TOMIさんの湯布院映画祭レポート'09(第34回)

 今年は3月に 『高崎映画祭』、6月には 『宮崎映画祭』 へ念願であった初参加を果たしました。 3つ目は、間もなく開幕を迎えるお馴染みの 『湯布院』。 7年連続9回目となります。 1年の内に遠方の映画祭へ、こんなに参加するなんて。 贅沢には違いありませんが、『高崎』 と 『宮崎』 は2泊3日の短期型で特にまとまって休みを取った訳ではありませんし、『高崎』 と 『湯布院』 へは 【青春18きっぷ】 をフル活用し交通費をすごく安く済ませるためそれなりの労力をかけていますから、少々浮かれた筆致でレポを綴らせてもらっても、大目に見てもらえるのではないでしょうか。 湯布院では宿も、1泊3千円の素泊まりのところですし。 映画祭がとにかく楽しいので、その他の部分は出来るだけ質素に、を心掛けているのです。 で、節約分を <映画祭貯金> に回し、一つでも多く参加する、と(笑)。

 今夏の 『第34回湯布院映画祭』 の会期は、8月26日(水)から30日(日)まで。 特集は 【日本映画 脚本家列伝】 です。 昔から脚本家に注目して映画を観てきただけに、嬉しいテーマ。 何人ものシナリオライターがゲストとして来祭されるのが楽しみでなりません。 が、やはり、それ以上のお目当ては、新作の特別試写。 今年は、例年より1本多い6本が上映されます。 映画祭のブログで当初は、選定〜交渉において苦戦していると言っていたのに、一転してのこの本数。 8月上旬までは諸手を挙げて喜んでいたのですが・・・・。
 最後に決まった27日(木)の試写作品 「誘拐ラプソディー」 が突然上映中止になってしまったのです。 あの麻薬事件で逮捕された俳優Oが出演しているために(イニシャルにしてぼやかす必要はないのですが、実名を書きたくないので)。 確か出番は1シーンのみながら、結構重要な役なのだとか。 一般公開は12月の予定。 編集でのカットは難しそうなので撮り直すのか、それとも、まだ4ヶ月先なのでこのまま公開する事になるのか。 成り行きが気になります。 まあ、クロージング作や集客力の高い土曜夜に予定されている試写作品でなかっただけ、まだまし。 発生が開幕直前でなく、沈んだ気持ちのまま出発しなくて済んだのも、不幸中の幸いと思いましょうか。

 最終的に試写作品として決定したのは、「黄金花」 「カケラ」 「PASSION」 「ばかもの」 「笑う警官」 の5本(http://www.d-b.ne.jp/yufuin-c/)。 最も楽しみにしている 「ばかもの」 は、1月に公開され面白さに時間を忘れた 「プライド」 の金子修介監督の最新作になります。 実は、6月にクランクアップしたばかりだという事など、メインキャストのお1人である白石美帆さんのブログで、タイムリーに把握していたのです。 彼女は4〜6月期の連ドラ 「白い春」 にご出演。 欠かさず観ていたので、ドラマ撮影の裏話なども知りたくて自然とブログを見続けていたら、「ばかもの」 情報が何度かアップされたという訳。 金子監督とは2003年の 『湯布院』 でお話しした事がありますし、またロケが3月に映画祭に初参加するため訪れたばかりの高崎で行なわれているのが嬉しくて、つい彼女のブログに “ 「ばかもの」 期待してます! ” のコメントを書き込むことに。 もう、半分この映画の関係者のような気持ちになっているのです(笑)。 一般公開は来春の予定。 『湯布院』 では、たぶん一般の観客としては初めて本作を鑑賞することになるでしょう。 映画祭から帰ったら、すぐに白石さんのブログに 「ばかもの」 の感想を書き込まなければ(2度目のコメントで、私から一方的に約束しているのです 笑)。 一番良いのは、彼女がゲストとして来場してくれる事だったのですが・・・・。

「ばかもの」 の魅力的な、どなたが来て下さっても狂喜するであろう3女優 〜 内田有紀,白石美帆,中村ゆり 〜 の来祭は叶いませんでしたが、今年は例年になく若手女優がやって来てくれます。 前述の 「プライド」 に主演していた満島ひかり(「カケラ」)、中村映里子(「カケラ」)、安藤サクラ(「俺たちに明日はないッス」)、河井青葉(「PASSION」)の諸嬢。 『湯布院』 の虜になって、「絶対また来たいです!」 とお別れの挨拶で言ってもらえるようにしたいもの。
 同様の台詞を口にしてもらいたい方たちは、他にも。 6月に初参加した 『宮崎映画祭』 で大変お世話になった実行委員のS原さん(2006年の『湯布院』で初対面した方)が、映画サークルのお仲間を連れてやって来てくれるのです。 ほとんどが 『湯布院』 は初体験の方たちなのでは。 常連になってくれますように!

 連日の雨にも祟られ、観客数の減少がちょっと心配になるほどだった昨夏の 『湯布院』。今年は夏らしい青空の下、本映画祭らしい賑わいを取り戻してもらわなければ。 『湯布院』 には、やはり太陽が似合います。 ソフトクリームがより美味しく感じられる(笑)、程よい暑さの4日間になりますよう!

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湯布院映画祭レポート'09(1)

 今年も、9回目となる 『湯布院映画祭』 を堪能してきました。 新作試写5本の内3本は、マイ・ベストテン級の作品でしたし、上映後すぐに行なわれる監督・俳優等の方々をお迎えしてのシンポジウムや、毎夜開かれたパーティーが、とにかく楽しくて。 「カケラ」(安藤モモ子監督のデビュー作)の満島ひかりさん・中村映里子さん、「PASSION」 の河井青葉さんらの女優ゲストともたくさんお話できましたし、直接の会話は少しながら彼女を囲む人たちとの遣り取りをすぐそばで眺めさせてもらった安藤サクラさん(「俺たちに明日はないッス」のゲスト)の顔が、主演デビュー作 「風の外側」 を観て抱いていたイメージと違い、すごく小っちゃいのにびっくり。 肌もきれいでした。 いつの間にか女優らしくなったんですね。 もちろん、監督やスタッフの皆さんともたっぷりとお話を。

「ばかもの」(金子修介監督)主演の成宮寛貴くんは、アルコール依存症になってしまう “ ばかだけど見放せない若者 ” を熱演していましたが、私も完全に < 映画祭依存症 > になってしまったようです。 治療方法は、今のところ無し。 1年先までどう我慢したら良いのでしょう? 途中で禁断症状が出てきたら(出なくても)、どこかの映画祭へ足を運んでしまうかもしれません。

 連日の雨だった昨年とは一変し、一度も傘をさす事のなかった今年の 『湯布院』。 出発前の願い通り、熱く燃えました! お蔭で、レポの完結時期は予測不能(笑)。 少なくとも9月中に終ることだけはない、という事を、まず宣言 ・・・・ あ、いや、お断りしておきます。 過去最長となるかも。 どうぞ飽きずに、エンドロールまでお付き合い頂けますよう。

 それでは、予告編的な前置きはこれぐらいにして、次回から本編を始めることにします。 ポップコーンでも頬張りながら、気楽にご覧下さい。

湯布院映画祭レポート'09(2)

 8月27日(木)、早朝5時前の岡山駅周辺は霧雨状のものが僅かにパラついていたものの、『青春18きっぷ』 で車中の人となり、外が明るくなってからはずっと晴れた中を、予定通り16時12分に由布院駅へ降り立つことが出来ました。 途中、大分駅では、半分ぐらいのホームはもう高架にされているかなと想像していたのですが、1年前からの進展は見られず、昨年と同様、由布院方面発着のホームのみがそうなっているだけ。 来年は、いくらか変貌しているでしょうか?  由布院駅の改札を抜け、駅舎内に併設されているアートホールへ。 受付辺りで、今映画祭の大判チラシを貰おうとするも、なぜか今年は見当りません。 結局この日は会場にもなくて、翌日に各地の映画仲間へ映画祭のパンフを送る際、同封することが出来なかったのでした。 土曜日頃、気づいたら、コピーされたものが受付にあり、それを貰いましたが、印刷されたいつものやつとは当然感じが違うので、ちょっと残念。

 駅舎を出て、会場である湯布院公民館をめざします。 駅前の大通りを100メートルばかり行き、ファミリーマートの所を左折すれば、すぐ。 うっ・・・・! ファミリーマートが別の店 〜ロールケーキ&プリンの店〜 に変っています。 近くにはまだローソンがあり(そちらは在ると思うのですが)、普通の買い物には困りませんが、パンフの送付で利用するつもりのクロネコメール便(1通 80円)はローソンでは取り扱っていないのです。 郵便だとかなり高くつくし、“ 岡山まで持ち帰って、メール便で発送するか ” と悩みましたが、分厚いパンフを何部もバッグに入れるとパンバンになるし益々重くなるため、翌朝、公民館そばの郵便局から出す事にしたのでした。 各地の映画仲間に早く届けられるなら、多少の出費増など全然惜しくありません。 ちょっと嘘が入ってますけど(笑)。

 脚本家シンポジウムの1回目が既に15時40分より始まっているので、会場へ急ぎましょう。 名前入りの全日券のパスを、首から下げておきます。 うっ・・・・! 公民館の玄関に、手をきれいにするための消毒液の容器が置かれているではないですか。 新型インフルエンザ対策なんですね。 【ご自由にお使い下さい】 との事。 必須ではありません。 スルーして、中へ入り、2階へ向かいます。 階段横の壁には、秋から来年にかけて公開される各社の日本映画のポスターが10枚ほど貼られています。 2階視聴覚室のドアをそ〜っと開け、後ろの方の空席へ。

■27日(木)■ ≪ 脚本家シンポジウム 15:40〜17:00 ≫ *前半

 今年の特集は、脚本家にスポットライトを当てた < 日本映画 脚本家列伝 其の一 > です。 何年かおきに同じテーマを取り上げていくであろう事を見込んでの “ 其の一 ” 。 そうなってほしいもの。
【 日本最初の職業的映画監督にして、「日本映画の父」 と呼ばれたマキノ省三(1878〜1929)は、「ホン(脚本)さえ良かったら、誰でもいい演出家になれる。 映画の憲法は、一スジ(脚本)、二ヌケ(撮影)、三動作(役者)である」 と、映画製作における脚本の重要性を説いていました。 しかし、1950年代にフランスのヌーヴェルヴァーグ派が 「映画における表現主体は、出演している俳優や脚本ではなく、映画監督という名の 『作家』 である」 という [作家主義] を提唱。 その考えが世界を席捲して以降、映画の作品的成功のすべて、作品のテーマや台詞までもが(それがたとえ脚本の執筆に監督がタッチしていない場合でも)監督の功績と見なされる状態が、現在まで半世紀近く続いています。
 この風潮に対し湯布院映画祭は、映画の一流スタッフをお招きしてお話をうかがう [日本映画職人講座] や、製作・撮影・編集・録音・美術等の特集上映を組むことで、映画を様々な才能が集まった集団芸術と捉えるというスタンスを.取り続けてきました。 中でも脚本の重要性には目を向け、これまでに何度も脚本家特集を企画しています。 今年はその集大成として、映画が娯楽の王様であった1950年代を知る大ベテランから、現在の日本映画を支える中堅、そして期待の若手に至るまで、脚本家のゲストを多数お迎えし、映画における優れた脚本とは何かを実証的・多角的に検証します。 「映画の思想は脚本家のものである」、或いは 「脚本家は作戦参謀、監督は現場の指揮官、俳優は武器」 と言われながら、その位置づけ・評価が正しく行なわれているとは言い難い脚本家をめぐる状況を変える一助になれば、と思っています。 乞うご期待! (リーフレットより) 】

湯布院映画祭レポート'09(3)

■27日(木)■ ≪ 脚本家シンポジウム 15:40〜17:00 ≫ *後半

 脚本家シンポは全部で4回行なわれることになっており、この1回目に付けられたタイトルは 【時代に即応したシナリオとは】。 ゲスト脚本家は、大ベテランであり現役からはもう引退されている白坂依志夫氏と、本映画祭の兄貴的存在である毎年ご参加の荒井晴彦氏のお2人。 白坂氏は3年前にもいらっしゃっています。
 席についたのは、16時20分頃。 観客は50〜60人ぐらいでしょうか。 バッグからペンとメモを取り出して、話を聴く態勢を整えると、耳に入ってくるのは白坂氏の艶笑話。 その終わりの方だったみたいで、もう3〜4分早く着きたかったなと悔しい思いを(笑)。 司会は、おなじみの映画評論家:野村正昭氏と、実行委員の若い女性が務めています。 後で知ったところによると、一応女性実行委員がメイン司会だったようなのですが、ゲストのお2人とは世代が違いすぎて、私が入室する前から実質的には野村氏がお1人で進行されていた模様。 ま、無理もありません。 でも、彼女にとって貴重な経験になったのでは。

 執筆する上で観客を意識するかどうかの質問に対して、荒井氏は 「意識しない。僕が面白いかどうか。大衆を信じていないんだよね」 のお答え。 白坂氏は、ギャラを貰っているから意識はするが、やはり 「信じてはいないな」(笑)。 この日ここまでに上映されたのは、1961年の 「婚期」(脚本/水木洋子)、1957年の 「暖流」(脚色/白坂依志夫)、1983年の 「ダブルベッド」(脚本/荒井晴彦)の3本。 シンポの後にもう1本、1955年の 「浮雲」(脚色/水木洋子)が上映されます。 白坂氏は、「昨日だったか 『浮雲』 を観たけど、退屈だったね〜(笑)」。 フィルムチェックを兼ね、関係者で上映会を行なったのでしょうか。 それに続けて、「 『ダブルベッド』 が良かったねえ! 当時のベストワンでしょう」。 こちらは、先ほど観客と一緒にご覧になった模様。 隣りの荒井さんも、嬉しそう。 同氏の 「浮雲」 評は、「ベッドシーンのないロマンポルノだね」。

 客席には、近年の常連ゲストであるスクリプター歴50年の白鳥あかねさんがおられ、ご発言されます、「 『ダブルベッド』 のスクリプターをやりました白鳥あかねです。 荒井さんの初監督作品 『身も心も』 にも就きました。 今日、久しぶりに 『ダブルベッド』 を観て、改めてすっごい映画だったな〜、と思わされました」。 「身も心も」 の公開は1997年、「ダブルベッド」 より十数年後の作品になります。 荒井氏は、「 『身も心も』 の時には初監督ということでシナリオに燃えたが、どうも上手く書けなくて。 『ダブルベッド』 の時の俺と組みたかったな、と思ったね。 執筆しながら、(才能が)減っちゃったな、って。 女の子とヤルとき、“ 減るもんじゃないし ” って言うけど(笑)、ライターは歳と共に確実に減りますよ」。 白坂氏も、「削られていくもんなんです」。 白鳥さんが、「じゃあ、新藤(兼人)さんは?」 と質問。 今年97歳になられる氏は昨年、脚本・監督最新作の 「石内尋常高等小學校 花は散れども」 が本映画祭で試写上映されました。 言いづらいですけどね、と荒井さん、「偉いなあ、と言うのが無難かな(笑)」。 新藤氏の件とは離れて、「歳とると、若い人が書けないんだよね」。

 ここで、同じ岡山県から参加の 『湯布院』の先輩、倉敷のOさんからの質問があったりなどした後、荒井氏がシナリオと文学の相違点について述べられます。「違うのは、構成だね。 シナリオの特長は、構成。 小説ではまず共作はないが、脚本では多いでしょう」。 この後は、ぶっちゃけ話。 今は亡き巨匠が俗説では “ 二刀流 ” と言われている事や、「KT」 事件の詳細など。 荒井氏が脚本を書かれた2002年の公開作 「KT」 はかなりの秀作でしたが、監督に勝手にシナリオを改変されたため、氏が怒りを爆発させられたそうなのです。 有名な話ですが、一般の映画ファンには “ どこがどう変えられたのか ” 詳しくは分っていなくて。 それが荒井氏自らの口から語られ、長年の疑問が氷解しました。 「ゼロ号、初号と試写を観て、脚本家やめたくなったよ」。
 その後、荒井氏は、2003年に本映画祭で上映された 「ヴァイブレータ」 のシナリオにより、同年の 【キネマ旬報脚本賞】 等を受賞されましたが、確か2005年に本映画祭にかけられた 「やわらかい生活」 以後は、脚本作が映画化されていないのです。 コンスタントに執筆されており、クランクイン直前までいったものも複数あるのですが、残念ながら・・・・。 氏の脚本作が観られないのは、映画ファンにとって、そして日本映画界にとっての大きな損失。 幸い、共作のシナリオが、今度こそ映画化されるみたいですが、最終日のパーティーで倉敷のOさんから間接的に聞いたところによると、「あまり期待するなよ」 との荒井氏の言なのだとか。 でも、これがきっかけとなり、眠っているシナリオが次々動き出すことだってあるのでは。 来年の本映画祭では、久しぶりとなる荒井晴彦脚本作が試写上映されますように!

 実は、当初はこの日の夜に予定されていた 「誘拐ラプソディー」 の試写が中止になったため、来る途中の小倉で途中下車し、公開されたばかりの 「ノーボーイズ、ノークライ」(渡辺あや脚本)を観てこようかと迷っていたのです。 彼女のシナリオのファンなのに、岡山での公開がまだ決まっていないものですから。 でも、映画はまだ観るチャンスはあるけど、映画祭でのイベントはそこでしか見たり聞いたりすることが出来ないのだからと、迷いを振り切って、直行。 興味深いお話が聴け、やはり、こちらを選んで正解でした。 シンポは、これで終了。 さ、玄関脇の販売コーナーで映画祭のパンフを数冊買い、宿へチェックインしなければ。

湯布院映画祭レポート'09(4)

 退室していく途中で、6月に 『宮崎映画祭』 へ初参加した際お世話になった同映画祭実行委員のS原さんから声をかけられます。 予定通り昨日当地入りし、前夜祭から楽しまれているのです。 「学校の怪談4」 の野外上映会も、お天気に恵まれ無事実施されたのだそう。 近年は雨に見舞われ公民館内のホールに場所を移す事が多かっただけに、何より。 その代わり、寒いぐらいだったとか。 倉敷のOさんも私も、前夜祭は未体験。 羨ましい! その後は、地区の方の公民館で開かれた懇親会で、ゲストの 「学校の怪談4」 の脚本家:奥寺佐渡子さん(この夏一番の面白さだった「サマーウォーズ」のシナリオも執筆)ともお話できたと嬉しそう。 宮崎の同じ映画サークルのお元気な60歳代の女性と、映画仲間の福岡市の女性と一緒に3人でのご参加ですが、どちらも初の本映画祭であり朝から3本を短い休憩を挟んで続けて鑑賞しお疲れ気味のため、このシンポはパスされたとの事。 楽しみにしていた初対面は、もう少し先です。 女性2人は会期の途中で帰られますが、S原さんはファイナルパーティーまでのパーフェクト参加! 共同戦線をはって、色んなゲストに突撃していけそうです(笑)。

 S原さんとは一旦お別れして、販売コーナーへ。 今年の特集はシナリオ作家ということで、ラインナップの内ゲストで脚本家がおいでになる作品のシナリオ8編が、シナリオ作家協会の協力により合本という形でまとめられました。 限定100部作成され、1200円で販売されているのです。 予約していたので、それを1部と、映画祭のパンフ(800円)を数冊購入。 実は、このパンフが問題なのです。 支援金に協力した者は、名前が掲載され、1冊貰えるのですが、昨年は名前が漏れていたし、今年は、今しがた自宅へ電話して確認するもまだ届いていないのです。 倉敷のOさん宅へは月曜日に配達されているというのに。 委員に申し出て、自分用の1冊を貰います。 何でも、会報の 『メイムプレス』 が急に送られてこなくなったため3月に問合せしたところ、昨年12月に台帳の作り直しをしていた際パソコンのトラブルでデータの消失等が発生したそうなのです。 今年もパンフから名前が漏れているのだろうなとチェックすると━━。 うっ・・・・! 意外にも載っています。 ただ、漢字が間違っていますが。 なら、何故パンフが自宅へ送られなかったのか?!
 ま、深くは追求しないようにしましょう。 貰える分の1冊を、スムーズに受け取れたのですから。 にしても、本映画祭はどうも事務処理のレベルに問題があるように思えます。 今映画祭のパンフは、2005年以来となる100ページ超え。 読み応え満点だったため会期中に目を通せたのは半分ほど。“ 自宅に届けてくれていたら、ここへ来る電車内で熟読できたのに・・・! ” と、翌日以降、改めて恨みに思う気持ちが湧いてきてしまったのでした(笑)。

 公民館を出て、ローソンへ。 宿は素泊まりの所なので、朝食は大抵、イートインコーナーのあるここで摂っていたのです。 今年も同コーナーがあるかどうか・・・・、ローソン自体があるかどうか確認しておかなければ。 うっ・・・・!
 ローソンは無事、営業が続いていますが、イートインコーナーがあったスペースにはガチャガチャの販売機が設置され、椅子等が撤去されています。 ならば、と宿は共同スペースにある冷蔵庫が自由に使えるので、とりあえず明日&明後日の朝食用にパン2個と、それからペットボトルに入ったコーヒー等を買っていくことにしたのでした。 この近くの会場で行なわれた土曜日のパーティー終了後には、日曜と月曜日用のパン等を求めることに。
 徒歩10分余りで、宿へ。 ここでの “ うっ・・・・! ” は、ありませんでした(笑)。 来年は、こういう唸り声をあげなくて済みますように。 荷をほどき、小バッグを持って会場にUターンします。 途中で寄り道。 昼食を口にしたのは、乗換えに30分ほど時間のあった徳山駅にて。 10時半頃でした。 そして、パーティーは22時より。 何か食べておかなければ、もちません。 当地のファストフードと呼んでもいい、精肉店のメンチカツを立ち食いで。 次に駅前へ移動し、土産物店に入って、お気に入りのソフトクリームを頼みます。 滞在中、ここでもう一度、またファミリーマートから変った 『ロールケーキ&プリンの店』 で一度食べましたが、やはりこの最初のソフトがことさら美味に感じられたのでした。 満足(笑)。

湯布院映画祭レポート'09(5)

 会場へ。 ロビーの壁には、ゲストの方々の顔写真が30数名分掲示されてあります。 他方の壁には、その日のゲストに関係した、これまでの映画のポスターやチラシが日替わりで。日によっては一日の途中で貼り替えられることも。 ざっと眺めて、ホール内へ。 上映開始時間ぎりぎりだったのです。 場内が暗くなる中を、席に。 4割から5割ぐらいの入りだったでしょうか。

