「選ぶのは難儀なことです。 審査員が別の人間だったら、他の作品に賞がいってたかもしれません。 今回の受賞は今日限りのものとして、また明日からは新しいものに取り組んで いって下さい」。イ監督が締めくくりとして、「受賞作はスムーズに決まりました。 世界にも誇れる結果です。3人の監督と共に審査できて光栄に思います」。

 ゲスト全員がステージへ登壇。観客へのお礼に、ゴム製のサインポールが投げ 入れられます。私たちが座っているのはかなり後方なので、 とても席までは届きません。立って、通路を前方へ移動。待ち構えていると、 うまい具合に私の方へ1個飛んできます...。空中でのキャッチに成功!2個目も 狙ってみましたが、さすがにもう取れそうな所へは来ませんでした。 席へ戻ってサインを確認すると、「ビートキッズ」の文字!  相武紗季ちゃんのものなら大きなガッツポーズを作れたのですが、 ”HUNGRY DAYS”のサインだったので、拳で気持ちだけのポーズを小さく 一つ。でも、大好きな作品の出演者のサインポールですから、いい記念になりました。
 市長がマイクの前に立たたれます、「あっという間の4日間。私も色んなイベント に行きました。観客の皆さん、ゲストや関係者の皆さん、ポランティアスタッフの方々、 市民の皆さんに多大なる感謝を。夢と希望と元気を貰いました。 来年またお会いしましょう! 閉幕を宣言します」。

 外は、雪も止んでいます。時刻は、20時30分頃。駅へ行く無料送迎バスを 待っていると、道内から来て今夜帰る人たちが札幌行きのバスへ乗り込んで いくのが見えます。翌日にまだイベントが残っているとはいえ、 閉会式という大きなセレモニーが終了すると、さすがに”これで 映画祭も終ったな”と少なからず寂しさを覚え始めます。が━━、 最終日には、記憶に残る出来事がなお幾つも待っていてくれたのでした。

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ゆうばり映画祭レポート'05(16)

■最終日 2月28日(月) パート1
☆☆☆ 予期せぬ遭遇と[シネマのバラード](1) ☆☆☆

 最終日にして初めての雪の朝━━。しんしんと降っており、 幻想的な風景に目を奪われますが、帰りの飛行機の事がちょっと心配にも。 昨年は閉幕の頃ものすごい荒天で飛行機が欠航になり、日曜日の夕方の 便で帰ろうとした友人は、何と夜行列車に十数時間揺られて東京まで 戻ったのでした。それでも、作品やイベントが大満足だったので我慢できたのだそう (翌月曜日は飛行機どころか、列車やバスまで止まったのだとか)。 新千歳空港の出発予定時刻は17時30分とまだ10時間以上先なので、 今からやきもきしても仕方ありません。さあ、夕張での最後の朝食です。 食堂に集まる宿泊客の数も昨日までの数分の1になっており、 祭りの後を実感。