■27日(木)■ ≪ 特集上映 「浮雲」 18:15〜20:19 ≫

 当初この枠で予定されていたのは、新作試写の 「誘惑ラプソディー」 という娯楽映画でした。 主演は、2001年にゲストとしておいで下さった高橋克典さん。 監督は、大好きな映画 「この窓は君のもの」(1994年/古厩智之監督) に主演し、その後、監督業にも進出した榊 英雄 氏。 実は、その2001年には古厩監督もゲストのお1人だったのです。 こういうつながりに気づけた事で、本作への期待がより膨らんでいたのですが・・・・。 加えて、脚本の黒沢久子さんは、本映画祭の兄貴的存在の荒井晴彦氏に師事されている方みたいで、荒井氏と懇意な倉敷のOさんともご友人のため、紹介してもらえる事になっていたのに。 ダブルショック・・・・(悔)。
 黒沢さんも、大好きな脚本家の先輩がたに会えるのを楽しみにしていたら、突然の中止を聞かされ、かなり落ち込んだようです。 ところが、愚痴っていたら、救いの手が差し伸べられ、正式ゲストではないが呼んでもらえることになったのだそう! 本映画祭の父親的存在の映画評論家である渡辺武信氏が体調不良のため来られなくなったり、何より 「誘拐〜」 分として予定していたゲスト枠が空きとなり余裕が出来ているため、こういう救済処置も可能になったのでしょう。 ナイスな対応です。

 さて、「浮雲」 は、名作の誉れ高い水木洋子脚本による1955年の成瀬巳喜男監督作。 代替作品として、この映画が選ばれたいきさつは━━。 そもそも今年の < 脚本家特集 > は、「浮雲」 の上映とシンポジウムを中心とした水木洋子脚本特集の検討から始まったそうなのです。 で、簡単に言えば、「誘拐〜」 がダメになった時、本作がすっと復活したという訳。
 ちゃんと観るのは、今回が初めてになります。 結論から言うと、あまり惹き込まれませんでした。 正直、好みではありません。 “ 木曜日のこの時間帯は、新作の特別試写でないと、どうもしっくりこない ” との思いに捉われていたせいでもあるのでしょう。 あ、ちなみに、中止になった 「誘拐ラプソディー」 ですが、販売コーナーでは原作文庫が売られてました。 原作者も残念でしょうね。 上映後は、シンポ会場のある2階へ移動します。 シンポは、全日券の者はフリーですが、それ以外の人は300円必要です。

■27日(木)■ ≪ 脚本家シンポジウム 20:30〜21:45 ≫ *前半

 入口の所では、紙コップに入った冷たい麦茶が用意されており、自由に持っていって構いません。 ゲストにはグラス入りのものが出され、少なくなったら女性の実行委員が新しいものに取り替えます。 シンポジウムの行なわれる2階視聴覚室は角部屋であり、2面が窓ガラスになっていて外が見えるのですが、昼間は陽光が差し込む関係で室内を縦長方向に使い、夜は横長方向に使っているのです。 つまり、椅子の並べ方が90度違うということ。 数えたことはありませんが100脚以上はありそうな椅子を並べ替えるのは、結構大変な作業でしょう。 今年は夜のシンポの時の椅子の配列に工夫がこらされており、両サイドの人もかなり見やすかったと思います。 来年も同様にお願いしたいもの。 バッグを置いて席をキープし、トイレから帰ってくると、偶然にも隣りにS原さんが座っておられます。 その向こうに同行の女性、宮崎のHさんと福岡のRさん。 ここでは簡単にご挨拶だけを。 下の上映ホールのキャパは260席ですが、こちらは半分程度のため、席はほとんど埋まっています。  今回のテーマは 【「浮雲」の脚本力を読み解く!】。 前の長机の向こうに6人の脚本家の方々が座られています。 左端には、司会の実行委員・ベテランのYさん。 左からお1人ずつ紹介していきます。 中止になった 「誘拐ラプソディー」 の黒沢久子さん。 倉敷のOさんが言われていた通り、なかなか魅力的な方です。 2人目は、前夜祭のゲストでもあった奥寺佐渡子さん。 今までお顔を存じ上げてなく、今日ロビーで初めてお写真を拝見したのですが、どうも写される角度が悪かったみたいで、ちょっとがっかり(失礼)。 ところが、実物はこれまたすごくチャーミングな方ではないですか! 1ヶ月ほど前に観たばかりの 「サマーウォーズ」 がとにかく面白かったので、奥寺さんにお会いするのがとても楽しみだったんです。 パーティーで絶対お話するぞ。 そのお隣りは、スクリプター歴50年の白鳥あかねさん。 彼女は何本か映画化シナリオも執筆されているのです。 また、神奈川の 『しんゆり映画祭』 や秋田の 『あきた十文字映画祭』 の開催にも携わっておられます。 続いては、男性が3人。 野上龍雄さん、井上淳一さん、荒井晴彦さん。 ・・・・ あ、簡単すぎました?(笑) 野上さんは大ベテランの方で、明日は 「木枯らし紋次郎 関わりござんせん」 が上映されます。 井上さんは、黒沢さん同様、荒井さんに師事されている方で、野上さんとは 「男たちの大和」 を共作されていたのですが・・・・。 この先は、後ほど。 荒井さんは、もう説明不要でしょう。Yさんからは、「ダブル司会者の感じで(笑)」 と頼まれていました。
 白坂依志夫さんは、もうお休みになられている模様。 司会者が昼間のシンポでの白坂さんの 「浮雲」 評を紹介します、「嫌いだね。あの2人、さっさと別れちゃえば、それで終わりなのに(笑)」。

■27日(木)■ ≪ 脚本家シンポジウム 20:30〜21:45 ≫ *後半

「浮雲」 の感想を、ゲストの皆さんにお聞きしていきます。 黒沢さん、「白坂さんに同調します。水木さんのシナリオは、もっと良いのがあるのでは」。 奥寺さん、「22〜23歳で観ましたけど、男がひどすぎますね」。 白鳥さん、「生涯の最高の映画の内の1本です。繰り返し観ています。若いころ林芙美子(「浮雲」の原作者)に傾倒していましてね。 久しぶりに観て、男と女の体の部分をちゃんと描いてないのがちょっと気になりました。時代もあるのでしょうが。 でも、傑作には違いありませんけど」。 野上さん、「早く別れてしまえばいいのにとは思わなかった」。 井上さん、「20代前半で観ました。全く理解不能。昼メロじゃないか。 何度か見直して━━。男と女のぐずぐずを通して、日本の戦後史を描いている。 今は、傑作なのではと思ってます。ただ、成瀬作品には、もっと良いものがあるのでは」。 荒井さん、「何度か観る内、終盤の屋久島部分がとってつけたようだなと感じるように。『私は、林さんほど男に絶望していない』 と水木さんは語っていました。だからダメなんですよね。僕は、絶望してますから。 実は水木さん、若い頃この映画の男女のような行動を取った事があると言われてまして。それを林さんが小説で書いたのではと。 林さんにもそれに近い出来事があったみたいなんですけどね」。 『月刊シナリオ』 誌で現在、水木さんの一生についての長期連載が行なわれているのですが、この事件の相手の男を実名で出したら、遺族がシナリオ作家協会にクレームをつけてきたのだそう。裁判沙汰になるとかならないとか。「僕の裁判で手一杯なのに(笑)」 と荒井さん。

 ここで、荒井さんが係争中の裁判について触れておきましょう。 2005年、本映画祭にて荒井さん脚本の 「やわらかい生活」(廣木隆一監督)という映画が試写上映されました。 原作は芥川賞作家・絲山秋子氏の 「イッツ・オンリー・トーク」。 詳しくは書きませんが .... というか私も深くは知りませんが、原作を大幅に改変した荒井脚本が気にいらず、原作タイトルの使用を不許可にしてしまったのです。 映画そのものは、“ もうクランクインしていますので ” とかプロデューサーがなだめて何とか完成に漕ぎつけたものの、今度は本シナリオが優秀脚本に選ばれ 『 年鑑代表シナリオ集 』 に収められ出版されようとした際、またまた不許可にするという事態に。 結局、『年鑑代表シナリオ集』 は例年よりかなり時期をずらして、本脚本を掲載せぬまま発刊されたのでした。
 原作者にここまでの権限があるのか?! この件は、確か2〜3ヶ月前に荒井晴彦氏とシナリオ作家協会から訴えが起こされ、現在裁判で争われています。 脚本の2次利用については、映画化に当っての契約に盛り込まれていたようなのです。 原作者側の言い分を聞いていないので、一方的に判断することは出来ませんが、どう考えても 『年鑑代表シナリオ集』 への掲載を不許可にしたのはおかしいのではないでしょうか。 映画が公開され、DVD化までされているというのに。 日本では、遺憾ながら脚本家が軽視されていますからね。 成り行きが注目されます。 で、実は、最終日に上映される新作試写 「ばかもの」 の原作者が、その絲山さんなのです。今度はトラブルはなかったのか? 結果は同作の項で判明しますので、しばしお待ちを。

「浮雲」 に戻りましょう。 本作は十数年おきぐらいに実施されるオールタイム・ベストテンの投票で常に上位にランクインしています。 時代が移り変わっても残り続ける名作、というのが一般的な評価。 その秘密を中心に、という司会者からのリクエストで皆さんに述べて頂きます。 野上さん、「男と女は、こういうものでは。ぐじゃぐじゃになって。じれったいと思っても、離れられないんです。 それから、私は、脚本と映画とを分けて評価したくないんですよ。 脚本は良いけれど映画は悪い、とか。 私にとって良い映画とは、自分が好きな映画ですね」。 奥寺さん、「男はラストで泣いてますけど、次の日にはケロッとしてる筈」。 井上さん、「シナリオからかなり間引いて演出してるんですよね。性についてだったり、男のずるさだったり、女のいやらしさだったり」。 白鳥さん、「私が日活撮影所へ入った年の公開。当時は、多くの人が身につまされて観たものです」。 野上、「そう、身につまされたんです。僕にとっては、いい映画だった」。 井上さん、「昭和30年の公開。前の年に 『七人の侍』 と 『東京物語』 があり、成瀬さんは 『東京物語』 に負けまいとしてこの映画を撮ったのでは」。
 司会者が 「場所の移動というか、空間が....舞台が次々変っていきますよね」 と口にすると、野上さんが 「(時代の波とかそういうものに)流されてたんですよ」。氏はこんなお話も、「撮影現場へは行きたくないんです。若い頃、使い走りのような事をやらされていて、きつかった思い出が甦ってくるもので。それから、脚本家がそう書いたために、現場がものすごく苦労してやっている様を見たくないですから」。

 客席からの発言タイムとなり、「黒澤明の映画は何度か観ると飽きるが、小津と成瀬は、人恋しいというか、映画恋しい気持ちにさせてくれ、何年かしたら、また観たくなってしまう」 との意見が出たり、ゲストとの遣り取りが掛け合い漫才風になっていく場面も。 ゲストとの距離が近い映画祭ですからね(笑)。
 終わりに近づいた頃、荒井さんが 「浮雲」 のラストで森 雅之が泣くのは甘い、と指摘。 と、奥寺さんや黒沢さんの女性陣からすかさず、「男はあの瞬間は本気で泣いてるんです。でも、次の日には泣いた事さえ忘れてるんです」 と反論が。 荒井さん、「えっ、そうなの?! 一番悪いじゃない(笑)」。 今度は司会者がすかさず、「ちょうど良いオチになったので、これにて終りたいと思います」 と締めます。
 絶妙なタイミングでのエンドマークでした。 昼間のシンポは白坂さん・荒井さんの2人だけでしたが、今回は6人。
 男女半々だったし、色んな年代の方がおられたので、なかなかバランス良い構成だったよう思います。 映画は私にはいまいちだったものの、シンポはとても楽しい時間を過ごすことが出来ました。 S原さんのお連れの女性2人も、初めてのシンポをとても楽しまれたご様子。 何よりです。

湯布院映画祭レポート'09(6)

■27日(木)■ ≪ パーティー 22:00〜 ≫ *前半

 公民館の横の道に2台のマイクロバス等が待機しており、5分ほど揺られてパーティー会場へ移動します。 初日の今夜は例年と同じく、金鱗湖の近くにある [亀の井別荘 湯の岳庵]。 昨年は雨模様だったため屋内で開かれ、座って飲食しましたが、今年はいつものように庭園での立食パーティーです。 2年前よりも、テーブルを並べておけるスペースが広くなっており、全体的にゆったりとして、後で各テーブルを行き来しゲストや顔なじみの常連さんとお話する時も楽に歩き回れたのでした。
 テーブルはどこにつくのも自由。 S原さんたちと一緒になり、お連れの女性2人と改めて自己紹介を交わします。 宮崎のHさんは、カラオケで一旦マイクを握ると離さない人がいるように、車に乗ると、「交代しましょうか」 の声も聞き流し、ハンドルと手を一体化させるほど運転好きな方。 昨日も、宮崎市内からの4時間のドライブを、助手席のS原さんから何度も 「時間はあるのでゆっくりで良いですよ」 と言われながら、かっ飛ばしてこられたのだそう。 福岡のRさんは近年、日本映画の旧作の良さに目覚め、精力的に追いかけられたり、確か上映会を企画するような事までやっておられる方。 2年前の本映画祭に関東から弾丸ツアーもどきで初参加され、強烈な嬉しい思い出を残していかれたH野さんという女性とも、旧作つながりで友人になられています。 寒いぐらいだったという昨夜の野外上映会ですが、今夜はちょうど良い気候。 暑さは全く感じません。 湿気も気にならないし。

 乾杯のご発声は、夕方から宿で休まれていたのでお元気になられたような白坂依志夫さんにお願いします。 お酒の弱い私ですが、最初はコップ一杯だけビールを。 すぐにウーロン茶に切り替え、“ 料理に集中するぞ ” モード。 が、今年はなかなか運ばれてきません。 さっとお腹を満たし、早くゲストの方々の所へ行きたいのに。 料理の出されるタイミング、その内容とも、今年は満足のいくものではありませんでした。 昨年は、すごく良かったのですが。 まあ、そこそこお腹がふくれれば、OK。 ゲストの皆さんとの交流が、パーティーのメインディッシュですから。

 白坂さんを含め7名のゲスト脚本家の皆さんより、ご挨拶を頂くことに。シンポ等と違い、メモを取りながら聞いていた訳ではないので、はっきり聞こえて記憶に残った分だけ、ご紹介します。井上淳一さんは実は正式なゲストではないのです。 師事している荒井さんが毎年、ゲストでない年も自費で参加されているので、“ いつかは! ” とずっと思っていたものの、“ ゲストで呼ばれるまでは行かないぞ! “ と我慢。 それが、「白坂さんを盲導犬のようにお世話するため、(荒井さんに言われて)来ました。 次回は絶対、自分の作品と一緒に来ます!」。 黒沢久子さんは、明るい ” 悲劇のヒロイン “(笑)、「やっとこの映画祭に来られると思ったのに、突然上映が中止される事になり、もう悲しくて悲しくて。 でも、じたばたしていたら、皆様のご尽力でこうして呼んでもらえました。 九州へ上陸するのも初めてなんです。 どうも、ありがとうございます!」。 白鳥あかねさんは、脚本作の 「脇役物語」 が現在撮影中。「益岡徹さんと永作博美さんが主演で、アメリカ帰りの新人監督がメガホンを取っています。公開されたら観て下さい」。公開時期にもよりますが、来夏の 『湯布院』 で上映されないでしょうか。タイトルにも惹かれます。 選定されるぐらいの作品に仕上りますように。

 そろそろ行きますか、とS原さんと2人、ゲストの皆さんがおられるテーブルをめざします。まずは、ちょうどその辺りにおられた倉敷のOさんに声を掛け、ご友人の黒沢さんに紹介してもらうことに。S原さんは 『宮崎映画祭』 の実行委員。 最初にその名刺を差し出せば、大抵の映画人は丁寧に応対してくれます。 ずるい!(笑)  と、まずは、スポーツ観戦が大好きな黒沢さんのため、倉敷のOさんが今夜のプロ野球の結果を携帯で確認して、発表します。 巨人がまたまた中日に勝利。 アンチ巨人の黒沢さん、S原さんはテンションが右肩下がり。 ファンのOさんと私は、“ また勝っちゃいましたか ” と苦笑いです。 宮崎といえば巨人のキャンプ地、“ なのにアンチだなんて偉い! ” と黒沢さんにとってのS原さんの評価はうなぎ上り。
 黒沢さんは福島県のご出身。 好きで好きでたまらない映画、2006年のクロージング作品として本映画祭で上映された 「フラガール」 の地元ではありませんか。 昨年3月に 『スパリゾートハワイアンズ』 に宿泊し本物のフラガールたちのステージを観て、ロケ地巡りにも出かけて行った話を、嬉々としてさせてもらったのでした。 その帰りに、懇意にしてもらっている脚本家の今井雅子さんと東京で会ったと言うと、「あ、今井さんなら知ってます」 と黒沢さん。 何でも同じ頃、シナリオ作家協会入りされたそうなのです。 特に交流はないそうなのですが。 映画祭から帰るや、今井さんに早速、黒沢さんの事をお知らせしたのでした。 「誘拐ラプソディー」 の今回の上映は中止になりましたが、東京では確か明日28日(金)まで彼女の脚本作の 「私は猫ストーカー」 という作品が約2ヶ月に渡ってロングラン公開中。 かなりのヒットを飛ばしているようなのです。 地方での公開は、これから。 岡山でも上映されますように! そして 「誘拐〜」 も無事、公開に漕ぎつけられますよう。

■27日(木)■ ≪ パーティー 22:00〜 ≫ *後半

 続いて、奥寺佐渡子さんのそばへ。 他の参加者たちが囲んでいたので、しばらく待ってからお話させてもらいます。 今夏の公開作の中で一番面白いと評判の 「サマーウォーズ」 は、ネットの仮想空間が主要な舞台の一つとして登場します。 あれは奥寺さんがほとんど考えられたのか、専門家に任せたのかを質問。すると、先に彼女と話していた周りの人たちから笑い声が。 同様の質問を、既に何人もがしているそうなのです。考える事は、みな同じ(笑)。 専門家についてもらったとの事。 だとは思ったのですが、奥寺さんが想像していたより若々しく活動的な感じだったので、ネットの世界にすごく詳しくてもおかしくないなと感じたものですから。 最初の頃は、専門家抜きで自由に書いていったのだそう。
 仲間内でも皆が褒めており、ここで奥寺さんにお会い出来るのをとても羨ましがっている旨お伝えします。

 彼女は、相米慎二監督作品 「お引越し」(1993年)で脚本家デビュー。現場で何度も直しをさせられたのだそう。 現在は何社もが出資しての制作委員会方式が取られる事が多く、決定稿を各社で承認してもらってのクランクインになるため、おいそれとは直せないようになっています。 2年前の5月に公開された 「しゃべれども しゃべれども」 も大好きな作品。そのすぐ後の本映画祭に同作の平山秀幸監督がゲストに来られ、たくさんお話した事や、映画のDVDも購入した事など熱く語らせてもらったのでした。 奥寺さんは、落語の師匠役を演じた伊東四朗さんの大ファン。なのでキャスティングには大満足とのこと。 彼女は7年前にも、試写上映された「花」(大沢たかお主演)の脚本家として来祭されています。その2002年のみ、あいにくと私は不参加。「あれは、西谷真一監督でしたよね、NHKの」 と私が言うと、「よくご存知で」 と驚かれます。 実は今井雅子さんが、現在放送中の朝ドラ 「つばさ」 に脚本協力の形で関係されており、チーフディレクターがその西谷さんなのです。 これで今井さんは、黒沢さんとも奥寺さんともつながりました! いつかこの3人が、揃ってゲストとして作品と共に本映画祭へおいでになれれば最高なのですが。
 奥寺さんは、これまた今井さんと同じくまだ小さなお子さんを抱えて、育児と執筆に追われる毎日なのだそう。「1日が48時間欲しいです!」。 故に何日も家を空ける訳にいかず、明日にはもうお帰りになられます。 一般客の中でただ1人、本映画祭の34回全てに参加されている長崎のEさんが、「前夜祭でゲストが来てくれたのは奥寺さんが初めてだったので、嬉しかったです」 とお礼の言葉を。

 終わりの時間が近づき、明日お帰りになるゲストのお2人に、ひと言お願いします。白坂さんは、冒頭の挨拶に続いて、現地妻がどうだこうだ、の半分艶笑話(笑)。奥寺さんは、「脚本家は普段ひとりで執筆する孤独な作業なので、今日は多くの先輩ライターの方々とご一緒でき、嬉しかったです。 今度は、新作と共にやって来たいです。 また呼んで下さい」。 その新作は、映画化が続く西原理恵子原作の 「パーマネント野ばら」 だと教えてもらったのですが、来年5月の公開なので、本作での来祭は無理。 けれど、まだ丸1年あるので、 この後の作品で、という可能性は十分にあります。そうなりますように! ちなみに「パーマネント野ばら」 は、2007年に 「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」 で鮮烈デビューした吉田大八監督のメガホンで、主演は菅野美穂さん。 他に池脇千鶴さんなどが出演しています。

 23時半頃に一応お開きになるも、なお15分ほど色んな人とおしゃべりを続け、ようやく出口に向かったのでした。
 S原さんの姿を探すも、見当りません。 同行の女性2人とご一緒に、もう宿へ戻られたのでしょう。その女性お2人を始め、ゲストの黒沢さん・奥寺さんにお会いして、お話でき、初日の目標は十分すぎるほど達成されました。
 宿へは、徒歩10分ほど。 素泊まりでもちゃんと温泉をひいている風呂につかり、パンフを友人・知人に送るため、持参した封筒に入れ、封をした後、床につきます。 今年は連日、雨続きだった昨年と同じぐらい涼しくて、窓を締め切った上、エアコンも消して寝て、全然暑くありませんでした。 出発前にチェックした予報では、明日は曇り。 大きく崩れたりしませんように。

湯布院映画祭レポート'09(7)