 荷造りをして、≪ヤング・ファンタ≫の【グランプリ】作品 「人魚姫」が上映される[市民会館]まで宿からのバスで移動します。 降り続く雪の中、車窓から街並みを見ていると、映画祭が終わり、 夕張は春までもうひと眠りするために雪に覆われつつあるのでは、 といった錯覚に捉われたりもしました。12時からの『さよならビュッフェ』も [市民会館]の3階か4階で行われる事になっており、本日は大ホールの ロビーに荷物やコート類の一時預かり所が開設されています。友人も私も、 「人魚姫」は鑑賞済み。重い荷物を預ける事が出来なければ、同作を再び 観るかロビーで時間をつぶすかぐらいしかありませんが、幸い身軽になれたので、 昼までの約2時間を散策に充てる事にしました。
 まずは記念写真から。自分たちが写ったものを全然撮っていなかったので、 【キネマ街道】を脇道の方まで入ったりしながら色んな映画看板をバックに して互いを撮り合います。すると、[ホテル シューパロ]の前で、 寺島しのぶさんたちがチェックアウトしてタクシーに乗り込もうとしている所に 遭遇したのです! 会期中、寺島さんとは会話できそうな機会が 一度もないままここまで来ていました。せっかくのチャンスですし、 話しかけてご迷惑になりそうな状況でもなかったので、 言葉をかけさせてもらう事に。「一昨年の『湯布院映画祭』で 少しだけお話させてもらった者ですけど」とご挨拶すると、 寺島さんはさり気なくサングラスを外して下さいます。 彼女が「ヴァイブレータ」以来となる主演作を撮影された事は、 さる筋より情報入手済み。「『湯布院映画祭』は今年30周年ですから、 ぜひ新作を持ってまた『湯布院』に来て下さい!」とお願いしたのでした。 1年後の『ゆうばり』よりは今夏の『湯布院』の方が当然時期的に近く、 また私の住む岡山からも『湯布院』の方が行き易いため、 ついそう言ったのですが、寺島さんからは「来年も『ゆうばり』に来て下さい、 ではないんですか」と笑顔で叱られてしまいました。 そうそう、ここは夕張でした。『さよならビュッフェ』には出席されず、 これから東京へ帰られるのでしょう。寺島さんの後、 ホテルから出てタクシーに向かおうとされているのは、伊藤歩さん。 反射的に彼女にも声を掛けさせてもらいました。「『カーテンコール』良かったです。 劇場で公開されたら、また観に行きますから!」。伊藤さんも、 会釈で応えてくれました。
 こんな所でゲスト女優のお二人に会えるなんて...! 雪が降っているため最初はちょっと気乗りしなかった散策ですが、 歩き回っていて本当に良かった。休息も大事ですが、元気な時は空き時間は どんどん出歩くべきですね。そうすれば、こういう予期せぬ出会いが 訪れてくれる事もありますから。

 まだ時間は1時間半ぐらい有り、私たちが次に向かうのはそこから歩いて15分程の [郷愁の丘ミュージアム]。ミニテーマパークといった施設で、 その中に[シネマのバラード]という”映画の街・夕張”ならではの 映画資料館があるのです。館内の映写室では、金曜日と土曜日の二日間で13本もの 作品が上映されていました(全てが無料上映の作品)。 会期中は各会場を巡るシャトル・バスが運行されていましたが、 この日はもうそれもなく、雪が降っている中、とぼとぼと歩いて一層さびしい 郊外の高台をめざします。周囲は”正に北海道!”という感じで、 決してつらい道のりではありませんでした。友人も初めて訪れる場所であり、 そもそもこの日の朝、友人が本映画祭での顔なじみから[シネマのバラード]に 「猟奇的な彼女」(2002年に≪ヤング・ファンタ≫のグランプリを受賞)や 「ラブストーリー」(2003年に招待上映された、「猟奇的な彼女」のクァク監督の次作) の撮影に使われた小道具などが展示されていると聞かされ、二人とも両作が大の お気に入りなので、訪れる事にしたという次第。
 [シネマのバラード]の玄関脇には、怪獣の立像や「西部警察」 で使用されたパトカーなどが展示されています。先ほど[ホテル シューパロ]で 手に入れた割引券を使って入場。そこには、前市長の故・中田鉄治氏を偲ぶ” ある物”が展示されていたのでした━━。

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ゆうばり映画祭レポート'05(17)

■最終日 2月28日(月) パート2
☆☆[シネマのバラード](2)と『さよならビュッフェ』(1)☆☆

 あまり期待などしていなかったのですが、館内には「男はつらいよ」全作品のポスターを 始め、昔のものから最近のものまで数百枚の貴重なポスター類が飾られており、 映画ファンにとってはそれだけでも見応え十分。「北の零年」など 夕張ロケされた作品を含め色んな映画の衣裳や小道具も展示されていますし、 『ゆうばり映画祭』コーナーも充実しています。第1回目からの公式カタログ、 毎回作成している【応援団】の法被、ゲストの色紙や手形のレリーフの数々...。 過去の映画祭ゲストの舞台挨拶等のビデオも放映されています。全然時間が足りず 途中からは駆け足になってしまい、残念でたまりません。今度来る機会があれば、 3〜4時間腰を据え心行くまで見尽くしたい資料館です。「猟奇的な彼女」と 「ラブストーリー」(本映画祭で上映された時は原題の「クラシック」)の コーナーには、絵コンテや撮影で使用された手紙などの小道具類、そして「ラブストーリー」の ポスターやチラシに写っているソン・イェジン(現在撮影中の 「四月の雪」でペ・ヨンジュンと共演)が着ている女学生の 制服などマニア垂涎の品々が陳列されてありました。
 そんな盛りだくさんの展示物の中で最も私の心を捉えたのは、 ”本映画祭の生みの親”でもある前市長の故・中田鉄治氏の映画に賭けてきた 情熱が時を超えて伝わってくる”ある物”なのです。 炭坑の町だった夕張。幾つもあった映画館も、炭坑の閉鎖に伴い、 一つ減り、二つ減り...。とうとう無くなってしまったとき、 当時『教育委員会』の課長だった中田氏は35mmの映写機を市民会館に導入し、 札幌にあった映画配給会社を回って買い付け、自らチラシを作って市民のために 上映活動を続け、映画の灯を守ってきたのでした。その頃からの人脈があったればこそ、 『ゆうばり映画祭』は何とか産声をあげ、回を重ねて成長し、 今日のような規模にまで辿り着いたと言えます。ガラスケースに 大切に保存されてあったのは、その手作りチラシの分厚いファイルなのです。 もうすっかり『ゆうばり』の虜になっていた私は、チラシにまつわる 説明を読みながら危うく落涙しそうになったのでした。夕張にいると、 どうしてこうも涙もろくなってしまうのでしょう。

 道を下りながらひらめいた事...、この映画祭の成り立ちは”映画になるぞ!”。 もっと詳しく色々なエピソードを知りたい、映画で観たい!と願ってしまったのです。 『映画祭』そのものを題材にした映画というのは、全くと言っていいぐらい 記憶にありません。『ゆうばり』の歴史には、まるで映画みたいな出来事が数え 切れないぐらい繰り広げられてきている筈。毎年多くの映画人が来夕しながら、 誰も映画化を考えなかったのでしょうか。ぜひ実現して、この地でプレミア 上映してほしいものです。

 [市民会館]に着くと、「人魚姫」の上映もちょうど終わり、多くの人が階段を 上って『さよならビュッフェ』の会場へ向かっている所。立食形式のお別れパーティーで、 入口の脇には今映画祭のスナップ写真が何十枚もボードに貼り出されています。 会場のテーブルに並べられているのは、婦人会の皆さんの心のこもった手作り 料理の数々...。後で頂いてみると、初日の夜ホテルで開催された 『ウェルカム・パーティー』の料理より美味しく感じられたのでした。 気持ちの問題ばかりでなく、お世辞抜きで美味しかったです。 婦人会の皆さんも壁際に控えられており、料理やお汁をよそって下さいます。 こういう光景を目にすると、『ゆうばり』は市民全員がサポーターであったり スタッフであったりするんだなと強く実感。
 乾杯の後、テープルで料理に専念していると、塩田氏がすぐ横に やって来られました。思わず「閉会式でのイ・ウンジュさんについてのお話、 胸にぐっときました」と話しかけると、「どうも...」といつもの感じで軽く苦笑い。 これからもプログラミング・ディレクターとして素晴らしい作品を『ゆうばり』で 紹介して下さい。お酒や料理がほどほどに進んだ頃合いで、ゲストの皆さんから 最後の挨拶を頂戴していきます。審査委員長を務められたイ監督は、奥様とご子息の三人で 壇上に、「私は韓国では『ゆうばり映画祭』の宣伝部長をやっています。今年は、 小松沢さんの”泣き”が少ないのが残念(笑)。帰るまでには、いつもの”泣き”が 見られますように」。平山監督は次回に向けての抱負を、「作品と一緒でないと寂しいです。 今度は新作を持ってやって来ますので」。「キル・ビル」に出演された女優の ジュリー・ドレフュスさんが、飛入りゲストで帰ってきてくれています。 お上手な日本語で、「この映画祭でタランティーノ監督と出会い、『キル・ビル』に 出演する事が出来ました。いつの日かまた、帰ってきたいです」。 他の皆さんも口を揃えて「また来たい」と挨拶を締めくくっていましたし、 特に外国からのゲストが市民の熱いもてなしに対して嬉しい驚きを叫んでいました━━ 「到着した時の駅前でのすごい歓迎から始まり、今日のこのパーティーまで!  こんな映画祭初めてです!」。『ゆうばり映画祭』は、外国の映画人の 間で驚くほど有名だと聞いたことがありますが、納得しました。 『さよならビュッフェ』は、ゲストを生で見るのも何度目かになり、 初日のパーティーのように彼らに殺到するというような事がないので、 話をしたりサインをもらうにはチャンスみたいです。
 観客の投票で選ぶ≪ファンタランド大賞≫が発表されます。 大賞「CHARON カロン」の高橋玄監督は挨拶の途中で声を詰まらせ、 それ以上続けられなくてマイクを隣りの主演男優に渡したのでした。