 2日目、金曜日。 民宿風の宿は、道を挟んで2棟あり、平屋と2階建てになっています。どちらにも泊まったことがありますが、今回は2階建ての方の1階部分の3部屋の内の1室。 昨年と同じ部屋でした。早朝6時に、昨年同様 「野ばら」 の演奏音が町内放送か何かで流れてきて、眠りを中断させられます。まあ、覚悟していたことなので、特に何も思わず、7時頃まで2度寝。 「野ばら」 はたぶん、土・日も流れた筈なのですが、嬉しいことに2日とも目覚めずに済みました。 もしかして土・日は中止ということにでもなったのでしょうか。
 起き出してカーテンを開けると、予想外の好天。 青空が広がっているではないですか! 良い一日になりそうです。
 結局この日は、途中で曇ったり、もうすぐ降り出してきそうな空模様になった時もありましたが、夜の野外パーティーが無事終るまでお天気がもってくれたのでした。 昨日コンビニで買っておいたパンとパックのコーヒーで朝食を済ませ、9時20分頃に宿を出ます。 上映は毎日10時より。 会場入りの前に、今朝は映画祭のパンフを友人・知人に発送する作業が待っています。 まず、一応、ローソンへ。 レジで問い合わせるも、やはりここではクロネコメール便を取り扱っていませんでした。 店内には偶然、S原さんとお連れの女性2人が。 昼間の上映は、5〜15分ぐらいの短い休憩を挟んで夕方まで続きますから、全部観ようとすると、パンやおにぎりの用意が必要なのです。 そのために立ち寄られているのでしょう。 私は、途中の1本をパスして外出し、お店で食べるつもり。 なので何も買わずに、会場を通り過ぎて300メートルほど行った所にある郵便局へ向かいます。 封筒に 【冊子小包】 と朱記しておけば割引料金が適用されるのですが、メール便で送るつもりだったため、その “ 冊子小包 ” という名称を失念しており、普通郵便で発送。 一通80円(メール便の場合)で送れた筈が・・・・。 その何通か分ですから、余計な出費になってしまいました。 会場に戻るまでの間に、“ 今年もちゃんと休みが取れ、木曜日から参加できてるのは、それだけでも有り難いこと ” “ パンフが早く届くと、受け取った方はより以上に喜んでくれるのだから ” と納得させ(笑)、頭を切り替えて、公民館の玄関を入っていきます。

 ソファーに、S原さんたちが。 私はまだ口にしたことがないのですが、毎年ロビーではちゃんと淹れたコーヒーをサービス価格で出しており、3人はそれをお飲みになっておられたようです。 宮崎のHさんは、残念ながら今日、3本目まで観た後、お帰りになられます。 実はこの方とは、私が6月に初参加した 『宮崎映画祭』 で接近遭遇していたのです。 その時の模様は、別コーナーに保存して頂いている拙レポの(9)に。【 開館時刻の9時を数分過ぎているので、数十人の列は全員が建物内のロビーに。 9時20分頃には、ホール内へ2列になって進み、扉そばのスペースに蛇行して並びます。 と、横の列の年配のご婦人と40歳代ぐらいの男性の映画談議が、自然と耳に・・・・。 】 とある、このご婦人が、Hさんだったのです。 来年の 『湯布院』 でもまたお会いしたいですし、いつか再訪を誓っている 『宮崎映画祭』 の会場でも! この場で一応、お別れのご挨拶を済ませておきます。 一番気になっている点を言葉にしてしまいました、「安全運転でお帰り下さいね」(笑)。

 ロビーの壁には、新たな試みが。 速報として前夜祭の写真が数枚貼られています。 その後、木曜日、金曜日の写真も5〜6枚ずつ追加されましたが、土・日曜のものは掲示されませんでした。 現像が間に合わなかったのか、手が足りなかったのか。 金曜日まででも構わないので、来年もやってほしいもの。 入場口の脇には、寄席で演目をめくって知らせるようなスタンドが出されており、次の作品が分るようになっています。 また、ホールの入口横には、昔の作品の決定稿やら準備稿やらが展示されてあります。 「家族ゲーム」 「幕末太陽傳」 「太陽の季節」 「戦争と人間 第一部」 等、10冊ほどが。

■28日(金)■ ≪ 特集上映「憎いもの」 10:00〜10:55 ≫

 本日の1本目は、石坂洋次郎の原作を橋本忍が脚色した1957年の丸山誠治監督作品。 【 娘の仕送りを貯めて、何とか東京での仕入れを終えた父親が、東北に帰る間際に見た娘の姿とは...。 わずか1時間ほどの中に凝縮された父親の葛藤と悲劇。 「七人の侍」から3年、橋本忍の隠れた傑作。(リーフレットの紹介文より) 】

 客席は4割程度の入り。 ま、世間では平日の午前中ですから、こんなものでしょう。 未見の作品。 橋本忍氏の脚本作は、見逃せません。 しかも、“ 隠れた傑作 ” という謳い文句なら、尚更。 クライマックスの展開はだいたい読めるものの、見せ方が上手いです。 内容が濃いので、とても55分とは思えぬほど。 見応えがありました。
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 特集上映を連続して観る場合は、そのまま席にいて構いません。 休憩時間に実行委員が席まで、全日券の確認や前売券のモギリに来てくれますから。 私は、次の 「好色元禄(秘)物語」 は悩んだ末にパスして、昼食等に出かけることに。 この映画は、脚本・田中陽造、監督・関本郁夫の1975年作品。 主演は、ひし美ゆり子です。 【 元禄の京の都を舞台に二人の姉妹の生と性を描いたエロティック時代劇。 閉塞された時代の中で燃え上がるような女の情念をダイナミックに描いた田中陽造脚本出色の傑作(リーフレットより) 】。 3本目、4本目は外せない作品だし、昨年見つけた良さげな定食屋に行くタイミングが、滞在中、今日この時間帯しかないのです。 明日、そして最終日は、会場に入り浸り状態になるのは間違いありませんから。
 公民館を出て、前の道を駅前の大通り方面に歩いていると、向こうから1本目をパスした倉敷のOさんが幾分急ぎ足というか弾む足取りでやってこられます。 「ええっ、次の作品、観ないの?!」 信じられない、といった顔をされてしまいました(笑)。 ちょっと揺れたものの、初志貫徹。

 まずは由布院駅へ行き、駅舎内のアートホールで映画祭に関係した展示を見学します(無料)。 第5回から第12回まで、第18回、そして今回と都合10回も本映画祭のポスターを制作されたデザイナー:安部隆氏の作品展が行なわれているのです。 当然、それらのポスターも展示されています。 興味があるのはポスターだけなので(失礼)、3〜4分あれば充分。
 大通りを、定食屋をめざします。 が、なんと、臨時休業...。 前述のように明日・明後日とも昼間は食べに出る時間的余裕がないし、夕方5時から6時頃までは空き時間があるも、このお店の夜の営業が5時半からなので、無理。 試写作品の入場開始時刻に遅れると、良い席に座れませんからね。 去年一度だけ入ったこの店を、今年はどうやら利用できないみたいです(泣)。 すぐそばにも別の定食屋があるので、致し方なくそちらへ。 2〜3度入ったことがあり、不味くはないけど、“ 美味しい! ” というほどではないんです。 でも、今日は悪くない味でした。 食後は勿論、駅前の土産物屋へ(笑)。


■28日(金)■ ≪特集上映「・ふ・た・り・ぼ・っ・ち・」12:15〜13:45≫

 1988年公開の、丸山昇一脚本による榎戸耕史の監督デビュー作です。 主演の2人は、古村比呂と近藤敦(バービーボーイズ)。 【 お見合いをしてから一日の恋の行方を描く。 甘くて初々しい恋につきものの誤解やもどかしさを、短い時間経過の中に巧みに忍ばせた、丸山昇一のオリジナル脚本作品(リーフレットより) 】

 特集上映の旧作の、鑑賞可能な中で一番楽しみにしていた作品です。 公開時に観て、ぐっと胸を掴まれた記憶が強く残っているものですから。 時間帯も良いし、結構客席が埋まるのでは、と予想したものの、「憎いもの」 の時と同じぐらいで、ちょっとがっかり。 「好色元禄(秘)物語」 は、どれくらいだったのでしょうか。
 初見時から20年以上。 内容はほとんど忘れており、初めて観るように楽しめました。 ヒロインの古村比呂は、たぶん俳優デビューして間なしの時期だったのでは。 当時はそれほど気にならなかった筈ですが、いま観ると、映画の前半は演技の稚拙さに、少なからず居心地の悪さを感じたりしました。 でも、やはりキラキラしています。 2人が六本木の交差点で、車の大渋滞を引き起こし、通行人を巻き込んで大騒動を繰り広げるシーンは、脚本家から監督への挑戦状? 榎戸耕史は、新人なのに良く撮ったなあと感心。公開時ほどには惹き込まれませんでしたが、スクリーンで観られて、かなり満足しました。


■28日(金)■ ≪特集上映「木枯し紋次郎 関わりござんせん」14:00〜15:30≫

 脚本・野上龍雄、監督・中島貞夫の1972年作品。 紋次郎には、菅原文太が扮しています。 【 笹沢左保の原作を元に製作されたシリーズ第2弾。 関わりのないはずの女郎が、自分を救ってくれた姉だった・・・。 欲望をむき出しにしながら、どこか無邪気で憎めない姉に扮した市原悦子の好演や、感傷に流れる一歩手前で抑制を効かせた中島演出により、通り一遍のヒーロー時代劇とはひと味違うリアリティーと奥行きをドラマに与えている(リーフレット及びパンフより) 】

 客の入りは、ほとんど変動なし。 後のシンポに登場される野上さんの脚本なので観ておかなければ、とスクリーンに相対した本作。 それなりに面白く観ましたが、これといった感想はありません。 大人気だったテレビドラマも、あまり観ませんでしたし。 上映枠が 「好色元禄(秘)物語」 と入れ替わっていたら良かったのに、と思ったことは内緒。

湯布院映画祭レポート'09(8)

■28日(金)■ ≪ 脚本家シンポジウム 15:45〜17:15 ≫

 今映画祭で3度目となる本シンポにつけられたタイトルは 【 アルチザンとしての脚本家 〜娯楽映画に力を込める〜 】。 ゲストは、昨夜のシンポにも登場された 「木枯らし紋次郎」 の野上龍雄さんと、到着されたばかりの 「・ふ・た・り・ぼ・っ・ち・」 の丸山昇一さんです。 司会は、昨夜のシンポに続いてベテラン実行委員のYさん。 参加者は、70〜80人ぐらいだったでしょう。
 冒頭の挨拶で司会者は、「映画は総合芸術です。 昨夜のシンポジウムで野上さんから 『脚本だけを持ち上げたり、単独で考えるのはいかがなものか』 と言われ、動揺したのですが、それでも脚本家にスポットを当てて、やってみたいと思います」。 まずは、いま観たばかりの 「木枯し紋次郎 関わりござんせん」 について野上さんにお訊きしていきます。 テレビドラマ(市川崑演出/中村敦夫主演)とは違うものを、との気持ちは、やはりあったとの事。 「原作小説とは無関係に話を作りましてね。 そもそも、ほとんど読んでませんから(笑)」。

 昔....、確か80年代の前半ぐらいまでは、映画は2本立てが普通でした。 丸山昇一さんは、添え物的な2本目がお好きなのだとか。 師事したのは社会派のシナリオライターでしたが、「師匠とは離れた所で、だんだんプロに近づいていったんですよね」。 ある時、松田優作の主演作を執筆することになります。 それからは、注文されるまま、詳しくないのにアクションやハードボイルドものを中心に書き続けるも、好きなのは、今回の 「・ふ・た・り・ぼ・っ・ち・」 や 「翔んだカップル」 「俺っちのウエディング」 のようなラブコメっぽい物語。
 丸山さんはシナリオライターになる前は、結婚式場の司会をやっていた時代があるのだそう。「2時間で大団円に持ち込む技術を持ってたんです(笑)」。 氏はとにかく話術が巧み。 喋りには相当自信があるみたいです。 「披露宴の司会者は、脚本家的な役割を担ってるんですよね。 あ、こんなこと言うと、荒井さんに怒られそうだけど(笑)。 ところで、『・ふ・た・り・ぼ・っ・ち・』 のタイトルには 『・』 が一杯ありますが、私が付けた訳じゃありません!」。

 お2人とも、「なまじ原作があると、やりにくい」 という点では一致。 シナリオはフォーマットが決まっているから誰でも書こうと思えば書ける、という話から、ではプロとの違いについて尋ねられ丸山さんは、「いい顔してるってことですかね。 荒井さんも若い頃、屈折した良い顔してましたから(笑)」。 「シナリオに心理描写を書き込むので、嫌われるんですよね」 と丸山さん、「でも、分らない(読み取れない)監督や役者が多いんですから!」。 「監督を挑発したい」 とも。 あんたに撮れる?! 「・ふ・た・り・ぼ・っ・ち・」 の交差点のシーンが、正にそれ。 「遠慮せず書けないと、アルチザン(職人)にはなれませんから」。

 昨夜の脚本家シンポで短く予告しましたが、ここで 「男たちの大和」 事件について野上さんにお訊きします。 大ヒットしたのはご存知の通り。 脚本は野上さんと井上淳一さんの共作だったのですが、クランクインの前から勝手に、しかもこっそりと変えられていったそうなのです。 やめてくれと何度も言うが、効果なく....。 監督も、そういうプロデューサーサイドに転んでしまい。 2人は、クレジットから名前を下ろしてくれ、と強硬に申し入れを。 それだけは勘弁してくれと頭を下げられたそうなのですが、筋を通し抜きます。 「脚本料は、しっかり貰いましたけどね」。 2人の書いたシナリオは、ほとんどが使われたとの事。 詳しいいきさつは、『月刊シナリオ』 誌に掲載されたのでした。 いつの時代もこういうトラブルが絶えないのは、嘆かわしくてたまりません。
 丸山さんもやはり似たような問題があったそうで、「相手の会社が金のないとこだったので、私の場合は貰えませんでした(泣)」。 しばらくはお得意の話術で、シナリオライター残酷物語が披露されていきます。 時に爆笑を引き起こしながら。 話し終えると、「あ〜、すっきりしたなあ!(笑)」。 大きな拍手が湧き起こります。 真面目な話に戻って言われたのが、プロデューサーの存在の大きさ、「ほとんど全てをコントロールするのが、プロデューサーですからね」。

 観客からの質問コーナーでも、丸山さんの答えはどんどん面白い方へ面白い方へと脱線していきます。「31歳までは女に振られ続けたね〜。 ところがシナリオライターになると、女の目が一変(笑)。 正直、女という生き物に恨みを持ってます。 そのせいか、未だに女が書けない。 劣等感を明るく書いてしまうのも、オレの良くないとこなんだよね〜。 荒井さんのように暗く書かないとね(笑)。 キザな台詞なんて幾らでも書けますよ、松田優作に喋らせるつもりになれば。━━ 実際に誰かの口から言われると、爆笑ものだろうね」。

 終わりが近づいてきたので、真面目路線に軌道修正。 野上、「原動力は、やはり映画が好きだということ。 戦後入ってきたフランス映画に目が眩んだんですよ。 脚本と小説、両方やるのは無理。 別物ですから。 すごい脚本家が小説を書いたこともあるけど、ダメですね」。 丸山、「喋りはいけるんですが、シナリオがなかなか....(笑)」。 軌道修正が上手くいったとは言えないようです。 丸山劇場も、そろそろ終演時刻。 こんなに笑えるシンポになるとは思いませんでした。

湯布院映画祭レポート09(9)

■28日(金)■ ≪ 特別試写 「黄金花」 18:30〜19:49 ≫

 今映画祭での1本目の試写作品になります。 ようやく! と心の中でガッツポーズ(笑)。 タイトルは “ おうごんか ” と読みます。 長年、美術監督として日本映画を支えてこられた木村威夫(たけお)氏の監督作品です。 長編映画としては3本目ぐらいになるでしょうか。 氏は現在、何と91歳。 2004年には当時92歳の新藤兼人氏をゲストにお迎えし、昨年は同氏の脚本・監督作品 「石内尋常高等小學校 花は散れども」 が上映されましたが、それに次ぐご高齢ということになります。 映画の世界にどっぶり浸かった方々のパワーには底知れないものがありますね。
 木村氏には、一度お目にかかった事があります。 2005年に、私の住む岡山市のお隣り倉敷市で開催された < 倉敷映画会議 > というイベントにゲスト講師としてお迎えし、私もお話を拝聴したのです。 その時、司会の大役を果たされたのが、倉敷のOさん。 木村氏とここで再会できたなら、彼もすごく喜ばれたと思うのですが・・・・。 昨年の新藤監督同様、木村監督の来場は体調を考慮して見送られたのでした。 残念ですが、仕方ありません。 それよりも━━。 実は、この映画の配給会社には、ちょっとした知り合いが2人いるのです。 そのどちらかが、ゲストとしておいでになっているかも。 舞台挨拶が、楽しみ。

 客席は、6〜7割の入りといったところ。 司会役の実行委員が、客席最前列の右側にある出入口の辺りから、挨拶を行います。 試写の1本目であることや、木村氏が体調不良のため(実際はちょっと違うことが後のシンポで明らかになるのですが 笑)欠席されることなど。 ゲストは、司会から紹介されると出入口から入ってきて、短い階段を上がって舞台に立たれます。 プロデューサーの川端氏に、映画監督ですが今回は協力プロデューサーとして関わっておられる林海象氏。 制作・配給 『太秦(株)』 から、俳優でもある小林三四郎氏。 ご出演もされています。 存じ上げている方! 今夜のパーティーの項で詳しく述べさせてもらいましょう。 俳優の野呂圭介さんはアロハシャツに、長髪を後ろで束ねておられます。 現在は当地にお住まいのため、ひと際大きな拍手が送られます。 それを上回ったのは、絵沢萌子さん。 グリーン系の適度に派手なドレス風衣装で、艶やかに登壇されます。
 舞台上のスタンドマイクで、順番にご挨拶。 川端 「ご招待、ありがとうございます。 緊張しています。 監督の代わりに伺わせて頂きました。 昨日、監督に電話したら、『皆さんに謝っておいて欲しい』 とおっしゃってました。 本日は宜しくお願いします」。 林海象 「2度目の 『湯布院』 になります。 14年ぐらい前に一度。 今回は、プロデュース作品です。 さっき荒井さんに、“ 自分の映画じゃないのに、来んなよ! ” って言われてしまいました(笑)。 現在、『黄金花』 に続く第二弾を撮ってまして。 高橋伴明監督です。 主演は、松田美由紀。 来年、呼んで下さい。 さて、この 『黄金花』 は、映画文法をわざと外した出来上がりになっています。 楽しんでご覧下さい」。 小林 「そうそうたる出演者なので、ご飯一つから苦労しました。 監督が、“ どうしても銀座で公開したい! ” と。 なぜだか分らないんですけど。 何とか実現させました(詳細はシンポで)。 今日の反応を参考にして、戦略を立てたいと思います」。 野呂 「一番派手な格好で出てきちゃいました。 久しぶりの映画出演だったので、緊張しました。 お楽しみ下さい」。 最後は、「絵沢です。 出演したお蔭で、映画人の憧れの湯布院映画祭に来られました。 私ごとき者が出てきて、恐縮しています。 本日はありがとうございます」。 改めて全員に拍手が送られる中、ご退場。 いったん出入口から通路へ出て、後方のドアから再度入られ、ゲスト席で一緒に鑑賞されます。

 間もなく上映開始━━。 【 植物学者・牧博士の時空を超えた魂の救済の物語(リーフレットより) 】 という本作。 木村監督はかなり前衛的というか、斬新なものをお撮りになると聞いており、ある程度予想していたのですが、やはり私を惹き込んではくれませんでした。 こういうものがとても好きな人も勿論いるでしょうが、観る人を選ぶ映画というか、好き嫌いの大きく分かれる作品なのではないでしょうか。 居眠りせずに観終えることは出来ませんでした。

 上映後は、シンポジウム。 映画はつまらなくても、シンポの面白さは別物なので、当然参加することに。 若い女優ゲストがいる場合は、顔のよく見える最前列を狙いますが、今回は特にあせる理由がないので、ゆっくりとホールを出て、ロビーを横切り、階段を上っていきます。

■28日(金)■ ≪シンポジウム 「黄金花」 20:20〜21:45≫ *前半

 2列目に着席。 観客は50〜60人ぐらいだったでしょうか。 ゲスト席の長机には前側に、本作のポスターがずらりと貼られています。 映画評論家の寺脇研氏が、左端の司会席に。 そのお隣りからゲストの5人が、川端さん、絵沢さん、野呂さん、林さん、小林さんの順で座られます。
 司会 「凄かったですね〜。 一般の観客としては、皆さんが初めてご覧になった事になります。 木村威夫に始まって、木村威夫に終る作品。 ゲストの方々には、木村さんとの関わりについて述べながら自己紹介をお願いします」。 川端 「インディペンデントの音楽レーベルをやってます。 6年くらい前、アーティストのビデオクリップを作るに当って、スタッフの知り合いである木村さんに依頼しようという事になりまして。 それで波長が合ったもので、木村さんから 『ちょっと変ったものを作ってみようよ』 と引きずり込まれ、今回プロデュースする事に」。 司会 「資金を集めさせられたという訳ですね。 林さんだと、そういう方面は無理なんで(笑)」。

 絵沢さんは、初の 『湯布院』。 司会 「客席がざわっとしていましたね」。 絵沢 「こっちこそ、感極まって。 実は、どういうきっかけでこの映画に呼ばれたのか、分らないんです。 木村先生とは、お互い余り知らなかったものですから。 先生からは、その場その場で思い切りやって下さいと言われました。 やっていくと、だんだん気持ち良くなって。一番びっくりしたのは、ビデオでこの映画を観たのに、一つ一つの画面の力強さがガ〜ンと伝わってくるんです。 こういう経験、初めて。 すごいな、と思った。 同じように感じる方は、きっと一杯いらっしゃる筈」。 野呂さんは由布院にお住まい、「生まれた鹿児島弁でやってくれと言われましてね。 当日、セリフが変るので、覚えていっても無駄でした」。 監督とは約半世紀のお付き合い、「こんなに出番があるのは久しぶり。 最近の色んな映画を観に行きましたよ。 でも、ちっとも参考にならなかった。 ずっと役者はやってなくて、最後に鈴木清順監督の映画に出て、棺桶に入りたいと思ってたんですね。 それが木村監督からお声がかかりまして。 鈴木さん、病気中なので、無理かなあ。 木村さんの方は、年一本撮るらしいんで、また出られるかな」。

 司会の寺脇さんと、映画監督でもある今回はプロデューサーの林さんは現在、同じ京都造形芸術大学の映画学科に勤められています。 学部長が高橋伴明監督で、2人は平教授。 本作は、その映画学科の全面協力の下、制作されたのです。 司会 「大学で商業映画を作るというのは、世界でも珍しいのでは」。 「あんなに学生をただ働きさせてね(笑)」 と学科長の林さん。 今後、年一本撮っていく予定なのだとか。 現在、高橋監督による2本目を撮影中との事。 林 「木村監督、本当は元気なんですよ。 うなぎも、ぺろっと食べてますし。 銀座で公開する日に備えて、体調を整えてるんです。 月1回、京都のこの大学へ指導に来られてるんですが、もっと回数を増やせ、と言われてます。 専任教授にしてくれ、とも。 でもね〜、定年を遥かに超えてるんで(笑)」。

『太秦(株)』 の第1回配給作品は、木村監督の 「馬頭琴夜想曲」 という映画でした。 「いきなり、会社が立ち行かなくなるのでは、みたいな事態に(笑)」 と小林さん。 「今回は雪辱戦なんです。 監督、なぜだか映画は銀座だという頭があるんですね。 理由は分らないんですけど(笑)」。 司会 「(石原)裕次郎が活躍するのが銀座なので、そういうからみもあるのでしょうかね。 “ 黄金花 ” というタイトルは、監督の思い? 脚本家特集なのに、監督のワンマン映画か(笑)。 シルバー割引ってありますけど、監督ぐらいの歳になると、ゴールド割引ですよね(笑)」。 ゴールドといえば、本作に主演の原田芳雄さんは、役作りで髪を脱色し、銀髪というより金髪みたいになってました。

■28日(金)■ ≪シンポジウム「黄金花」 20:20〜21:45≫ *後半

 林 「最初、時代劇を作ろうとしてたんですよね。 “ いや、無理です!” って(笑)。すぐ、こっちに方向転換。 すごく低予算で撮っているので、時代劇だと忽ち破産しますから。 で、監督は本作のシナリオを一晩で書き上げたんです。 構想がずっとあったのかもしれません」。 野呂 「去年だから撮れたんでしょうね。 今年の不況だと、とても....」。 そうです、と川端プロデューサー。 司会 「タイミングが良かったんですよね」。
 京都の大学にはスタジオも撮影機材もあり、その費用がかからないのだそう。 学生は、60〜65人ぐらい。 現場を覚えさせるため、勿論スタッフに加えます。 林 「学費を払ってもらった上、只で働かせているんですから(笑)。 この映画の時にはあまり役に立つほどではありませんでしたが、現在撮影中の第二弾では動きが凄く良くなってます。 学年の違う別の学生なんですが、ノウハウが継承されてるんですね。 もう今年は、殴る必要はないです(笑)」。 本作の撮影中は、学科崩壊の危機を感じた模様。 「学科長に相談に行ったんです。 ウチの科は学生を殴っています、と。 “ おたくの科なら大丈夫です ” と言われました」。 野呂 「辞めた学生はいたの?」 林 「いや、1人もいませんでした」(拍手)。 絵沢 「どんなに厳しくされても、無視されるよりいいんじゃないかしら」。
 司会 「理事長や事務長や、幹部クラスが皆、エキストラで出演してまして(笑)」。 林 「ほとんど、大学内や周辺で撮ってます」。 ちょっと驚き。 司会 「木村マジック」。 林 「木村さんには私の映画の美術をやってもらってまして、もう25年くらいのお付き合いになりますが、本当に仕事が大胆なんですね。 簡単に即興でパッパッとやるだけで、それらしく見えてしまう。 キャメラで切り取るその部分だけが別世界になるという! ビニールが好きなんです。 ビニールシートを使って、すごいセットになる」。

 老人ホームを舞台にしている本作。 観客からの感想コーナーで印象的だったのは、85歳のご婦人からの 「超よかった!(笑)」。 林 「最初のシナリオはもっと映画の文法を超越したものでしたが、十代の学生は全員理解していました」。 司会 「学生たちを連れて来れば良かったですね」。 林 「来年呼んで下さい」。 司会 「ところで、小林さん。 どう宣伝するんですか?(笑)」。 小林 「「監督をリスペクトする気持ちがあるので、チラシの裏にも書いてますが、“ 映画の黄金時代の復活 ”━━ その線で」。 小林さんや川端さんが身内の小学生ぐらいの子供に、本作のビデオや監督のこれまでの作品を見せたら、みんなケラケラ笑っていたとか。 司会 「人間という生き物って面白いなって見るのかもしれないですね。 監督、小学生のアイドルになるかも」。

 小林 「東京での初日は、11月21日。 都内は2館で上映しますが、銀座では 『シネパトス』 というちょっと外れの辺りにある映画館になります」。 ここは、2002年4月に今井雅子さんの映画脚本デビュー作、宮アあおい主演の 「パコダテ人」 が公開された所(他に新宿の劇場でも)。 初日に合わせて上京し、舞台挨拶の回に入場して、今井さんとの初対面を果たした思い出があります。 大通りの車道の地下にある映画館。 銀座なのに幾らか場末感(?)も漂い、嫌いじゃないムードに包まれており、「黄金花」 の公開館として相応しいのではないでしょうか。 司会 「初日は監督も、満を持して舞台挨拶に立たれる筈です」。 小林 「東京以外はまだ決まってなくて。 監督が “ 自分の作品は海外で強い ” と言ってたものの、ベネチアではあっさり落とされました(笑)。 どこだと強いのか? 合った場所を見つけて、走れば、強いのでは」。 川端 「色々と奇策を考えながら、やっていきたいです。 音楽ともからめて」。 小林 「サントラ付きパンフを計画しています。 日本で初めてになりますから」。 

 林 「将来的には、学生に監督をさせたいと思っています。 木村さんは、次撮る予定の大作のシナリオに驀進中。 ボクより長く生きると思いますね」。 絵沢さんに今後のご予定をお訊きします、「まだはっきりとはしていなくて。 NHKがらみのお仕事なんですけど。 そうそう、事務所は東京にありますが、いま住んでるのは大阪なの」。 野呂 「撮影で京都へ呼ばれたのも、『どっきりカメラ』 なのかな、と。 今日だって(笑)」。 締めは絵沢さんにマイクを握って頂きます、「日本でこんなに長く続いている映画祭があるなんて信じられないぐらい。 こんなに沢山の人が、こんなに真剣に! 映画が愛されているのが嬉しくてたまりません。 ずっとお元気で発展させて下さい」。
 最後にこういうご挨拶まで聞けるのですから、やはりシンポはパスできません。 常連の参加者たちの中には、ゲストが喜んだり感激したりしてくれる様を見たくて、毎年この地に足を運ばずにはいられない人も少なくないでしょう。 私も、その一人。 さあ、次は待望のパーティーだ。 絵沢さん始め、ゲストの皆さんには、もっともっと喜んでもらうぞ!

湯布院映画祭レポート09(10)

■28日(金)■ ≪ パーティー 22:00〜 ≫ *前半

 今夜も2台のマイクロバスに分乗して、昨夜の会場近くの宴の場 [ 九州湯布院民芸村 ] に向かいます。 同じく、日本庭園での野外立食パーティー。 足を踏み入れると、すぐ横ではバーベキュー風に豊後牛と地鶏が炭火で焼かれ始めています。 この会場での大きな特長で、4夜のパーティーの中でも一番楽しみな料理。 横目で見ながら歩を進め、炭火焼きから離れすぎない適当なテーブルにつきます。
 開宴のご挨拶は4夜とも、確か地元の旅館業組合の要職の方が日替わりでなさいました。 乾杯のご発声は、絵沢萌子さんにお願いします。 ビールで喉を潤した後は、早速箸を取り、テーブルに並べられている料理をぱくついていたら、早くも 「お肉が焼けました〜」 のアナウンス。 紙皿に乗せていた料理を平らげて、そのまま紙皿を手に肉待ちの列に。 すると、そこへ、明日上映される 「俺たちに明日はないッス」 のゲスト・安藤サクラちゃんが到着し、たちまち炭火焼きに目を奪われます。 このとき列の先頭になっていた私のすぐ前で立ち止まり、「おいしそ〜!」 の肉声(笑)。 カジュアルな中にも個性的な薄手のジャケットに袖を通した、派手ではないけど彼女らしいファッション。 母親の安藤和津さんもおられ、2人はとりあえずテーブルのある方へ入っていかれます。 サクラさんのお姉さんも一緒だったみたいですが、この時はまだお顔をはっきりとは知らなかったので、気づきませんでした。 さて、次の肉が焼き上がり、牛と鶏の両方をのせてもらいます。 テーブルに持ち帰って、美味を堪能しました。 しばらくしてから、もう一度列についたのも、例年に同じ。 サクラちゃんも自ら並んで、しっかりと食していました。

 そこ、ここで、ゲストの皆さんとの談笑が真っ盛り。 絵沢さんは男女を問わず、大人気でした。 S原さんのお連れの女性・福岡のRさんも、彼女の大ファン。 感激したようにしっかりと張り付いて、色々と話し込んでいました。 倉敷のOさんが脚本家の黒沢久子さんとお話されているところへお邪魔すると、一緒におられるのは 「俺たちに明日はないッス」 の若手脚本家・向井康介さんではないですか。 彼とは何を話したのだったかなぁ。 覚えてないというのは、中味のない事こそが楽しい雑談だったという事でしょう(笑)。
 そうこうする内、ゲストの方々からご挨拶を頂戴する時間に。 脚本家の丸山昇一さんは 「26年ぶりの湯布院映画祭になります。 また26年後に呼んで下さい。 死体になって帰って来ます(笑)」。 同じく西岡琢也さんも、丸山さんのお話に乗っかった挨拶を。 向井さんは 「初めまして。 面白いこと言えないんで、明日のシンポジウムに来て下さい」。 大拍手に迎えられて、絵沢さん、「映画に関係してこんなに楽しい時間を過ごすのは、随分久しぶりです。 こんなに真剣に映画について話し、盛り上げ、自分も楽しむ方たちばかりだなんて、嬉しいわあ。 日本映画は大丈夫だなって思います。 本当に嬉しい!」 ━━ そのあまり、体を小刻みに震わせながらこう言っていただけると、今年も電車に11時間揺られて来た甲斐があったなと改めて思います。

 安藤和津さんの長女であり、サクラさんのお姉さんのモモ子さんは、明日の試写作品 「カケラ」 で監督デビューを飾りました。 今夜は、母娘3人の揃い踏みです。 父親である 『湯布院』 の常連・奥田瑛二監督は、3年前に 「長い散歩」 で見事グランプリを獲った 『モントリオール世界映画祭』 の審査員に選ばれ現地へ行っているため、この場にはおられません。 それがなかったら、無理やりついて来ていた可能性が高いのでは。 娘たちには激しく嫌がられても(笑)。 和津さん 「長女の初監督作品に加え、次女の出演作品まで上映してもらえるなんて。 もう感無量です」。 モモ子監督は短く、「明日は観にきて下さい!」。 サクラさん 「父親の後について、昔からこの映画祭に来てたので、ここでは姉と2人、こんなちっちゃい頃から知られてます(笑)。 今日は父親がいないのが、ちょっと不思議です。 でも、それが嬉しかったりして(笑)。 明日は映画観て、良くも悪くもこんなになっちゃったって思って下さい」。 その 「俺たちに〜」 でサクラさんは、きれいなヌードを披露しているのです。

 評論家の寺脇研さん 「今日は大学の宣伝みたいになっちゃって、すいません」。 当地にお住まいの俳優・野呂圭介さん 「私は一番安上がりなゲストなんですよね。 交通費が要らない、宿代が要らない(笑)。 生活は、年金で出来ます。 アゴアシ(交通費)だけで出演しますので、モモ子監督、宜しくお願いします(笑)。 他の監督の方々も!」。 今回はプロデューサーの林海象監督 「荒井さんに言われたように、今度は自分の作品で来たいです」。 配給担当 兼 俳優の小林三四郎さん 「もう1本の配給作品 『台湾人生』 が東京で大ヒットしてますので、こちらも宜しくお願いします」。

■28日(金)■ ≪ パーティー 22:00〜 ≫ *後半

 ゲストの方々のご挨拶を、即席舞台のなるべく近くでメモりながら聞いた後は、直接お話するチャンスを求めて、会場内をうろつきます(笑)。 おっ、倉敷のOさんが、安藤サクラちゃんと話し込んでるじゃないですか! しめしめと、2人のそばへ。 話題はどうやら、「俺たちに明日はないッス」 についてのあれこれ。 岡山では今年1月に公開され、Oさんと同じ時期に観た筈ですが、詳しい内容はほとんど忘れているし、話の途中なのでなかなか加わることが出来ません。 悔しいから、サクラちゃんの顔を斜め前からじっくりと見ちゃいました。 彼女は、当初決まっていた女優がクランクイン直前に体調を崩して降板したため、急きょ父親である奥田瑛二監督の4作目 「風の外側」 で主役に抜擢されました。 あの時は、顔が結構大きく、スタイルも大して良くないという印象でしたが(失礼)、こうして間近で見ると、顔の小ささにびっくり。 肌もきめ細かくて、綺麗だし。 いつの間にか、すっかり女優らしくなってたんだなぁ。
 最近撮影したのは、俳優・大森南朋さんの兄である大森立嗣監督(2005年に 「ゲルマニウムの夜」 で監督デビュー)の作品。 本レポを記している今日は9月16日ですが、2日前の14日にこの映画の事がタイミングよくニュースになっていたので、具体的にご紹介しましょう。 タイトルは 「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」。 骨太の青春ロードムービーなのだとか。 ケンタとジュンは松田翔太と高良健吾が演じ、サクラちゃんはカヨ役。 11月開催の東京フィルメックスで特別上映され、一般公開は来夏を予定しているのだそう。 映画ファンの間では、かなりの注目作になるのでは。 9月には、低予算映画がクランクインするとの事。 確か、昨年 『ゆうばり映画祭』 で賞を獲った監督の作品だと言っておられたような。
 彼女との肝心の会話は、はっきりした記憶がないところをみると、倉敷のOさんと遣り取りしている時のサクラちゃんの発言に、私が相槌をうった程度だったのかもしれません(苦笑)。 マネージャーらしき人が明日の予定を伝えに来たようなので、その場を離れて別のゲストの元へと。

「黄金花」 の配給担当 『太秦(株)』 の小林三四郎さんに声をお掛けします。 この方は、2006年に私が初参加した 『函館港イルミナシオン映画祭』 の東京在住の実行委員でもあるのです。 「3年前、『函館映画祭』 に岡山から初参加した者です」 とご挨拶したら、「岡山のTOM(県外のHP等での私のwebネーム)さん?!」 とすぐピンときて下さいました。 小林さんは、同映画祭でのゲストとのトークショーで司会を務められていた方。 会場でお話しした事はなかったのですが、こちらの別コーナーに保存して頂いている私の映画祭レポを 実行委員みんなで回し読みされたとかで、覚えていて下さったのです。まあ、実はそれだけではなく、mixi で共通の友人がいるからでもあるんですけどね。 とにかく、「お会い出来て良かった〜」 などと言われると、たちまちいい気分に(笑)。 「 『黄金花』 どうでした?」 の問いかけには、正直に “ 私には合いませんでした ” とゴメンナサイを。 その代わり、東京で大ヒットしている 「台湾人生」 が岡山の 『シネマ・クレール』 でも9月下旬から公開される、と教えられた時には、「きっと観に行きます」 と返答したのでした。
 拙レポに何度もお名前が出てくる脚本家の今井雅子さんは、『函館映画祭』 のシナリオ大賞で準グランプリを受賞した事から、映画のお仕事が来るようになった方。 小林さんも勿論、今井さんの事はご存知です。 「今度は、今井さんと3人、『クレモナホール』(函館山にある、映画祭の会場として使用されている施設)でお会いしたいですね」 とお別れしたのでした。

 パーティーは、23時半頃お開きに。 今夜は、S原さん、福岡のRさんと3人で宿への帰路につきます。 お2人は、事務局が世話してくれる、以前私も利用していた男女別の相部屋方式の宿に泊まっておられますが、途中までは川沿いの同じ田舎道を辿るのです。 パーティー会場のすぐ脇の細い道は懐中電灯が必要。 S原さんも私も、準備万端でちゃんと持参しています(笑)。 Rさんは、何と言っても絵沢さんとたっぷりお話できた事で大満足のご様子。 興奮覚めやらぬ感じで、絵沢さんについてしばらく語り続けられたのでした。 お2人とは途中でお別れ。 「私は、こっちの畦道を行きますので。 おやすみなさい。 また明日」。
 前夜祭を除く会期の内、前半の2日が終了しましたが、昨日は到着したのが夕方でしたし、試写作品なしの日でした。 今日の 「黄金花」 は、半分予想していた通り、あまり乗れない内容で....。 気分的には、“ 明日が、映画祭の本格的な開幕だ! ” てな感じ(笑)。 今年も、シンポで発言せずにはいられないような新作に出合えるでしょうか。 明日は夜の試写が何より楽しみですが、昼間に短い休憩を挟んで連続上映される特集の3本も、見逃せないものばかり。 今夜はしっかり睡眠をとることにしましょう。

湯布院映画祭レポート09(11)

 今朝も晴れ! 岡山を出発前に確認した天気予報ではずっと曇りマークになっていたのに。 嬉しい方に外れてくれています。 昨夜はパーティーで22時半頃までしっかり食べましたし、買い置きの結構大きなパンを朝食にしたので、今日の昼間は、映画の合間の10分程度の休憩時間にコンビニのおにぎり等を口にしなくても、夕方までお腹はもってくれることでしょう。 出発時間までパンフレットを読み、9時半を回ったころ宿を出ます。 田舎道だと、すれ違う地元の人や観光客とも自然に挨拶を交わせるのが良いところ。

■29日(土)■ ≪特集上映「ネオチンピラ 鉄砲玉ぴゅ〜」 10:00〜11:27≫

 原作:安部譲二、脚本:西岡琢也、監督:高橋伴明。 主演は、哀川翔と青山知可子。 1990年作品です。【 対立する組長暗殺に指名された駆け出しのチンピラを描いたVシネマのヒット作。 否応もなく時代に寄り添うヤクザ社会の陰と陽を描き、後のVシネの原点にもなった西岡琢也脚本作品(リーフレットより) 】 DVDでの上映になります。

 いや、面白い! 当時、本作のビデオが超大ヒットを飛ばしたのも頷ける出来映え。完全に、劇場公開作品と同等か、それ以上のレベルに達しています。 哀川翔は、これが主演第一作。もし本作でなかったなら、これほど多くの映画に出続けるようになっていなかったのでは。ヒロインの青山知可子も、ナイスボディも含めて不思議な魅力に溢れていました。 約20年前のVシネ作品なのにDVD化されている事からも、この作品がどのように評価されているかが分ります。 客席は、3割程度の入り。 もっと沢山の人に観てもらいたかった!


■29日(土)■ ≪ 特集上映 「秘密」 11:40〜13:31 ≫

 東野圭吾の同名ベストセラー小説を、今年 「ジェネラル・ルージュの凱旋」 「余命1ヶ月の花嫁」 と秀作を連発した斉藤ひろしが脚色し、2006年に全てのロケを私の住む岡山県内で行なった 「バッテリー」 を撮り、次作として 「おくりびと」 を完成させた滝田洋二郎が監督した1999年作品です。 お2人ともとても好きな映画人なので、紹介にもつい力が入ってしまいました(笑)。
【 母娘は一緒にバス事故に遭い、半分ずつこの世を去る。 生き残った娘(広末涼子)の肉体には、母親(岸本加世子)の心が宿っていたのである。 父親役は、小林薫。 2人は秘密を抱いたまま、表面上は当然父娘として生きていくのだが....。 】 こちらも、DVDでの上映。 観客は少し増えたものの、4割ぐらいの埋まりようでしょうか。

 映画化が発表される前に原作を読み、惚れ込んでいました。 当然、公開されてすぐに鑑賞。 小説の世界が上手くスクリーンに移し変えられており、その年のマイ・ベストテンの4位に選んだものです。 ちょうど10年ぶりの再見。 かなり覚えていましたが、ぐいぐい惹き込まれていきます。 とにかく、広末涼子が綺麗。 演技もしっかりしています。 そういえば、滝田監督とは、「おくりびと」 コンビでした。 ただ一度だけのキスシーンが哀しい、究極のラブストーリー。 大人の男女ほど泣けるでしょう。 ━━ 何人もの女性客が泣いていました。 私だって、もちろん(笑)。 上映後は、今映画祭で観た特集上映の作品の中で初めて、拍手が起こったのでした。


■29日(土)■ ≪特集上映「俺たちに明日はないッス」 13:40〜14:59≫

 原作:さそうあきら、脚本:向井康介、監督:タナダユキ。東京では昨年11月に、地方では今年の初め頃に公開されたばかりの作品です。 キャストは、柄本時生、安藤サクラ等。【 子供でも大人でもなく中途半端な年頃の高校生。 セックスにしか興味が持てず、自堕落でやり場のない苛立ちの中にいながらも、その瞬間でしか感知できない青春を、新鋭の向井康介が脚本化(リーフレットより) 】

 安藤サクラさんの舞台挨拶が行なわれることもあって、7〜8割ぐらいは客席が埋まっています。 登壇した彼女は、深々と一礼、「こんにちは。 今日は、押しかけて来ました。 この映画では、『ちづ』って役を演じています。 ここ湯布院へは小さい頃から父の後について何度も来ていたので、自分の作品が上映されるのは、何だか不思議な気分です。 親戚のおじちゃんたちに囲まれてるみたい(笑)。 いま23歳なんですが、この映画は2年前に撮りました。 21歳の時の体をきれいに撮ってもらえた事が嬉しいです。 今日は18時15分から姉の作品が上映されるので、良ければ観て下さい!」。 何度もお辞儀しながら退場する彼女に、長い拍手が送られます。

 7ヶ月ぶりに再見した本作。 やはり、なかなかの出来でした。“ 性 ” 春映画の秀作。 男女3人ずつの17歳の高校生が主人公なのですが、全員が躍動しています。 ま、躍動といっても、色々ありますけど。 3女優(安藤サクラ、水崎綾女、三輪子)は皆、魅力的。 誰でもOK、ってぐらいに(笑)。 1月に観た際 mixi の方に記した感想を読み返しましたが、“ 特に安藤サクラがキラッキラッしてた ” と綴っていました。今回も、同感。いい女優になる条件の一つは、脱ぎ惜しみしないこと。 大拍手です。

湯布院映画祭レポート09(12)

■29日(土)■ ≪脚本家シンポジウム 15:20〜17:00≫ *前半

 本日上映された3作品の脚本家である、西岡琢也、斉藤ひろし、向井康介の各氏が、前のゲスト席につかれます。 皆さんカジュアルな服装ですが、中でも向井さんは鬼太郎のTシャツ姿。 彼らしいです。 映画評論家・野村正昭氏が左端の司会席に。 その隣りから、向井、斉藤、西岡の並び。 100人くらいは入っているでしょうか。 私はたいてい前から2列目ぐらいまでに座るため、全体の混み具合が把握しにくいのです。 本日のテーマは 【 嵐を呼ぶ脚本家三人衆 〜乱世日本映画界を生き抜く〜 】