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ゆうばり映画祭レポート'05(18)

■最終日 2月28日(月) パート3
☆☆☆『さよならビュッフェ』(2)と、さよなら『ゆうばり』☆☆☆
 本映画祭には毎年、各映画会社のトップも訪れています。 以前『キネマ旬報』の編集長を務められていた、現・角川映画社長の黒井和男氏が ちょうどいらっしゃっており、挨拶に立たれました。確か氏が編集長だった当時、 小松沢氏は同誌のパリ駐在員か何かをされていて、「今でも頭の上らない人」 なのだそうです。まだ挨拶に登壇してもらっていないゲストといえば...。 小松沢氏が紹介、「毎年、映画祭には盛り上げ役になってくれるゲストがいます。 今年はこの人━━兄貴的存在の奥田瑛二監督でした」。”兄貴”が少し照れながら マイクの前へ、「今回はうまく『るにん』と一緒に来ることが出来ました。私は 他の映画人より参加できるチャンスが多いんです、監督と役者の二刀流ですから。 10月より次の監督作品がクランクインします。来年の映画祭が開催される2月頃に ちょうど完成しているでしょう。また、呼んでもらえますように!」。奥田監督は、 受賞した作品の監督のみならず、来夕していた若手監督たちの多くに映画の感想や 励ましなど声をかけて回っておられたそうです。[市民会館]の隣りは、 夕張市役所。最後は当然、映画祭の実行委員長でもある後藤市長から。 氏の挨拶を聞くのも3度目となります。いずれも心のこもったとてもいい内容のお話で、 少なくとも氏が市長でいる間は『ゆうばり映画祭』は 大丈夫だと思わせてくれるような方でした。

 これでイベントは全て終了しました。専用バスで駅に隣接するホテル [マウントレースイ]へ移動し、ロビーで専用列車の車両ごとに整列して 待機。雪は、いつの間にかやんでいます。会期中、天候にはほんとに恵まれました。 適度に雪も降って、北海道気分を味わわせてくれましたし。 列車の出発は14時15分。14時頃にロビーを出て駅のホームに 向かう私たちを、到着時ほどではありませんが数十人の夕張市民が 旗を振りながら見送って下さいます、「来年また帰って来てね〜!」。 お手伝いして下さった市民の方たちの中には、映画祭が終って2〜3日は 何もする気になれないという人もおられるとか。そんなにのめり込むほどの 手厚い歓待に触れる機会が多いのが、ゲストの方々。一度来れば、 いっぺんに映画祭に魅了されてしまうのも当然かもしれません。 一般の参加者だって、きっとそう。こんな遠方まで来てくれた事に 対する感謝の気持ちで夕張市民がもてなしてくれ、参加者たちはここへ来るのに 要した労力をはるかに上回る歓待ぶりに感激し、リピーターになっていくのでしょう。 改札口の所には旗を持った市長のお姿もあり、私も思わず「お世話になりました!」と ひと言お礼を申し述べたのでした。