 司会 「脚本家シンポジウムも、これで最終回ということになります。 西岡さんはベテラン中のベテランの方。 シナリオ作家協会の理事長もされてます。 斉藤さんは今年 『ジェネラル・ルージュの凱旋』 『余命1ヶ月の花嫁』 の2本が公開された、ばりばりの方。 向井さんも、『ニセ札』 『色即ぜねれいしょん』 と大活躍されています」。 ゲスト席の後ろには、大きな窓ガラス。 雨がパラつきだしたのが見えます。 まず西岡さんから、脚本家になったいきさつ等についてお話し頂きます、「30年前に井筒監督のピンク映画でデビューしました。 高橋伴明監督のピンク映画も書きました。 ATGの1千万円映画 『ガキ帝国』(井筒監督) で一般映画に。 湯布院にも、この作品で26年前に呼ばれました。 私も元々は監督志望でして、井筒さんの力で何とか監督にしてもらえないか期待したんですが、意外と冷たくて(笑)。 その後、脚本の仕事が多くなり、ずるずると。 そうこうする内、『ションベン・ライダー』(相米慎二監督)・『人魚伝説』(池田敏春監督) で、とても監督にはなれないなと。 どちらも半年ぐらい、情け容赦なく直しをさせられまして。 あそこまでやらなければ監督が務まらないなら、もういいや、って。 でも、あれから、恐いものがなくなりました(笑)」。
 池田監督は昨年、「秋深し」 でゲストとしておいでになりました。 噂で聞いていたのとは全く異なる、物静かな ・・・・ というか、おとなしすぎる監督として。 ところが。 西岡 「若い頃の池田監督は、触るとヤケドしそうな人でした。 去年は、ただの太ったおっさんだったと思いますが(笑)。 この2人とやったので、それ以降はどんな監督も恐くなくなった。 この2人とやったので、本格的に脚本家をやろうと思った。 完成した作品が、とにかく面白かったんですよ」。

 斉藤 「撮影所でバイトしてまして。 家具運びとかやってたんですけど、よく壊しちゃったんです。 それらを倉庫の奥に隠していたのが見つかり、また 『お前は、吉永小百合の●の●●を●●●りするし!(伏字は自主規制 笑)』 と叱られ、辞めてくれと頼まれました。 その後、ディレクターズカンパニーの脚本募集に佳作入賞しまして。 ゴジさん(長谷川和彦監督)や池田監督に会いました。 現場では気の利かないダメな奴なので、シナリオライターをめざそうかなと」。 氏の映画脚本デビュー作は1991年の 「遊びの時間は終らない」(本木雅弘主演)。 最初はプロットだけまとめるという話だったのですが、そのレベルを遥かに超えるすごく緻密なものを書き、それから “ 結婚もするので、何とかして下さいよ! ” とプロデューサーに訴え、シナリオ化を任せてもらったのだとか。 窓外では、雨がかなり強くなっています。
 斉藤 「その1本目は、直しとかほとんどなかったんですね。 それから、映画、テレビの仕事がワッと来て。 どっちにする? それまでの人間関係が映画業界の人が多かったので、映画をやることに。 基本は腰が低いが、基本の基本は気が強いので(笑)、全共闘世代の何でもケチをつけるプロデューサーとぶつかったりもしました。 いい勉強でした」。

 向井 「大阪芸術大学に入ったのが大きかったですね。 地元(徳島)だと映画の話を出来る人がいなかったので」。 大学では暇なので、熊切監督の 『鬼畜大宴会』 に、後に名コンビとなる山下敦弘(「リンダ リンダ リンダ」 「天然コケッコー」等の監督) と2人でスタッフとして加わります。 「そこで現場の面白さを知り、山下と8ミリ映画を撮り始めました。 あいつ、技術的な事を学ぼうとしないんですよ。山下ときたら、“ 僕、カメラ回すから、お前、役者の面倒みろよ ” って。 で、僕が書いて、あいつが撮るように」。 2人が手伝った 「鬼畜大宴会」 は、イタリアの小さな映画祭でグランプリを受賞します。「俺たちもやるかって、『どんてん生活』 を撮ることに。 ちゃんとしたシナリオを作ったのではなくて、5〜6人みんなで相談しながら進めていきました。 山下とぶつかることも。 独りで書きたいな、と思うようになって。 卒業制作で中島貞夫監督からシナリオのイロハを教えてもらい、ひと夏で書きました」。 中島監督からは、“ 今年はお前が一番だ ” と褒められたのだそう。 「そんな風に言われるのは初めてだったので、すごく嬉しかったですね」。どうやら雨が上がったようです。
 「山下とのコンビで作っていったら、他社からオファーが来るようになり。 脚本家としてやっていけるよう思ったのは、『リンダ リンダ リンダ』(キネ旬6位) を書いた時ですね。 企画が来て、それに応えて商業映画に仕上げられたので。 それまでは、自分の中から出るもので書いてきましたから。 『リンダ〜』 では、制約があっても自分の色が出せるんだなという事が分かって、決心しました」。

■29日(土)■ ≪脚本家シンポジウム 15:20〜17:00≫ *後半

 本日上映された3本について、それぞれの脚本家に語って頂きます。 まずは 「ネオチンピラ 鉄砲玉ぴゅ〜」 の西岡さん、「原作は1から3まであり、3部作として企画され、本作は真ん中の2作目になる筈だったんですが、『1』 『3』 が飛んで。 『2』 だけが映像化されたんです。 脚本は買い取りでした、印税の貰えない。 この後、もう1本だけ買い取り契約のものを書きましたが、馬鹿馬鹿しくなって、もう止めました」。 ここで、脚本家の表記が全くなかった 「アマルフィ」 問題について話題に。 フジテレビに質問状を出し、一応回答があったものの、不十分。 問題にするべく、動き始めているそう。

「秘密」 のラストは、原作小説とは改変されました。 斉藤 「海辺の公園のシーンで終る案もあったんですが、東野さんから “ エピローグのどんでん返しはやってほしい ” と要望されたんですね。 でも原作は、文字でかなり強引に納得させているけど、映画だとその通りは難しい」。 プロデューサーが、映画なりに直して良いか原作者に打診すると、“ 映画は映画としてやって下さい ” との、有り難い回答が。 「売れっ子小説家は、うるさいこと言わないんですよね(笑)」。 だから、東野原作の映像化がより進むのでしょう。 具体的な改変内容については、もう10年も前の作品なので、はっきりとは覚えておられませんでした。 「その点、『ドラゴンヘッド』 は苦労しました。 原作者から色んな要望が来て、何人もの脚本家が関わったものです。 クレジットには一応私の名前が出されていますが、自分で書いた所はほとんど残ってません」。

「俺たちに明日はないッス」 シナリオ化の裏話を、向井さんから。 「お金が集まらなくて、1年くらいは放置してたんですね。 それが夏場に突然スポンサーが見つかりまして。 この話は夏の物語なので、急いで書きました。 上映時間が短いものだったので、何とか間に合いました」。
 窓から、青空が広がってきている様子が見えます。 今映画祭は脚本家特集ということで、ゲストで来場されている以外の多くの脚本家の方々にもアンケートを出し、寄せられた回答をパンフレットに掲載。 また、常連の一般参加者等の観客側へも、別内容のアンケートが送られました。 脚本家向けアンケートの中で、“ 脚本にまつわる事で、観客にききたい事は? ” という問いがあります。 ゲストで来られた奥寺さんが記されたのは、「説明をセリフで入れる事」 について。 斉藤さんは、「プロデューサーと相談ですね。 全部セリフで説明してくれと言う人もいますし。 まあ、ある程度は必要でしょうね。 難しいです。 答えは出ないですね。 脚本家としては、詳しく書くのは嫌ですけど。 昔は90分で描けたものが、今は120分必要。 理解してもらいにくいんですよね」。 向井さんからは、「う〜ん、難しい。 プロデューサーや監督から、もっと詳しくと言われる事が少なくないです。 彼らの方が多く映画を観ているので、そういうものなのかなと思う場合もあります。 “ うちの事務の女の子が分りにくいと言ったから ” とかの理由を出されると、そこを突いてくるか〜?! そこで攻めてくるか〜?! って(笑)」。 これに関しては、後の観客からの発言コーナーで、「映画になって集中して観れば絶対理解できるので、事務の子が言ったぐらいで(笑)、過剰なセリフを書かないで頂きたい!」 との叱咤激励も。

 別の脚本家の方からは、” 観る映画を、脚本家で決める事がありますか? ” との問い。 それに対して西岡さんは、「本来、監督や脚本家で観るのは邪道だよね(笑)。 俳優で観るのが、本道。 俳優の重要さが忘れられています。 いい役者がいないんですよ。 俳優でカバーできないから、セリフに頼ろうとする。 監督も、俳優の事をあまり重要視していないケースが多い。 以前、大滝秀治さんの現場を見て、しびれました! セリフを一字一句変えないんです。 優れた俳優がシナリオを活かしてくれるんだと改めて思い知らされました。 誰を主役にしたいか? ━━ いない。 荒涼としている。 現場も、役者に頼っていない。 モニターばかり見ている。 生の演技を見ていない。 生の目が多いほど、役者は力を発揮するものなのに、誰も見ていない。 俳優も怒ってますよ。 だから、舞台では輝くんです」。
 斉藤さんは、「こだわっては観ないです。 父親の仕事の関係で只券を貰い、小さい頃は何でも観ていた。 いい映画を観たら、後から、スタッフがいい仕事をしたんだなと思えば良いのでは」。 向井さん、「僕は照明が好きだったので、照明技師で観たりしてました。 大きくなってからは、全体を観るように」。 ベテラン実行委員のYさんより、一般参加者からのアンケート結果について紹介されます、「24人から回答がありました。 内22通は、脚本家を意識して観る、とあります」。 皆さん、私と同じく、脚本家でも観てるんですね。 Yさんたちベテラン実行委員の方たちも、そうでしょう。 試写作品を選定する時、完成が映画祭の開幕直前になりそうな作品については、脚本を読み込んで出来上がりを推察し、上映の可否を判断するようですから。 「一般の観客も、いい映画を観れば、脚本家や監督たちに目がいくもんなんです」 との客席からの意見も。

 西岡さんからはこんな苦言も、「シナリオは文字なので、論理的に組み立てていく。 ハコ書きで何度も整合性をチェックする。 シナリオの通りに撮ればちゃんとなるのに、現場でいじくりまわすから、おかしくなるんです。 不出来な映画を、完成作から推察してシナリオのせいにされても困る。 それから、全て監督が作っていると思い込んでいる人が多すぎます」。 客席には、明日の試写作品 「ばかもの」 の金子修介監督の姿もあり、司会から指名されて、「脚本家ばかりなので、肩身が狭いのですが(笑)」 と尻込みしつつ監督の立場から発言するも、西岡先輩には効いたパンチはなかったみたいです。
 他にも印象的な話が。 斉藤、「シナリオは、セリフを書くのが全てじゃない。 方向を決め、構成を練る。 諸々決定するのはプロデューサーだけど、それでも俺の映画だと思って監督もライターも木村大作も(笑)、作業すべき」。 向井、「昔は、サイレント映画でした。 僕も、まずアクションの流れを考え、セリフは後から出てきます」。

 何をもって映画とするか、という話になりかけた頃、制限時間いっぱいに。 司会 「 “ 其の二 ” “ 其の三 ” と続けていって、答えを求めていきたいと思います」。 斉藤 「ネガティブなことばかり言ってきた気もしますが、そればかりではない。 人に恵まれたからこそ20年近くやってこれたのだと思います」。 司会 「もう1時間ぐらい欲しいなぁ」 ━━ 多くの人が心の中で、また実際に頷いたことでしょう。 まずは、“ 其の二 ”。 4〜5年後には、是非!

湯布院映画祭レポート09(13)

 シンポが終了したのは、17時。朝から何も食べていないため、定食屋へ直行です。 おっ! 昨日臨時休業していたお目当ての定食屋の方も、まだ夕方の開店時間前なのに営業中の札を出しているではないですか。 勿論、そちらへ。土曜、日曜は早めに開けているのでしょうか。 昨年一度だけ来て、今度はこれらも食べてみなければと思っていた定食の中から一つを注文。しかしながら、前回ほどの満足感はありませんでした。 これで、1勝1分というところ。 まあ、明日またこの時間に開いていたなら、別メニューを取ってみて、それで判断することにしましょう。

■29日(土)■ ≪特別試写「カケラ」 18:15〜20:02 ≫

 奥田瑛二監督の長女である安藤モモ子さんの監督デビュー作。公開はまだ来年ですが、試写を観た評論家等からの評判の声を2〜3目にした事があり、“ 早く観たい! ” と願っていた作品です。 開場は20分前なので全日券の列に並んでいると、そばの化粧室に監督や安藤和津さんや主演の満島ひかりさんなどが出入りする様が目に入ってきます。 ひかりちゃんは、“ えっ、本当に彼女なの! ” というような普段着風な感じ。 それも悪くありません。  入場が開始され、もちろん前方の通路脇の席を確保。 ただ、次のシンポでもゲストの顔がしっかり見える良い席を狙わねばならず、上映会場で最前列辺りにすると退場時の混雑に掴まるため、今回は5列目ぐらいにしたのでした。
 席は9割方埋まりました。 司会 「昨夜の木村監督は91歳。 今日の安藤監督は現在27歳ですが、26歳の時に撮った作品です。 では、ゲストの皆さんをお迎えしましょう!」。 満島ひかりさん、同じくダブル主演の中村映里子さん、安藤モモ子監督の順で舞台に。 若い女性ばかり3人♪ いや、いいもんです(笑)。 満島さんは、サロペット姿。 今年1月に公開された 「プライド」(金子修介監督) と上映時間ほぼ4時間の 「愛のむきだし」(園子温監督) の2本で一気に映画ファン大注目の存在になった彼女ですが、今日は肩を “ むきだし ”(笑)。 中村さんは、女優らしいミニのワンピ。 監督はパンツルックです。

 報知新聞でこの日の模様が写真付きで記事にされたので、紹介させてもらいましょう。ひかりちゃんは白のパーカーを着ており、シンポにもこの格好で出席されましたが、舞台挨拶時はサロペットのみでした。また、後ろのポスターは本映画祭特製のもの。パンフでの映画紹介にも使われたスチール写真を元に作ったものなのです。 最初は、この映画の本当のポスターなのかと思ったほど。5本の試写作品の内、「黄金花」 と 「笑う警官」 は今秋公開のため本物のポスターも当然印刷済みでそれが掲示されましたが、後の3本は映画祭独自に制作。 関係者の方々が、驚いたように、そして嬉しそうにそれらのポスターを眺めていたのが印象的でした。 来年以降も、ぜひ続けていってほしいもの。
 舞台挨拶です。 満島 「はじめまして。 こんばんは。 初の映画祭で緊張しています。 最後まで楽しんで下さい」。 中村 「こんにちは。 今日は、ここに来られて嬉しいです。 一生懸命やりきりました。 宜しくお願いします」。 安藤監督 「監督の安藤モモ子です。 初めての舞台挨拶になります。 最後まで楽しんで下さい」。 みんな初々しくて、いいです!

【 桜沢エリカのコミックを原作に、互いの心の隙間を埋めるカケラを探す女性二人の愛憎と葛藤を瑞々しい感性で描いた、安藤モモ子の監督デビュー作(リーフレットより) 】  脚本も監督自身が執筆。 何にでも流されがちな大学生のはる(満島ひかり)はカフェで、メディカルアーティストのリコ(中村映里子)から突然話し掛けられます。 「いいなって思う人にはそうするようにしてるの。 だって、もう会えないかもしれないでしょ」。 そこから映画は、どんどん彩りを増していきます。 メディカルアーティストとは身体の欠損(例えば指)を本物に近いものを制作してカバーすると共に心の隙間を埋める手伝いをする仕事。 リコの職業を原作とは変え、こういう設定にしたのも脚本のお手柄でしょう。 また、最初は誰だか分らなかった かたせ梨乃さんの、ある意味体を張った演技にも、気持ちの襞(ひだ)がざわつかされたものです。 はるとリコは精神的にも肉体的にも、仲を深めていくのですが....。
   颯爽とした監督デビュー作! 噂通りでした。 いや、それ以上! 映画としての肌触りが、とにかく良いのです。 シンポでの発言内容を急いでまとめておかなければ。 あ、その前に、2階へ急ぎ、良い席をゲットしなければ。

■29日(土)■ ≪シンポジウム「カケラ」 20:15〜21:45≫ *前半

 2階視聴覚室を横長に使う夜のシンポの椅子の配置は、今年は通路を挟んだ両サイドが斜めに向けられ、ゲスト席をほぼ正面に見られるよう工夫されています。 すごく近い最前列だと、こちらが勝手に照れてゲストをまじまじと見られないかもしれないので、右側サイド席の通路側2列目をチョイス。 間もなく入ってこられた皆さんは、左端の司会者席の隣りから、安藤監督、満島ひかりさん、中村映里子さんの並びで座られたのでした。 この席にして、大正解。 女優お2人を、あまり視線の合うことのない斜め方向から遠慮なく眺め倒すことが出来ます(笑)。 客席は、もう満員です。
 司会 「3人とも初のシンポジウムであり、大変緊張しているので、今だけ撮って途中での写真は避けるようにして下さい」。 中村さんは女優らしく化粧しており、映画の役のイメージとはかなり変った感じ。 まずは監督に、本作の企画がどのように立てられ、実現していったのかお訊きします。 「2008年の節分の日に、若い女性監督に撮ってほしい作品があるので、と某社からオファーが入ったんですね。 原作を読み、“ 脚本も書かせてくれるなら前向きに考えよう ” ということになりました。 脚本にすぐ取り掛かり、最終的には5ヶ月ぐらいで完成。 で、インする運びとなったのですが、直前にその会社にトラブルが発生してしまいまして」。 宙ぶらりんになったものの、スタッフたちは初監督へのご祝儀として、このまま撮ろうじゃないかと言ってくれます。 「それで、最初は死ぬほど嫌だったんですけど父親に手を貸してもらい、撮影をスタート出来る事になりました。 今では、すごく感謝しています」。

 監督をめざすようになったいきさつについて。「奥田監督のデビュー作 『少女』 が海外の多くの映画祭で上映され、イギリスに留学していたので通訳として一緒に回ったんですね。 すごい作品だと思うようになり、とても自分なんかには出来ないなと考えるように。 でも、挑戦してみないと、一生コンプレックスを持ち続けてしまう。 それで、奥田監督作品に助監督として就くようになりました」。 奥田家は、性別も年齢もまちまちなので、書きかけの脚本を出しておくと、家の中で直しが入るのが普通。 「カケラ」 の場合は、プロデューサーとの遣り合いが多く、家庭内での手直しは少なかったのだそう。 「父親の意見はエロい方向に行ってしまうので、全く参考になりませんでした(笑)。 母と妹には、よく読んでもらいました」。 原作は30分もあれば読める短いもの。 シナリオ化に当って、すごく改変されます。 一番の違いは、リコの職業。 メディカルアーティストにしたのは、2人が自由に会える、勤務時間に都合のつきやすい仕事との意味合いも。 「その設定にしたら、シナリオの色んなポイントが上手く結びついたんです」。
 キャスティングは、オーディションで。 はるとリコは正反対のキャラクターです。 おとなしいはるを満島さんが演じ、積極的なリコに中村さん。 満島さんは、「リコじゃないと出来ないですって、最初に言いました」。 監督 「最近の人は何だか同じような顔に見えて仕方ないんですが、この2人はすごく違ったので、とても良かったです」。 劇中では、満島さん演じるはるよりも年上のリコ役に無理なくなりきった中村さんですが、実年齢は満島さんよりも3つ下の、今年21歳。 中村映里子は本名で、映画と関係のある命名かと思いきや、映える、輝くという意味でそうつけられたのだそう。 役者として、なかなか良い名前に思えます。 「私も普段、ビビビと来たものに真っ直ぐに行くタイプなので、リコがよく分りました」。

 現場はとても楽しかった、と満島さん、「男の監督の方が優柔不断なんですね。 それに、血迷う事も多いような(笑)」。 安藤監督には無視されていたんです、と意外な発言。 「いいから、とりあえず、やって!」 と、あまり構ってもらえなかったとか。 「ヒートアップしすぎちゃうタイプなので、こんな風にされたんでしょうね」。 本作の台本を最初読んで、何が良いのか分らなかった、と衝撃の発言も。 「でも、監督に会って、“ カッコいい!” “ 一緒にやりたい!” って。 完成した映画を観ると、台本通りなんですが、すっごく良かったです」。 司会が 「後で男性の監督に、この辺りの事について訊いてみる事にしましょうね」 と口にすると、“ あっ、やべっ。 忘れてた!” という感じに満島さんの表情が歪みます。 そう、明日 「ばかもの」 が上映される 「プライド」 の金子修介監督が客席におられるのです。 満島 「目の前に見えてるんですけど(笑)」。

 その 「プライド」 も 「愛のむきだし」 も動の役柄でした。 「カケラ」 は、静。 毎日フラストレーションがたまっていたが、現場が温かくって、よく待ち時間に寝ていたので解消できたのだそう。 満島 「起きてすぐ演じたので、覚えてないシーンも多いんですよね(笑)」。 監督 「はるちゃんは困惑している子なんです。 寝ぼけまなこの子。 ひかりちゃんを無視すりゃ、ちょうどそんな感じになるかなと計算してました。 逆に、映里子ちゃんは構ってました」。 2人ともかなり泣いたり、「帰る!」 と爆発した事も。 それだけ開放的な現場だったのでしょう。 監督は 「あ、そう。 映画やめる?」 と、わざと冷ややかに。 ひかりちゃんは 「むかつく、最低!」 と鬱憤を監督にぶつけます。 また、泣いて部屋に鍵をかけ出てこなかった映里子ちゃんに対しては、ドアを蹴り、「出てこい!」 と叫んだのだとか。 「愛のむきだし」 そのまま!(笑) 安藤監督は、こんな赤裸々な話が次々に飛び交っても、どっしりと落ち着いており、また受け答えも最初からしっかりしていました。 充分、監督の器です。