 見送ってくれる子供たちに車中から手を振り返し、夕張に別れを告げて、 新千歳空港駅まで列車に揺られます。友人は過去の映画祭で何の予備知識もなく 「猟奇的な彼女」や「チルソクの夏」といった傑作と遭遇しています。 今映画祭で私が魅了された作品は多くがかなり期待していた作品だったので、 サプライズ的な収穫はほとんどありませんでしたが、『開会式』や『閉会式』、 『さよならビュッフェ』等の盛り上がりは予想以上。それに加えて 【キネマ街道】の絵看板、[シネマのバラード]、そして夕張の”雪”...と 上映作品以外の要素でもしっかりと私の心を鷲掴みしてくれ、十二分に満足の いく映画祭となりました。
 行く前は、たぶん最初で最後になるだろうと考えていた『ゆうばり』。 友人からは「そんなこと言っていても、きっとやみつきになるよ」と脅か されていましたが。賭けをしていたなら、完敗でした。来年すぐは無理かと 思いますが、いつの日か━━。何年か先には再び、冬の夕張を訪れることに なるでしょう。レポートの最初でも紹介しましたが、1993年にゲストで来た タランティーノ監督は「夕張の雪は世界一美しい! 神が雪を降らせている場所だ」 という言葉を残していかれました。確かに雪の美しさは、特筆もの。が、それ以上に、 映画祭に寄せる市民たちの気持ちの美しさで何だか街全体がオーラで 覆われているのではないかと感じられた5日間でした。雪があるからこそ、 そんな寒い中を各地から駆けつけてくれた観客やゲストを精一杯もてなそうと いう地元の気持ちがより強くなるのでしょう。そして特に初参加の観客やゲストは、 一面の雪の中、こんな小さな町でこんなに熱い、こんなに盛大な映画祭が 開催されている事に感激してしまう...。参加する側、迎える側にこういう 気持ちがある限り、映画祭がなくなるなんて事はない筈。私が今回初参加するに 至った理由の一つとして”映画祭がいつまでも続くとは限らないので” という心配がありました。実際に参加してみて━━、滅多なことでは 中止になったりはしないと確信を抱くまでになりました。一度でも 参加した映画ファンなら、映画関係者なら、もちろん夕張市民なら、 この映画祭がなくなる事を決して許しはしないでしょうから。

 列車は15時30分に新千歳空港駅へ到着。空港カウンターで チェックインを済ませ荷物を預けると、出発の17時30分まではのんびり出来ます。 木曜に到着したときには時間がなくて買えなかった、友人お勧めの” 夕張メロンのソフトクリーム”も忘れず食べました。外は穏やかな晴天で、 フライトには何の問題もありません。・・・『ゆうばり』と 『ゆふいん(湯布院)』、偶然とはいえ先頭に”ゆ”のつく両映画祭に、 私は完全に魅了されてしまいました。どちらも映画館一つない町だからこそ、 素晴らしい映画祭が根付くのかもしれません。両映画祭とも、 観客が”映画祭に参加している”というはっきりした実感があります。 駅のホームに降り立ち「ただいま」と呟くため...、駅前に集まる出迎えの 市民たちの「お帰りなさ〜い!」の呼びかけに、笑顔で「帰ってきました〜!」と 手を振り返すため、常連の参加者たちは毎年”真冬の北海道”を、” 真夏の九州”を訪れるのでしょう。
 羽田へは、予定の19時を10分ほど過ぎて着陸。 友人とはここで別れて、私はモノレールとJRで東京駅へ。 20時半頃の岡山行き最終新幹線にも無事間に合い、 ポケットに入りきらないほどの土産話を大切に抱えながら自宅に帰りついたのでした。

 映画祭の閉幕から1ヶ月━━。今年は桜の開花も遅く、 本格的な春が訪れる前に、鮮度を保ったままの思い出をまとめ上げる事が出来ました。 ”映画ファンでいて良かった”と思わせてくれる素敵な映画祭。 レポートの形にしてみて改めて、日本各地から、外国からも、 あんなに多くの人が夕張へやって来る訳が分った気がします。 地元の皆さんの、温かいを通り越した”熱い”もてなしが忘れられません。 「ファンタスティック!」━━この言葉は、映画祭よりも 夕張市民をこそ指しているのでしょう。