■29日(土)■ ≪シンポジウム「カケラ」 20:15〜21:45≫ *後半

 司会は、昨年確か 「しあわせのかおり」 のシンポを担当し、観客からの感想や意見を聞くまでに相当の時間を費やした人。 今回は、それ以上です。 この時点で既に、開始から30分は経っていたでしょう。 司会が話題を振ってのゲストの皆さんからのトークは、尚も続きます。 もちろん、お話自体は大歓迎なのですが、進行がどうも。 映画前半のクライマックスは、はるとリコが居酒屋で口論を始め、エスカレートしていくシーン。 周りの客が全て、黒っぽいスーツを着た男たちなのです。 賛否両論で、リアリティがないのではという意見も出ているのだそう。 本当のサラリーマンたちにエキストラで来てもらったとの事。 監督 「女性客がいたら、却って変な空気になるのではと思って」。 私は、この判断に賛成です。 中村さんの熱演に、より惹き込まれましたから。 彼女は大金星だったのでは。 満島さんももちろん良くて、2人は互いを引き立て合っていました。 ベストの組み合わせ。

 ようやく、観客からの感想等を発表できる時間に。 私も、2〜3番目に挙手したのでした。 「まず、2人のキャラが逆に思える意表をついたキャスティングに、冒頭から惹き込まれました。 不勉強で、中村さんを知ったのは今回が初めてですが、最後まで演技面の不安は全く感じませんでした。 特に居酒屋での、あの体当りでやったシーンには圧倒されました。 体当りと言えば、中村さん以上にそうだったのが満島さん! トイレに座っているところから、生理用品を使うところ、食べ物を戻すところまで映され、それから口に出して言うのは失礼かとも思うのですが、シャワーシーンではお尻の割れ目までさらけ出し、遂には腋毛まで! こういう風に身体を張るのが惜しくない現場に巡りあえたのは役者にとって幸せな事だと思いますし、また安藤監督にとっても、役者にここまでしてもらえたのは、監督冥利に尽きるのではないでしょうか」。 映画の中の印象的なセリフの中で、“ 生き物 ” という語句が使われています。 「女と女の物語というよりも、人間という生き物の映画として素敵でした」。 この映画に出合え、こうしてシンポで発言できて、今年も目標は達成されました(笑)。

 客席におられる安藤和津さんにもお話いただきます、「スタッフとして関わりました安藤でございます。 今日は、娘の映画を観て頂きまして、ありがとうございました。 胃が痛くなりました(笑)。 これで我が家には、監督が2人もいることになりまして。 空気が異常なんですね、緊張感に満ちているというか。 主人は、男のプライドがあるのか、なかなか私には相談してくれません。 今回は、そういう点では上手くいきました。 『カケラ』 の撮影時期に、主人はスケジュールを空け、メイキングを担当するような心づもりでいたのですが、娘に断わられ、1日も現場にいけませんでした(笑)」。 監督 「父は暇で暇でしょうがなくて、毎日ワイドショーを観てました。 22日間。 だんだん憔悴してきて。 それで、クランクアップの日にちょい役で出演してもらいました。 はるに自転車でぶつかる親父役。 顔もはっきりとは映ってないんですけど」。 でも、観ていてすぐにそうだと分かりました。 満島 「歯を入れ歯にしてきたり、ちゃんと役作りしてきていました(笑)」。 その奥田監督は現在、3年前に 「長い散歩」 でグランプリ等3冠に輝いた 『モントリオール世界映画祭』 で審査員を務めています。 それがなければ、たぶん変装でもしてこの部屋の隅の席にこっそり座っていたのでは。

 続いて、安藤サクラさん。 満島さんとは 「愛のむきだし」 で、がっぷり四つの共演を果たしています。 「私は、現場には全く行きませんでした。 父親の映画の脚本(ほん)をチェックするのは億劫なのですが、お姉ちゃんのはそうでもなかったです。 原作も脚本も正直面白くありませんでしたが、映画は父親のよりも良かったです(笑)。 父の作品にはもう出たくありませんが、モモ子監督の作品には出させてもらいたいです」(拍手)。 監督 「妹は、すごい協力者でした」。 安藤和津さんが口を挟み、「誤解のないように申し上げておきますが、安藤家はうまくいってますので(笑)」。 監督 「愛がいっぱいですから」。 
 満島さんが恐れていた金子監督にもマイクが渡されます、「優柔不断な男性監督の金子です(笑)」。 「違いますよ!」 と机につっ伏す満島さん。 手で顔を仰いだりするリアクションが可愛かった〜。 金子 「良かったです。 感情の行き違いなど繊細に描かれて、新人監督らしからぬ出来映えでした。 訳の分らない所がないのも良いです」。 満島 「男性監督は感情的なんです。 優柔不断というのは正確じゃないかも。 かちんとくると、演出が激しくなるんですよね」。 金子 「男は嫉妬のかたまりなんで。 女はスパッとしてますからね」。

 白鳥あかねさんからは、「私の娘も “ ももこ ” なんで、他人事ではない感じで映画を観てました。 びっくりしたのは、新藤風監督の 『LOVE/JUICE』 とテーマが似ていること」。 監督 「そうなんです。 同じ原作者のシリーズなんです」。 白鳥 「女性としての感性で堂々と撮っていたのが嬉しい。 居酒屋のシーンをああいう風に演出するのは、男性監督では無理なのでは。 2人の世界に入り込んで撮っているのが凄いなあと思いました」。
 女性の観客からは、劇中のリコのセリフを引用した感じで、「通りすがりに思い切って声をかけるみたいに発言してみようと挙手しました。 苦手なんですけど」 と感想を述べる人も。 好意的な意見が大半を占めていたので、監督も完全にリラックスし、終盤になってからは大きな素の声で反応する場面が目につきました。 倉敷のOさんもご発言、「女性の繊細さがよく出ていると思います。 セリフなどで説明しすぎていないのも良い。 ただ、もう少し、おじさんにも分り易くしてほしかったです」。 「はるの元カレが会いにきて、リコにぶっ飛ばされ、とぼとぼと夜道を帰る後ろ姿が良かった。 一応、花束を持ってきてたんですよね」 の感想もOさんだったかな。 監督も思い入れのあるシーンみたいで、「よく言ってくれました!」 と笑顔。

 本作の公開は、来春を予定。 ゲスト席の3人、そして安藤和津さんからも 「よろしくお願いします!」 と頭を下げられ、いつもより華やかな雰囲気に満ちていたシンポは幕を閉じたのでした。 公開されたなら、【日本映画監督協会新人賞】 の有力候補になるのではないでしょうか。

湯布院映画祭レポート09(14)

■29日(土)■ ≪ パーティー 22:00〜 ≫ *前半

 今夜の [ ゆふいん麦酒館 ] へは、ゆっくり歩いても10分ほど。 ただ、霧雨のもっと弱いようなものが時々落ちてきているので、念のため少し小走りになって向かいます。 もちろん傘などは不要。 入口で、地ビールのジョッキ一杯券を受け取って、館内へ。 屋内の会場です。 私はジョッキの半分程度さえ呑めないため、一杯券は後でS原さんに差し上げたのでした。 小走りに来たせいで、まだお客さんはほとんど入っていません。 おっ! 見ると、ステージの横辺りのテーブルに、脚本家の斉藤ひろしさんが独りで座っておられるではないですか(立食形式ですが、隅には椅子が並べられているのです)。 真っ直ぐ氏の元へ。 声をお掛けすると、立って相手をして下さいます。 「今の内にお話しておかないと、すぐみんなに囲まれてしまうでしょうから」。 そんな事ないですよ、と顔の前で手を振る斉藤さんなのですが、何分か後、予想は私に軍配が上ったのでした。
 それまでにお話できたのは━━。 まず、今年の2作品 「ジェネラル・ルージュの凱旋」 「余命1ヶ月の花嫁」 が、邦画を年80〜90本ぐらい観る私の、今年度のベストテン入り間違いなしという事。 特に 「余命〜」 は現在のところマイ・ベストワンであり(本レポを書いている9月下旬現在でも同じ)、特典映像の付いている高い方のDVDを既に予約(早期特別割引にて)しているというアピール(笑)。 「余命〜」 の廣木監督はシナリオ作りを任せてくれるので、やりやすかったのだそう。 「ジェネラル〜」 については、原作をかなり変えているので、その辺りのご苦労談を教えて頂きました。また、続編である本作は、別の某作品がトラブったため制作が急に決まりタイトなスケジュールだったと今まで認識していたのですが、少なくともシナリオの発注が来たのはかなり前だったという事が分りました。 私は本シリーズの原作を最新の4作目 「イノセント・ゲリラの祝祭」 まで読んでおり、「ジェネラル〜」 の続編もぜひ映画化してほしいのですが...。観た人の評判は良いものの、見込みほどヒットしなかったので、難しいかなとおっしゃってました。
 昼間上映された 「秘密」 は、観られなかったのだそう。 旧作の上映では初めて拍手が起こり、何人もが泣いていた旨、お知らせします。 「10年ぶりに観て、私もやばかったです」。 この辺りで、パーティー参加者が続々と入ってきて、公民館の販売コーナーに並べられていた斉藤さん著のシナリオの創作についての本を手にしたサイン希望者が、2人、3人と周りを囲みだしたので、氏の前の位置を明け渡したのでした。

 間もなく開宴の挨拶が始まり、乾杯の後は、飲食タイムに。 バイキング形式なので、各テーブルに置かれている紙皿を持って、お目当ての料理を取ってきます。 味はまあ普通ですが、ひと通り食べるのが無理なぐらいの種類がありますし、スイーツも充実。 フルーツだって。 悪くありません。 私が興味のないお酒類も、通常のビールや日本酒等に加え、確か4夜とも焼酎メーカーが専用コーナーを設け呑み放題で提供してくれていたみたいです。 一般客に囲まれ続け、料理を取りに行く暇などない斉藤さんの背中を眺めたりしながら、お腹を満たしていると、すぐ横で安藤和津さんが同じように箸を使っておられるのに気づきます。 タイミングを見計らって、「ホッとなさってるんじゃないですか、無事に上映が終って」。 「ありがとうございます」 とリラックスした感じで応じて下さいます。 奥田瑛二監督は確か10年間で5本撮ると宣言し、有言実行してこられた方。 今度の5本目はかなりの大作を準備中との記事を目にした記憶があるので、お訊きしてみると、「今までのやり方だと破産しちゃうので、今度は、ちゃんと出資してくれる所を見つけてからの話です。 なかなか上手く進まなくて」。 苦笑する和津さんに、「早く制作決定のニュースが聞けるよう、楽しみに待ってます」 と気持ちばかりのエールを送らせてもらったのでした。

 飲食タイムも30分ほどが経過。ゲストの皆さんから、ご挨拶を頂戴することに。 数十センチの高さのステージが中央の壁際にあり、司会に呼ばれた方々が何人かずつ上がられます。まずは、脚本家軍団(笑)。 向井さん 「満喫してます。 また、呼んで下さい」。 斉藤さん 「映画は、色んなパートの人間が力を合わせて作っているものです。 ここは、個々の作り手に光を当ててくれる素晴らしい場所だと思います。 感謝しています」。 西岡さん 「脚本家はもう辞めるとあちこちで漏らしているので、もう2度とゲストに呼ばれないと思いますけど(笑)。 シナリオを書くのは大好きだが、金のことばかり考えてる人たちとやるのが嫌! 楽しくシナリオ作りが出来る人たちと組めたなら、また書こうと思います。26年後、丸山さんと一緒に、二つの死体になってやって来るかもしれません(笑)」。
 本映画祭は2〜3年前までは毎回、Tシャツを作って、支援金の協力者にはそれを贈り、会場でも販売していました。 13年前の第21回の時のポスター制作を担当してもらったのは、奥田瑛二さんだったそうで、司会の男女2人は 「そのTシャツを着用してるんです」 と自己紹介。 そして、「カケラ」 組をステージに送り出します。 安藤監督 「呼んでもらい、本当にありがとうございました。 直接ご意見を聞け、嬉しく思っています」。 満島さん 「今日はありがとうございました。 初めて一般のお客さんに観てもらったので、緊張しました。 映画を改めて観て、結構衝撃を受けています。 なぜなのか、よく分らないんですけど。 映画、宜しくお願いします!」。 中村さん 「今日は本当にありがとうございました。 感謝の気持ちで一杯です! 観てもらって、直後に感想を聞けて幸せでした。 また来られるように頑張ります」。 安藤和津さん 「よもや娘の映画で来るとは! 夫が俳優として、また監督として呼んでもらい、娘二人も監督・役者として。 この映画祭とは、ほんとご縁があるんですよね。 昔はシンポで喧嘩腰だったのが、皆さん、ま〜るくなり(笑)。 今夜のシンポ、ありがとうございました〜!」。

 今日が最後のゲストから。 安藤サクラさん 「どうも。 次女の安藤サクラです。 お世話になり、ありがとうございました。 小っちゃい頃から、ずっとお世話になっていて。 あと10年か15年後ぐらいに、恩を返しに来れたらいいんですけど。 どうぞ、宜しくお願いします」。 小林三四郎さん 「 『私は猫ストーカー』 の宣伝もやってます。 『黄金花』 は11月21日公開です。 皆さん、宣伝して下さい」。 黒沢久子さん 「今回は自分の作品はなかったのに、十分楽しませてもらいました。 『私は猫ストーカー』、九州で上映されたら、観て下さい。 今回はありがとうございました」。 小林さんとはこの後、お別れのご挨拶をする機会を持てましたが、黒沢さんは荒井さんや倉敷のOさんたちと、彼らのなじみのBARへパーティー半ばで移動されたため、この夜はお話できずじまい。 昨夜、もっとお喋りしておくべきでした...(悔)。
 明日のゲストも、いらっしゃっています。 「ばかもの」 の金子監督、「6年前に、編集の冨田の追悼シンポで来ましたが、今回初めて、自分の新作を上映してもらえることになりました。 伝説のシンポジウムでやられる覚悟を決めてます(笑)。 今回の特集は、素晴らしい企画だと思います。 監督と脚本は車の両輪です。 ただ、気にくわないのが、脚本家のことを “ 日陰の花 ” と呼んでいること。 良くないんじゃないかな、と。 僕は、そうは思いません。 決して “ 日陰の花 ” じゃない。 明日は宜しくお願いします」。 「PASSION」 の濱口監督、「呼んで頂き、ありがとうございます。 『PASSION』、宜しくお願いします。 なかなか公開できないので、この機会に是非ご覧下さい」。

■29日(土)■ ≪パーティー 22:00〜 ≫ *後半

 談笑タイムです。 「PASSION」 組は、ステージでのご挨拶には登場されませんでしたが主演女優の河井青葉さんも来場されています。 テーブルの向こう側にマネージャーらしき女性といらっしゃるのがきっと彼女だと、S原さんを探してきて、一緒にご挨拶することに。 河井さんは2005年に、S原さんが実行委員を務める 『宮崎映画祭』 のゲストだったのです。 「その節は・・・」 と河井さんたちは、つながりのある人の出現に、笑顔。 「PASSION」 は一般公開が決まっておらず、これまで幾つかの映画祭ぐらいでしか上映されてきませんでした。 なのに昨年度の 【映画芸術ベストテン】 で何と5位に入り、映画ファンにとっては、あがいても辿り着けない “ 砂漠に蜃気楼として見える泉 ” のような作品なのです。 「私は3月に 『高崎映画祭』 の授賞式へ岡山から参加したのですが、『PASSION』 の上映日とは離れていたためキャッチすることが出来なくて。 ここでようやく観られることになり、とても楽しみにしています!」 とご挨拶すると、「高崎映画祭で上映された事までご存知なんですね」 と喜んで下さいます。

 河井さんは2005年に 『宮崎映画祭』 で上映された 「ガールフレンド」(廣木隆一監督) で、山田キヌヲさんという女優とダブル主演。 その山田さんは宮崎のご出身で、帰省の際、同年の 『湯布院』 に立ち寄ってくれたのです。 廣木監督がゲストで来祭されていましたから。 シンポで紹介され、同夜のパーティーにも出られて、少しお話したものです。 河井さんは山田さんから 『湯布院』 の楽しさを聞かされ、羨ましく思っていたのだそう。 「でも、明日のシンポジウムがちょっと心配で(笑)」。 大丈夫ですから、と不安を取り除いて差し上げます、「若い女優さんには優しい 『湯布院』 ですし(笑)、肯定・否定に関わらず1人でも多くの感想や意見をお伝えするのが何よりの歓迎だと思っていますから。 どうか、ニコニコと楽しい時間を過ごして下さい」。 少しは安心してもらえたようです。 料理もしっかり召し上がっておられるよう。 「明日のパーティーも美味しいものがたくさん━━」 と詳しく言いかけて、思い止まりました。 映画は事前情報をシャットアウトして観た方がより楽しめるもの。 パーティーだって。 「ま、とにかくファイナルパーティーの料理も期待して良いと思います」。 何が出るんだろ、と河井さんと女性マネはうきうきと顔を見合わせたのでした。 戻ってこられた濱口監督にも、「ようやく観られます。 明日の上映が楽しみでなりません」 とご挨拶を。 が、映画を未見のため、この夜は特にこれといってお話を交すことはありませんでした。

「ばかもの」 の金子監督に、「誰か女優をつれて来て頂きたかったです」 と愚痴をこぼすと、「そうしたかったんだけどね。 みんなから羨望の目で見られるから(笑)」。 本作は来年春頃の公開を予定していますが、まだ配給が決まっていないのです。 それで宣伝費も出ないので、俳優を呼ぶ事が出来なかったのだそう。 白石美帆さんのブログに、“ ぜひ湯布院映画祭に来て下さい! ” と書き込みましたが、最初から無理なお願いだったのか...。 彼女のブログで知っていたので、「クランクアップは6月の10日頃だったんですよね」 と話し掛けると、今回はゼロ号(まだ手直しする可能性のある段階のもの)での上映だと教えて下さいます。 「女優たちがどんなに綺麗に撮られているか楽しみです」 と、その場を離れることに。

「カケラ」 のヒロインたちにも。 まず中村さんから。 彼女も満島さんも、気さくに写真撮影やサインに応じておられます。 S原さんも 「愛のむきだし」 の2枚組DVDのディスクに、満島さんと安藤サクラさんのサインを貰えたと、嬉しそうに後で見せて下さいました。 写真もサインも、原則は禁止なんですけどね(笑)。 まあ、別にそれで混乱している訳でもないし、丁寧に頼んでOKを得てからなので、問題なしにしておきましょう。 中村さんに 「シンポで感想を述べさせてもらった者です」 とご挨拶すると、覚えて下さっており、笑顔でお相手して下さいます。 この後の満島さんにも同様に。 良かった、発言しておいて(笑)。 今日の中村さんはしっかりと女優メイクをされているので大人っぽく見えますが、「まだ21歳だなんて、驚きました」。 リコの設定は24歳だったのだそう。 居酒屋のシーンは、テンションを上げて、一発で撮ったのだとか。
 インパクトはその場面が一番強いのですが、他にも忘れられないシーンが幾つも。 「かたせさん演じる陶子が待つ喫茶店にリコが行って、倍も歳の違う彼女を諭すセリフがすごく良かったです。 説得力があって、心に沁みました」。 嬉しそうに頷く中村さんには、まだまだ言いたいことが、「観ていて、自分が女性ならもっと惹き込まれて観られるのに、と羨ましく思う気持ちが湧きましたが、劇中で “ 男も女も関係ない。 同じ生き物なのだから ” という意味のセリフを耳にして、その通りだなと気づかされ、それからはより集中して観られました」。 私の感想は、彼女のキラキラしている瞳をもう少しだけ輝かせることが出来たでしょうか。 「この映画に参加でき、最高の現場を経験できて本当に良かったです!」━━ 弾む中村さんの声が、心地よく耳に入ってきます。 「これから、そういう素晴らしい仕事を探していくのが大変でしょうが、頑張って見つけて、また 『湯布院』 へゲストとしていらっしゃって下さい!」。

 満島さんは、さすがに何人もに囲まれています。 自分で料理を取りに行ったバイキングコーナーの辺りで(笑)。 数分間かけて徐々にそばまで行き、それまで話していた人たちが離れていきかけた隙にすかさず正面のポジションへ。 「カケラ」 は、今日で3回目。 やっと冷静に観られるようになったのだそう。 「プライド」 では見事な歌唱力を披露してくれましたが、歌のレッスンは今でも日常的にやっているとの事。 現在は、秋に公開される 「クヒオ大佐」 のプロモーション活動が忙しくなりつつある時期なのだとか。 「楽しんでもらえてますか?」 の問いには、にっこりと頷いてくれました。 「また、来て下さいね」 と、横で待機中の人に場所を譲ります。 「カケラ」 の中で彼女演じるはるは、いい感じ(?)の腋毛をさらけ出します。 本物なのかどうか気になって、シンポで訊こうとしましたが、大勢の前だと答えにくいかなと、躊躇。 ならばパーティーで、と思っていたものの、面と向かうと、ますます尋ねにくくなってしまったのでした。 せっかくシンポで良い事を言ったのに、変な人だと思われたくありませんから(笑)。 結局、訊けずじまい。 本物かどうか確認するためだけにでも、来春公開されたならもう一度 「カケラ」 に足を運ぼうかな。 そうそう、ゲストの皆さんはたとえパーティー会場で満足に食べられなくても、宿に帰れば、いつでも美味しいものが出されるみたいです。

 安藤監督にも、もちろん。 近寄って会釈すると、監督の方から 「シンポではありがとうございました」 と頭を下げてくれたのでした。 「カケラ」 には、奥田瑛二監督の2作目、2004年の本映画祭で試写上映された 「るにん」 に重要な役で出演していた “ ひかる ” さんも1シーンだけ出演しています。 その事に触れると、「分ってくれました?!」 と監督は嬉しそう。 「あの時はひかるさんもゲストでおいでになり、ちょうどこの会場で少しですがお話ししたんですよ」 とお教えして、「ひかるさん、いいですよね〜」 と2人で頷き合ったのでした(笑)。 「ヒットして、早く2作目が撮れるようになれば良いですね」。 今度はオリジナル脚本を執筆中との事。 「各地の映画仲間にも、『カケラ』 をプッシュしておきますから」 と口にすると、監督は 「低予算なんで、宜しくお願いします!」 と、思わず応援したくなる笑みで一礼。 「次の作品で、また来て下さいね」 と私も礼を返します。

 こうして若手の監督や俳優と直接お話して、応援の気持ちをお伝え出来るのも本映画祭の醍醐味の一つ。 堪能しました! ほとんど呑んでもいないのに、酔っ払った気分です。 間もなくお開きとなり、余韻に浸りながら、外へ。 心配していたものの、雨はパラついておらず。 昼間のシンポの際には降ったものの、今日もお天気はもってくれました。 明日もう一日、この調子が続いてくれますように。 最終日は、3本とも新作だ!

湯布院映画祭レポート09(15)

 今朝は、曇り。 ただ、降ってきそうな気配は、あまりありません。 昨日まで昼間は旧作ばかりでしたので、上映開始時間ぎりぎりに行っても、だいたい好みの席に座れましたが、今日は新作。 入場開始はたぶん20分前なので、その少し前ぐらいには会場入りしたのでした。 昨年は連日、コンビニで朝食を摂った後、9時頃に由布院駅へ行き、張り込みをしていたものです。 JRで帰られるゲストがいたなら、実行委員の皆さんがホームから 「祭りの準備」 風に “ バンザ〜イ!” で見送るのが、本映画祭の名物の一つなので、それを目撃したくって。 というより、一緒に “ バンザ〜イ!” したくって。 けれど、ゲストの方々の往復の足は、まず飛行機ばかり。 張り込んでもきっと空振りに終るだろうし、コンビニにイートインコーナーがなくなり、朝食は前日までに買って帰り冷蔵庫に入れておいたパンやおにぎりで済ませるようになったし... で、今年は朝、駅に足を向けることはありませんでした。

■30日(日)■ ≪特別試写「PASSION」 10:00〜11:55≫

 8割ぐらいの入り。 午前中の上映にしては、悪くありません。 今日は男優お2人も、いらっしゃっています。 司会 「若い人が作りました。 卒業制作として完成させたものですが、そんなレベルの出来ではありません!」。 この映画は、東京藝大大学院映像研究科映画専攻の修了作品として制作されたものなのです。 観客は2時間後、いや、もちろん観ている最中から、司会の言葉が大袈裟でないことを、強烈に実感させられます。
 舞台挨拶には、男優の渋川清彦・岡部 尚 の両名、主演女優の河井青葉さん、濱口竜介監督(脚本も)の順にご登場。 大学の卒業制作とはいえ、メインキャストは皆さんプロの役者であり、主要登場人物の5人ともが主演と言ってもいいような描かれ方をしています。 司会 「ゲストの皆さんは、今朝の4時、5時まで呑んでいたそうです。 へろへろ状態です(笑)」。 ゲストは全員がジーパン姿。 渋谷 「え〜、どうも、初めまして。 湯布院はいい人ばかりなんで、二日酔いになっちゃいました。 映画、楽しんで下さい」。 岡部 「初めまして。 朝早くから、ありがとうございます。 こういう所に立つと、なんか学芸会でも始まるんじゃないかと錯覚してしまいます。 嫌いだったんですけどね。 それが役者になるなんて、不思議でたまりません。 映画、宜しくお願いします」。 河井さんはタンクトップ、「おはようございます。 河井青葉です、初めまして。 昨日こちらに着き、口にする食べ物もお酒も全てが美味しくて、ついつい呑みすぎ、声もガラガラになっちゃいました。 どうぞ、楽しんでご覧下さい」。 濱口監督 「朝からおいで頂き、ありがとうございます。 選挙だというのに、こちらに一票入れてもらいまして(笑)。 ほんとにいい所ですね〜。 あったかさに抱かれています。 この映画は、役者さんを見てもらおうというつもりで撮りました。 シンポジウムでご意見をお聞かせ下さい」。

【 智也(岡本竜汰)と果歩(河井)は、友人の誕生会に出席し、永すぎた春に終止符を打つ嬉しい報告をする。 果歩に想いを寄せる健一郎(岡部)は動揺を隠せない。 既に妻子を持つ毅(渋川)は、男ふたりを誘い、共通の女友だち・貴子(占部房子)の部屋へ押しかける。 貴子は健一郎と関係を持ちながら、智也ともかつて短い付き合いがあった。 この夜を境に、曖昧でおざなりな関係ではいられなくなった5人は、それぞれが、恋とは、愛とは、他者とは、そして自己とは何か、突き詰めざるを得なくなる。 そんな男女5人の青春後期の心理的危機を、リアルでヴィヴィットな会話と細かいカットの積み重ねで鮮やかに描いていく。 更に、大胆な2度の長廻しが “ 映画 ” を刻印する。(パンフの解説を若干改変) 】

 一般の商業映画に比べれば画質が劣るため、始まってすぐの頃は作品のクオリティを不安がる気持ちが湧いてきましたが、俳優同士のやり取りが本格化すると、たちまちそんな事は気にならなくなっていました。 舞台挨拶での監督の言葉通り、俳優の演技がすごいです。 5人まとめた形で、アンサンブル演技賞をあげたいぐらい。 昼間の脚本家シンポで西岡さんは、「現場も、役者に頼っていない。 モニターばかり見ている。 生の演技を見ていない。 生の目が多いほど、役者は力を発揮するものなのに、誰も見ていない」 と嘆いておられました。 本作で俳優たちは、どういう目に見つめられたのでしょう。 “ 信頼 ” と “ 期待 ” の視線を浴びるほど受けた結果が、彼ら全員にとっての代表作となるような演技に結びついたのかもしれません。 いや、すごい演出力です。 そして、“ 偶然にも程がある!” ような、長廻しの場面での奇跡的なあのタイミング!
 
 映画以上に、シンポが楽しみでなりません。 どの席にするか迷いながら、また、発言内容を頭の中でまとめながら、弾む足取りで階段を上がっていったのでした。

■30日(日)■ ≪シンポジウム「PASSION」 12:10〜13:15≫ *前半

 昼間のシンポは部屋を縦長に使うため、椅子の横の並びは多くありません。 両脇と中央に通路を設け、左右に5〜6脚ずつぐらい。 最前列を選んで、もしも昨夜お話しした河井さんの正面になったりすると、きっと落ち着かないだろうと、2列目の中央通路脇の席にしたのでした。 外は曇っています。 場内はすぐ満席に。 熱気が充満しています。 そう感じられます。 あくまでも、私の主観ですが(笑)。 でも、そんなには外れていない筈。

 ゲスト席の後ろには、映画祭特製の本作のポスターがボードに貼られています。 間もなく入ってこられたゲストの皆さんが席につかれますが、ポスターに気づいた河井さんは、「すご〜い。 この映画のポスターを初めて観ました!」。 左端の司会者席の隣りから、岡部さん、河井さん、渋川さん、濱口監督の順。 司会は、脚本家シンポも担当されたベテラン実行委員のYさんです。 司会 「この映画はこれまで、『ユーロスペース』 で1回、『東京フィルメックス』 と 『高崎映画祭』 で1回ずつ、あと 『映画芸術』 で1回上映されただけで、今日が5回目ということになります。 撮影した時から、約1年半。 会話劇であり、演技が重要な作品ということで、本日は役者の皆さんをゲストにお迎えしました」。  まず、監督自身が執筆された脚本についてお訊きします、「1ヶ月ほどで初稿を上げました。 キャストが決まり、リハでの即興を取り入れたりして、3〜4ヶ月で最終形になりました」。 司会 「渋谷さん、あのバスルームでは激しい動きでしたね。 もうけ役だったのでは」。 渋谷 「ここに来られた事で、儲けたって思ってます」。 司会 「河井さんは、静的な人物で」。 河井 「こういう役が多いんですよね。 陰のある薄幸な・・・。 今回も、そうなっちゃいました」。 司会 「岡部さんは 『東京乾電池』 の出身だそうですね。 あの役は、道化役から真剣に告白する変わりようが印象的でした」。 岡部 「道化役とは、あまり思わなかったんですけども。 同世代の役者が多く、でも他の人たちが大人に見え、背伸びして、間違った方向に行っちゃったかもしれません」。

 早速、観客からの感想や意見を聞くことに。 「すごかった! なぜ一般公開されないのか不思議でならない」 等の発言があった後、私も2番目か3番目に挙手したのでした。 昨夜の 「カケラ」 のシンポでは座ったままでもゲストの皆さんと視線を交わせるサイド席でしたが、今日はそういう訳にいかないので立ち上がってマイクを握ります。 正面に、昨夜のパーティーで映画の感想をお伝えしますと約束した河井さん。 「岡山から参りました、○○です。 すごく良かったです。 あらすじだけ追えば、フジテレビの月9のドラマで描かれそうな展開なのに、撮り方ひとつでこういう味わいのものになるとは! 長廻しも、単なる長廻しではなく、とても力強い長廻しでした。 何か新しいものに出合った感じがして、終盤はゾクゾクしながら観続けました。 肝の据わった、噂通りの凄い映画でした。 一般公開を切望します。 応援させてもらいますので」。 これで、今夜のパーティーでも、河井さんたちに話しかけやすくなったぞ(笑)。 2005年に本映画祭で 「ヨコハマメリー」 が上映された時、前夜はほとんど見向きもされなかった中村高寛監督は、その夜のパーティーでは常に参加者たちに囲まれ、身動きできない状態に激変していました。 濱口監督も、そうなるのでは。


■30日(日)■ ≪シンポジウム「PASSION」 12:10〜13:15≫ *後半

 河井さん演じる果歩は教師をしており、生徒のいじめ問題に対して、ちょっと痛々しいほど真剣に取り組んでいます。 監督 「あのシーンは、映画が後半へ向かおうとするギアチェンジの意味もあり、ああいう描き方にしました」。 終盤近く、果歩は、健一郎に誘われ、港近くの道を2人で、あてどない感じに歩きます。 ここが問題の長廻しシーン。 遠くに小さく見えていた2人が、固定したキャメラに近づいてくるまでを映し続けるのですが、会話がようやく山場になってきた絶妙のタイミングで、大型ダンプが突然フレームに入ってきて、2人のすぐ後ろをド迫力で通り過ぎていくのです。 色んな意味で、ドキッとさせられました。 監督 「あれは偶然なんです。 ほんとにびっくりしました。 車止めをしていたのですが、止めきれなかったんです。 望遠レンズで捉えていたため、2人が轢かれそうに見え、カットをかけようかと思いましたが、そうしなくて良かったです」。 夜のパーティーで河井さんにお訊きしてみると、演じている方はダンプの出現に驚きはしたものの、別に危険は感じなかったのだそう。 ダンプが通りがかったのは偶然ですが、キャメラの中の世界にとっては必然だったのでしょう。 観た後だと、ダンプの助演なしでのあの場面は考えられませんから。

 セリフは自分なりに直したのかの質問には、渋川 「ほぼ自分の言葉に直しました。 シナリオではタメ口だったのですが、そんな風には喋れないので」。 リハーサルでは、しごかれたのでは? 渋川 「一発目から調教がありました(笑)。 キャストの顔合わせの時、いきなり歌わされたんですね。 まあ、最初に監督が歌ったので、許せたんですけど」。 監督は、本番で或るゲームをするシーンを想定して、そういう事をやらせたみたいです。 河井 「セリフは、一字一句シナリオ通り言いました。 一読して、役のイメージが湧いてきたので、そのままに。 濱ちゃんは・・・、あ、監督は変えてくれていいと言ってくれたんですが」。 監督 「濱ちゃんです(笑)。 『釣りバカ日誌』 みたいでしょ」。 河井 「私は、『三百六十五歩のマーチ』 を歌いました」。 岡部 「僕の役はセリフが多くなかったし、一字一句変えませんでした。 で、歌は “ 尾崎豊 ” にしたかったんですが、鬱陶しい奴だと思われるとダメなので、ユニコーンの 『すばらしい日々』 にしました」。

「この映画を 『湯布院』 で観られて、嬉しかったです。 こんないい作品が、なぜ公開されないんでしょう?」 の感想と質問。 監督 「国立の藝大の卒業制作なので、お金を取って興行するのが、ちょっとまずいんですね。 でも、しかるべき時が来れば公開されると信じていますし、お蔵入りさせる気はありません!」。 よくぞ、言い切ってくれました。 司会 「安藤モモ子監督もご覧になり、泣けた、とおっしゃってました。 “ どうしてこんなに、女の気持ちが分るの?!” って」。 5人のキャラがびしっと描かれているので、観客はたいてい誰かに感情移入できるでしょう。 それにしても、派手なアクションやラブシーンが出てくる訳でもないし、何か取り立てて事件が起こったりもしない。 笑いで緩急をつけようともせず、会話のシーンがほとんどなのに、それで2時間近くを飽きずに観させるとは! シナリオと演出と演技が、見事に噛み合っていました。 楽しみな才能が出てきたものです。 司会 「2作目がもう完成してるんですよね。 河井さんがまた出演しておられます。 今度は、一般公開されるようです」。 締めのこの言葉に喜び、夜のパーティーで監督に、新作についてもう少し詳しく訊いてみました。 それによると━━。 おっと、ここではまだ内緒(笑)。 立ち上がって礼をする4人に、大きな拍手が送られます。

湯布院映画祭レポート09(16)

■30日(日)■ ≪ 特別試写 「ばかもの」 13:30 〜15:30 ≫

 朝食をしっかり摂ってきたので、何も食べずに2本目に臨みます。 今日は、新作でお腹いっぱいになる日ですから(笑)。 客席は満員とはいかず、9割程度の混み具合。 女優ゲストがいたなら、立ち見状態になっていたことでしょう。 「ばかもの」 は、1月に満島ひかりさん主演の 「プライド」 で時間を忘れさせてくれた金子修介監督の、出来たてほやほやの・・・、というか、まだ手直しが入るかもしれない状態の最新作。 本作に出演されている白石美帆さんのブログに感想を書き込む約束を一方的にしている事を含め(笑)、一番楽しみにしていた作品です。 ちょっと気になっているのが、原作が絲山秋子さんの小説だという事。 前述した 「やわらかい生活」 問題のあの絲山さんなのです。 「ばかもの」 では同種のトラブルはなかったのでしょうか?

 舞台挨拶が始まります。 司会 「足元がお悪い中、ようこそいらっしゃいました」。 外は雨になっているのでしょうか。 司会 「出来上がったばっかり。 昨日フィルムが届いたばかりの非常に新鮮な作品です」。 沖元プロデューサーと金子監督が、舞台へ。 沖元 「こんなにたくさんの方々においで頂き、嬉しく思っています。 5月8日から6月11日まで、オール高崎ロケで撮りました。 一部だけ東京ロケもあるのですが・・・。 今日は、ゼロ号のものを観て頂きます。 初号(完成品)は10月完成予定です。 最後までごゆっくりご覧ください」。 金子監督 「どうも、金子です。 呼んで頂き、ありがとうございます。 25年前に 『濡れて打つ』 が上映されましたが、来られませんでした。 6年前には、編集の冨田の追悼企画で来ましたが、自分の作品で来るのは初めて。 それから、映画祭で、出来たばかりのフィルムを上映するのも初めてになります。 まだ配給も決まっていませんで。 宣伝予算がないので、役者は来られませんでした。 こんな男ふたりになってしまい...。どういう形で受け止めてもらえるのか。 学生時代に文化祭で、自主映画をかける時のような気持ち。 楽しんでもらいたいです」。

【 19歳の秀成(成宮寛貴)は、群馬県高崎市にある偏差値が低いことで有名な大学へ通うヘタレな学生。 ある日、27歳の女性・額子(がくこ/内田有紀)と出会い、逆ナンされた揚句、筆おろしまでしてもらう。 初めての女性との肉体関係に溺れる彼は、これまでにも増して怠惰な生活を送るようになるが、額子は突然、結婚が決まったと言って姿を消す。 残された傷心の秀成は、やがて....。(パンフの映画紹介を改変) 】

 映画は、それから10年にわたる2人の恋愛を、各々が歩む過酷な人生に絡めて描きます。 タイトル等から、ちょっとラブコメっぽい内容を想像したのですが、真摯な人間ドラマになっていました。 けれどエンタメ系の金子監督なので、重くなりすぎぬ程よいバランスで話を展開させ、また、期待通り女優をきれいに撮って、娯楽の要素を振り撒くのを忘れてはいません。 尚、公開は来春以降であり、その時期までには、本レポをお読み頂いた人の記憶からほとんど消えている筈なので、内容について多少具体的に触れていきますが、お許し頂けますよう。

「額子って、終った後の方が可愛いよね」。━━ 「ばかもの!」。 2人が出会って間なしの頃のピロートークでのこの言葉は、終盤、今度は人間を入れ替えて発せられます。 では、ここで、白石美帆さんのブログに書き込んだ 本作の感想を、転載してご紹介し(汗)、シンポへと移ることにしましょう。 ちなみに彼女は、額子と別れた秀成が数年後に付き合う翔子という学校の先生役です。

【 「ばかもの」、美帆さんもご覧になられたんですね! 私も一昨日の日曜日に湯布院映画祭において、まだゼロ号の状態で試写上映された「ばかもの」 を鑑賞してきました。 ほぼ満員の観客が詰め掛け、上映後に行なわれた金子監督や猪腰助監督等をお招きしてのシンポジウムでも客席からは8対2ぐらいの割合で讃辞が多く寄せられたので、ひと安心。 女優を綺麗に撮ることにかけては定評のある金子監督らしく白石さん始め内田有紀さん、中村ゆりさんのメインキャスト全員が、スクリーンでキラキラしていました。 成宮くんも熱演でした。 でも、その分、白石さん演じる翔子がかわいそうで。 あの後彼女はどうしているのか、気になって仕方ありません。 それにしても、朝、ネグリ ・・・ あ、いや、部屋着に着替える所では、適度なセクシーさが漂ってきて、もうドキドキ。 あの箇所観たさに、公開されたならもう一度足を運んでしまいそうです(笑)。
 「それしかねえのかよ!」 や 「ばかもの!」 の同じセリフが、映画の冒頭辺りと終盤で別の人物の口から発せられる脚本の巧み。 額子との再会シーン以降がより心に沁みることを狙っての、秀成の転落ぶりの “ これでもか!” という描写。 翔子の顔から笑みが消えていく様にも心の中で泣きましたが、額子が、再会した秀成に料理を作るシーンでは、スクリーンが滲んで困りました。 ここから後は、何人もの観客が涙を拭っていました。 また、ホシノが最高! 名演でした。 死ぬ時までも(映像では描かれませんが)。
 そうそう。 スチール写真を加工して、映画祭特製のちゃんとした 「ばかもの」 ポスターも掲示されてたんですよ。 お見せしたかったなぁ。 それから、編集を担当された洲崎さんも来場されており、夜のパーティーでたくさんお話させてもらいました。 素敵な女性ですね。 お別れの挨拶は勿論、「近い内、是非またおいで下さいね!」。 監督たちの舞台挨拶、シンポで出た観客からの感想や意見等は、毎年綴っている映画祭の拙レポに詳述する予定。 完成はまだまだ先になりますが、アップしましたら、一応お知らせするようにしますね。 フィルムは、沖元プロデューサーがご自分で抱えて(笑)、東京へ持ち帰られた筈。 早く美帆さんにも観てもらいたいと願っていたので、昨日ご覧になられて本当に良かった! 秀作だと思います。 】


■30日(日)■ ≪シンポジウム 「ばかもの」 15:45 〜17:00≫ *前半

 女優ゲストがいる訳でもないので、2列目です。 司会者席の隣りから、沖元プロデューサー、金子監督、そして舞台挨拶には登場されませんでしたが、編集の洲崎千恵子さんと、猪腰助監督。 制作の経緯を沖元Pから、「昨年暮れに、『水戸黄門』 のシナリオ等で有名な脚本家の宮川一郎さんから、会社に手紙が届いたんです。『ばかもの』 という小説が気になっているので、映像化できないか、と。 宮川さん、その1週間後ぐらいに急死されまして。 弊社の植村会長が役員会で頭を下げて頼み、スタートしました」。 それでなのか、映画の冒頭に “ 宮川さんに捧ぐ ” とのクレジットが出ましたから。 「社員プロデューサーとしては、重いスタートでした」。 監督 「宮川さんも、植村さんも、絲山さんも、よく知らなくて。 話を頂いて、悩みながらシナリオ作りを進めました」。 脚本は、「プライド」 に続いての高橋美幸さん。 監督 「今までの作品は、配給〜公開が決まってからの始動でしたが、今回は未定。 『東北新社』 の会長の情念で、ここまで作ってきました。 これからどうやって観客の元へ届けていくか、というところで、この伝説のシンポを迎えた訳です(笑)。 『カケラ』 のシンポにも出ましたが、夕べから驚愕しています」。

 洲崎 「監督とは、ドコモの携帯ドラマでご一緒しました。 本編は、今回が初めて。 そういう作品で湯布院へ来られて、嬉しいです。 お手柔らかにお願いします」。 彼女は、2年前のゲスト・平山秀幸監督の 「しゃべれども しゃべれども」 等の編集も担当されています。 猪腰助監督 「はじめまして。 俳優の代りに、ついて来ました(笑)。 初めての湯布院です。 毎日、美味しい料理やお酒をご馳走になってます。 宜しくお願いします」。
 司会から沖元Pに、なぜ金子監督にオファーを出したかの質問、「傾向が違うのでは?」。 沖元P 「原作者の意向もあり、より広い客層に観てもらいたい、そのためにはエンターテインメントの撮れる人ということで、金子監督に依頼することにしました」。 金子 「原作を読んで、“ これを俺がやるの?!”。 怪獣も出てこないし、マンガっぽくもないし。 かなりエロい描写もあるんですよね。 娘が中2になってるんで、逡巡しました(笑)」。 そう思いつつも、どんどん進みだします。 「ラストは原作通りなんですけど、最初読んだ時には、“ このラストで終われんの?!” という感想でした。 シナリオは、あれで終れるように組んでいきました」。 そして目指したのは、男の青春後期の10年くらいを、女との関わりの中で描いてみたい、ということ。 では、額子という強烈な女を誰がやる?! 監督 「内田有紀ぐらいがやったら成功するかも、と言っていたら、“ やる ” という返事が来て」。 以下、キャスティングは、監督の希望通り、すぱすぱ決まっていきます。 司会 「美脚も好きな監督だけに、しっかり見せてくれてますよね」。 監督 「チャーミングな所ですから(笑)」。 助監督 「やるからとの連絡を、2月末に貰いました。 原作を読んだだけでは、どういう映画になるのか見当がつきませんでした」。 その原作は連作短編であり、シナリオでは構成がだいぶ変えられたのだそう。
 窓ガラスの向こうの空は、だんだんと晴れつつあります。 助監督 「どの現場でも、女優が監督に惚れていくんですよね。一番いい所、綺麗な、可愛い所を見つけてくれますから。 金子マジック!(笑) 術中に、はまるんです。 ま、気持ちだけの問題で、それ以上はないんですけど(笑)」。 洲崎 「芝居が高揚している所を、監督が狙ったポイントを外さないようにつないでいます」。助監督 「額子が泣き崩れるあの長廻しが、ラストカットでした。 皆、じ〜んとして。 監督も。 “ 監督、良かったですね ” って言うと、“ これが演出だよ ”(笑)って」。 監督 「フィクションが入ってる(笑)。 成宮くんと内田さんに、“ いい画(え)が撮れたよ ” って言葉をかけて、その流れでの “ これが演出だよ ” なんですよ」。

■30日(日)■ ≪シンポジウム 「ばかもの」 15:45 〜17:00≫ *後半

 原作には、2人の間に流れた歳月がどれくらいか具体的には書かれていなかったのだとか。また、どうして秀成がアルコール依存症になっていくかの理由も。 「やわらかい生活」 問題の荒井さんと懇意な倉敷のOさんからは、意見発表の前ふりで、「今年は脚本家特集なんだから、全作品のシナリオライターに来てもらいたかった。 本作の高橋美幸さんにもおいで頂き、“ 原作者に嫌われないシナリオの秘訣 ”(笑)などお訊きしたかったものです」 という、誰かが言わないかなと思っていた点に絶妙なタッチで触れるひと言があったのでした。
 原作の設定を180度変えた所も、一つならずあります。 事故に遭った某人物は、原作では起こしてしまう方でしたし、別の人物は殺される方ではなく加害者側でした。 監督 「喪失感を出すには、殺される方が良いのではと考えまして」。 女性の観客からは、再会後の額子を褒める声、しきり。「髪の色が変わった姿で、派手な色のパンストを履き、すっくと立って! すごく格好いいヒロインでした」。男性客の多くも、同様に感じていたことでしょう。 再会シーンの額子は、確かに鮮烈でした。 しびれました! 前述したように、その後で秀成に料理を作る場面も。 一方、男女で感想が分かれたのは、ベッドシーン。 「最初の頃は、激しいからみが出てきて、スクリーンをじっと観ていられないぐらいだったんですけど...」 は比較的年配の女性から。 「もっとスパッと脱いでくれないと!」 は、もちろん(笑)。

 私は、2回連続シンポで発言したため、“ もし誰も挙手しない場合には ” の姿勢で待機していたのですが、常に複数の人が手を上げている状態であり、故にマイクを握ることはありませんでした。 成宮くんは、監督が面接して即決だったのだそう、「こいつと作りたいな、って」。 シナリオ作りには、紆余曲折があります。 まず、エグゼクティブ・プロデューサーの奥山氏が、原作通りのシナリオを高橋さんに発注します。 監督 「以前、もめてましたから(笑)。 この段階では、僕はまだ関わっていません」。 シナリオと、金子監督の名前の記された企画書とが、原作者に渡され、OKが出ます。 その後、金子監督が加わり、シナリオを改変するための打ち合わせに、原作者の住む高崎市へ。 「ピリピリしてましたね。 ダメなら、下りるつもりで」。 当初、監督は、御巣鷹山に日航機が墜落した1985年から始まり、1995年で終る10年で提案。 絲山さんには、「違う」 と否定されます。 2人の間に流れる時間の長さが10年という解釈でも良いが、この10年ではないと。 御巣鷹山で始まったら、尾を引くのだとか。 被害者の遺族や事故の関係者がいたりするので。 監督 「絲山さんはたぶん、あの小説では時代背景を考えていないんですよね。 とにかく、長い間という感じ」。 未来にするか?━━ も、すぐ “ 違う ” となり、2000年から現在までの10年ということでOKを得ることに。 で、映画は、モー娘の「LOVEマシーン」で始まる訳です。

 次は、脚本の高橋さんとの闘争に突入。 一旦は原作にほぼ忠実に完成させているので、思い入れがあるのです。 当然でしょう。 監督 「大変だったんですよ、書き直してもらうの。 高橋さんがいないので、あまり言いませんが」。 そのバトルからまだ何ヶ月も経っていないので、高橋さんをお迎えして、脚本家と監督との攻防の生々しい舞台裏を語って頂きたかった! 助監督 「ラストに出てくる川岸の大きなあの木は、本物なんですが、別の場所から移植したんです。 あれを探すのが、一番手間でした。 もっと上流の山の方にあったんです。 でも、その辺りは川幅が狭く設定に合わないため、木を購入して、3台の重機で運ぶことに。 穴を深く、大きく掘って、根っこを埋め、立たせるのも大変でした」。 ラストは監督が、ファンタジックな映像にならないと終れないと考え、ああいう風にしたのだそう。 「幸福感を出したかったんですよね。 “ 優柔不断な監督の決断 ” というところです(笑)」。 ここらで、お時間に。 早く配給を引き受ける所が決まり、予定通り来春頃には公開されますように。 岡山でも!

湯布院映画祭レポート09(17)

 「ばかもの」のシンポが終ったのは17時前。 クロージング作の入場開始は17時40分頃の筈なので、小走りに定食屋へ向かいます。 この時刻にはかなり涼しくなっており、特に汗ばむこともなく、到着。もう1軒は既に店を閉めていましたが、昨日も寄ったお気に入りの方が開いていたので、去年から食べたいと狙っていたホルモン焼き定食をオーダーします。この辺りは豊後牛が有名ですから、ホルモンも期待できるかなと思ったのですが、正直、外れでした(笑)。 来年は、トンカツとか唐揚げとかの無難な定食を選ぶことにしましょう。店が開いており、 さっさと食べられたので、まあOKです。 戻って、列に並ぶことに。

■30日(日)■ ≪ 特別試写 「笑う警官」  18:00 〜20:00 ≫

 クロージングは、あの角川春樹が11年ぶりに監督する話題作です。 原作は、佐々木譲の人気シリーズの1作目。 脚本も、監督自身が担当しています。 主演は、2003年に 「ヴァイブレータ」 のゲストとして来祭された大森南朋さんと、松雪泰子さん。 場内は、初の満席です。 司会 「今年の湯布院映画祭も、最後の1本となりました。 11月公開予定の 『笑う警官』 です」。 ゲストは、監督と、大ベテランの名キャメラマン:仙元誠三氏。 舞台に現れた監督は、白いサマースーツにボルサリーノ姿です! 会場が軽くどよめきました。 がっしりした体型の仙元さんは、楽な服装。 仙元 「20年ぶりに呼ばれました。 こんなに大勢の人の前で挨拶するなんて。 ゆっくり観て、帰ったら宣伝して下さい」。 生で見るのは初めての角川監督はびっくりするぐらいソフトでいい声をしてらっしゃいます、「映画を始めたのは33年前で、図らずも 『湯布院映画祭』 がスタートしたのと同時期になります。全国で初めて、この映画をご覧いただきます。 この湯布院は、『天と地と』 で1ヶ月間泊まって撮影した思い出がある懐かしい地です。 今回、クロージングで上映してもらえる事になり、喜んでいます。 実は、ローリングタイトルにホイットニー・ヒューストンの曲を流せる事になり、それを入れての1回目の試写になります。 音楽とのメディアミックスが理想的な形で出来上がりました。 どうぞ、お楽しみに!」。 帽子を脱いで一礼し、仙元さんと2人、袖に消えていかれます。

【 北海道警察による組織ぐるみの汚職事件と、それに立ち向かう真っ当な警部補・佐伯(大森南朋)や同僚の小島百合(松雪泰子)たちの無謀に近い戦いを、たった一夜に凝縮して描く、タイムリミット型サスペンス&クライム・ムービー。 原作小説は、2002年に実際に起こった事件を元に執筆されました。(パンフの解説を改変) 】

 本作は11月に公開されますので、ご覧になるつもりの方は、以下の文とシンポのレポは斜め読みしてもらった方が良いかもしれません。 具体的すぎる記述やネタバレなどはありませんが、映画鑑賞の足を引っ張ってはいけませんから。
 昨年は 「次郎長三国志」、一昨年は 「やじきた道中 てれすこ」 と2年連続で時代劇がクロージング作品に選ばれました。 時代にズレているとしか思えないセレクト。 ほとんどノレませんでした。 それらに比べると、「笑う警官」 はかなりましに思えたし、今年春頃から、本作と同じく警察を舞台にした小説 「隠蔽捜査」 シリーズ(今野 敏 著)の刊行済みの3冊を夢中になって読んだだけに、結構楽しみにしていたのですが・・・・。 スクリーンの中の世界がどうにも弾んでこなくて、前半は少なからず居眠りに襲われてしまいました。 後のシンポで監督が 「舞台劇をめざした」 と述べられ、なるほどと一瞬は納得したものの、“ 映画でそれをやられてもなぁ ” と愚痴りたくなります。 クライマックスも、もっと派手な銃撃戦になるのかと思いきや、拍子抜け。 まあ、日本でそういう事態になる方がおかしいのですが。 また、ホイットニー・ヒューストンの曲も、特に良いとは思えません。 そうそう、あと、タイトルやクレジットが英語表記にされていたのですが、どうもそぐわなくて。

 その年のダントツのマイ・ベストワン作品となった 「フラガール」 で締めくくったのは、2006年でした。 これで、翌年から3年連続、クロージング作品は “ 外れ ” という結果に。 映画祭も尻すぼみの印象。 昨年の 「次郎長三国志」(マキノ雅彦監督)といい、今年といい、映画界のベテランに敬意を表し、それが主たる理由でクロージングにプログラムされたのではないでしょうか。 もっと作品本位で選んでくれないと。 2003年には、成島出の監督デビュー作 「油断大敵」 をいきなりクロージングに持って来て、唸らせてくれた 『湯布院』 なのに....。 色々と作品には不満があるものの、シンポの面白さは別物。 どんな角川節が炸裂するのでしょうか。 2階へ急げ! あ、女優ゲストがいる訳でもないので、その必要はないか(笑)。


■30日(日)■ ≪シンポジウム「笑う警官」 20:15〜21:45≫

「カケラ」 の時と同じく、右側サイド席の2列目に腰を下ろします。 前の長机は、いつものように左端が司会者席になっており、中央に角川監督、右端に仙元キャメラマンがご着席。 映画は満員でしたが、その後のシンポにまで出席される人は多くなく、今回は70人ぐらいでしょうか。 日曜夜のこういう時間帯ですから、例年、こんなもの。 もちろん正式なポスターが出来上がっており、それが数枚貼られています。
 本作は当初、別の監督の手で準備が進められていました。 それが━━。 角川 「11年ぶりのメガホンになります。 3週間後にインしようかという段階で、監督が “ 自信が持てない ” と言ってきまして。 シナリオを読んだ時から不安はあったんですが。 それで、急きょ私が、監督と脚本を兼ねる事に。 刑務所にも入ってるし、俺がやることになってたのかな、って(笑)。 逆境に強いですから。 で、仙ちゃんに電話して、無理やり引き受けてもらった」。 キャメラマンも、当初は別の人だったのか。 仙元 「角川さんから直接電話がかかってくるのは、それまで一度もなかったんですよ」。 シナリオは、3日間で書きあげたのだそう。 角川 「どんな名監督でも、原作通りにやると映画が負ける。 原作者と観客を裏切ってやろう、と。 “ 映画は原作を超えるか ” がキャッチフレーズ。 佐々木氏が “ 原作より2枚も3枚も奥行きがあって、負けました ” と言ってくれました」。

 観客からの発言コーナー。 「音楽が多すぎて、犯人を追う観客の集中力が落ちたのでは」 や 「エンドクレジットは、英語ではなく日本語にしてほしかった。 あれでは、キャストやスタッフが確認できない」 などの声。 角川 「ホイットニー・ヒューストンの曲の歌詞だけ日本語で出し、それを読んでほしかった。 音楽は、これでも減らした方なんで」。 監督は気さくな感じで、サービス精神に溢れたような喋りをしてくれます。 角川 「インまで3週間というのは、明らかに準備不足なので、最初から80点をめざしました」。 客席からは、手が上がりません。 こういう空白タイムが生じたのは、今映画祭のシンポでは初めて。 皆さんも、あまり満足されてないということなのでしょうか。  司会 「実は、原作を2度読んできたのですが、あまりにも映画が違うので、進め方が飛んでしまってまして(笑)」。 韓流ドラマにはまっている女性からは、素晴らしいという感想、「役者も適材適所。 音楽も内容に合っており、景色もきれいでした!」。 角川 「全部、実際の事件ですから。 過去、証言台に立った人がこの映画を観て、泣いてました。 この通りなんだから」。 原作にはラブストーリーの要素がなかったのだそう。 「佐々木氏はラブシーンが苦手なんで。 映画には、入れるようにしました」。 否定的な意見が出ると、 仙元さんが意外にも熱弁をふるわれます、「好き嫌いは人それぞれだけど、どうかもう1回観て下さい。 そして、ここで言っている事を確認してほしい。 準備期間が少なかったが、私はやり遂げた感じがしてます」。

 途中、角川氏が、「俺が、1800円取れない映画なんか作る訳ないじゃないか!」 と声を荒げる場面も。 昔のシンポはこういう遣り取りが随所で見られたのでしょうか。 でも、少ししらけました。 肩入れしたいと思えるほど本作に惹き込まれていなかったので。 仙さんがすかさずフォローというか、場の空気を和ませます、「監督、短気だから(笑)」。 いいコンビです。
 今回は舞台劇でやろうとした、と角川氏。 だから、ラストのカーテンコールは、ああなっているのだと。 角川 「準備に3週間しかなかった事を言い訳にするつもりはない。 出来上がった作品が、全て。 初号試写には、崔監督を呼びました。 佐々木氏の別の作品を映画化する話があるんで。 “ 3分の1ぐらいまでは角川テイストだなと観ていたが、残りは誰が監督か忘れて観て、作品性を感じた ” と言ってくれました。 とにかく今回は、映像的な見せ場はなし。 人間ドラマしかないんです!」。 大森、松雪、2人の力を測りながら進めていったとの事。 「松雪がピッチャーで、大森がキャッチャーだと、現場で変えました。 シナリオも毎日変えてたなあ、イン前に直し切れなかったので」。 松雪さんは、役に対する理解力がすごいのだとか。 「いま一番優れている女優でしょう」。
 仙さんからのリクエストで、客席におられた金子監督にも意見をお訊きします。 金子 「角川映画では 『メインテーマ』 の助監督をやりました。 今回の作品は、撮影が素晴らしかったと思います。 ストーリーは、正直ついていけなかった所があったんですけど。 俳優では松雪さんが良くて、また大森さんの芝居が自然体だったのも良かったです。 いつか一緒に仕事をしてみたいと思わされました」。 角川 「最初の予算は3億でした。 キャメラ、監督、照明を降ろしたので3億2千万かかりました。 150万人動員出来なければ、監督を辞めます。 そういう風に追い込んでる。 ・・・・ ホイットニーがかなりバックアップしてくれたな」。 監督料も脚本料も貰っていないのだそう。
   相変わらず、あまり観客からの意見は出ませんが、肯定派としてはキャスティングを褒める声が複数あり、 否定派は 「話を追うのが大変で、分りづらかった」 という内容のものがこちらも複数。 角川 「観客をだましたい。 ●が演じたあの役は公安警察なんですよ。 家族にも言わない。 国家に所属している。 説明は省いてますから」。 本作には松山ケンイチがゲスト出演しています。 彼は、角川春樹プロデュースの 「男たちの大和」 にメインキャストの1人として出演。 角川 「ケンイチは、私の手掛ける全ての映画に出たいって言って、自前の衣裳で一日だけ参加してくれたんですよ」。 松山くんは、「ユージュアル・サスペクツ」 のケヴィン・スペイシーを真似て役作りしたとの事。 「おんぶして!」 は、ちょっと悪のりしてのアドリブ。 相手役の宮迫博之も、重いのを我慢して付き合ったそうです。 この辺りで、時間切れ。 まあ、生ハルキに出会えたので、それなりに満足しました。 これ一度で、もう充分ですが。 最後は、仙元さん、角川監督の順での普通の挨拶で、2009年 『第34回湯布院映画祭』 の全プログラムが 終了したのでした。

 このシンポも、つまらなくはなかったものの、あの怒鳴り声ぐらいしか収穫はなし。 これで本当にクロージングだったなら、今映画祭は尻すぼみの印象を免れなかったでしょう。 でも━━。 さあ、ファイナルパーティーが待っています!

湯布院映画祭レポート09(18)

■30日(日)■ ≪ ファイナルパーティー 22:00〜 ≫ *序盤

 夜空に星やお月さまは見えませんが、雨の心配はなさそうです。 今夜は、徒歩10分ほどの [ ゆふいん健康温泉館 ] にて。 4夜の内で、最も宿に近い会場になります。 明朝は始発で出立するため、閉宴後は5分でも10分でも早く就寝したい私には好都合。 以下、昨年の本レポを丸写しして、ちょっとズルさせてもらいます(笑)。 【 ここは、大きなガレージのような屋内スペースと、隣接する庭園がパーティーに使われます。 食事は屋内部分に用意され、おしゃべりは庭園も使って下さい、というのが大まかな区分け。 】 この後、昨年は 【 並べられてある丸テーブルの数が例年より2つぐらい減っており、“ 今夜も参加者が少ないのか ” と、ちょっと寂しい気持ちになりました。 】 と続けたのでした。 今年は、そんな事はなく、ほぼ例年並みの混み具合だったと思います。 昨夜のパーティーで河井さんに 「明日もいいですよ」 と予告した料理は、当地の各ホテルや旅館の若手料理人たちがこの日の仕事を終えた後、ここへ出向き腕をふるってくれたもの。 何種類もの料理が1人前ずつ紙皿に盛られ並べられています。 早めに到着した参加者の何人かは、それらを熱心に写真に収めていました。 また、パーティーが始まってからフライパンで作り始め、熱々が頂ける料理も!

 乾杯前のご挨拶で、旅館業組合からの来賓の方は、「私たちに出来るのは、来年も皆さんをお迎えすること。 是非、いらっしゃって下さい!」。 料理人の代表の方は、「料理人同士、こんなに仲が良いのは、全国でもここだけなのでは」 と誇らしげにおっしゃっていました。 乾杯のご発声は、角川春樹氏より、「町をあげての映画祭に思えます。 これからも長く続けて下さい。 カンパ〜イ!」。 氏はお疲れになっていたようで、この後すぐに宿へ戻られたのでした。 さあ、好みの料理を取って来て、回転寿司のように空にした皿を何枚も積み上げていきましょう! ・・・・ 4〜5枚で、お腹いっぱいです。 料理と2種類のおにぎりがのったお皿などもあるのですから。 ひと通り食べるなんて、無理!(笑) この食事専念タイムの際には、同じテーブルに大分市内から毎年のように参加されている方々がおられ、シンポで私が 「岡山から来ました○○です」 と発言していたのを記憶されていて話し掛けて下さったので、会話に花を咲かせたのでした。 私が、「大分市内には 『シネマ5』 というミニシアターがありますよね。 いつか行ってみたいと思ってるんです」 と言うと、「よくご存知で!」 と喜んで下さいます。 岡山市の 『シネマ・クレール』 についても、お教えしたのでした。

 さあ、まずは 「PASSION」 組の河井さんに、改めて映画の感想をお伝えしなければ。 が、各テーブルや、芝生の上で話を交わしている人たちの中には発見できず。 ふた回りして、ようやく! 河井さんと濱口監督は、庭園の端の方のあまり明るくない場所にあるベンチで飲食されているではないですか。 そばへ行き、「なんだ、ここにおられたんですか。 探しましたよ(笑)。 映画、すごく良かったです!」。 「シンポジウムでは、ありがとうございました」、河井さんはにっこりして下さいます。 「何十人もの前で発言するのは結構勇気が要るんですけど、挙手せずにはいられないぐらい良かったので」。 「そう。 緊張しますよね」 と河井さん、「なので、あまり話せませんでした」。 「そんな事ありません。 すごく落ち着いて見えて、しっかり話されてましたよ。 ほんとに緊張されてたんですか? そう見せないところは、さすが女優だなぁ(笑)」。 あのダンプが乱入してきた長廻しのシーンについて演じていて危なくなかったのかお訊きしたのも、この時。
 リハーサルは1週間、撮影は河井さんの出演部分は6日間で、映画全体では10日間ほどで撮ったとの事。 「10日間で?! あれだけの長さの、あのレベルのものを10日間で撮ったんですか?!」。 すごすぎます! 益々この作品の ・・・・ 監督の評価が高くなったのでした。 完成済みの2作目も、60分ほどの自主映画。 シンポで司会者は、一般公開の予定があるという風に言っていましたが、正しくはまだ何も決まっていないのだそう。 「PASSION」 と同じような道を辿ることになるのでしょうか。 早く、商業映画のメガホンを取る機会が訪れますように! 濱口監督はこんな外れの場所におられるから、4年前の 「ヨコハマメリー」 の時のような “ 突然、人気者状態 ” にはなりませんでしたが(今回は、「ヨコハマメリー」とは違い俳優ゲストが3人もいたので、取り囲む人が分散したのかもしれません)、こうして私が話していると、常連の5〜6人のグループの皆さんが周りを囲むように集まってきたので、独占状態を解除し、「また、あとで」 とその場を離れたのでした。


■30日(日) ■ ≪ ファイナルパーティー 22:00〜 ≫ *中盤

 ゲストの皆さんをステージにお呼びして、ご挨拶を頂いていきます。 まずは 「PASSION」 組から。 濱口監督 「たくさんの方に観て頂き、嬉しかったです。 またシンポジウムやこの場でも、沢山のご意見を頂戴しまして。 直接聞けるのは、とてもありがたかったです。 好意的なものが多かったのですが、否定的な感想もどうぞ聞かせて下さい」。 河井 「これまで映画祭で上映される事はあっても、ゲストで呼ばれるのは初めてで、感謝しています。 毎日、満喫しています。 シンポジウムでは緊張しました。 この後、私にも感想を言って下さい」。 岡部 「今日観たのが3回目ぐらいだったのですが、1、2回目はまともに観られませんでした。 今回初めて冷静に観たら、面白い!(笑) この映画祭で皆さんと観られたから、余計そう感じたのかもしれません。 ありがとうございました」。 渋川 「初めまして。 聞く所によると、この映画祭は34年前にスタートしたとか。 同じ時に生まれた映画祭に招待され、とても嬉しいです。 記憶がなくなるぐらい呑ませてもらってます(笑)」。

 「ばかもの」 組です。 金子監督 「念願の湯布院映画祭で上映され、光栄です。 伝説のシンポを乗り切ったと思ったら、『笑う警官』 のシンポで突然指名されまして(笑)。 最後までサスペンスフルな映画祭でした」。 沖元プロデューサー 「東京の映画関係者から、ここのシンポでは相当ぼこぼこにされるぞと脅かされてきましたが、かなりの高評価を貰い、ほっとしました。 でも、その分宣伝をしっかりしなければ、とプレッシャーを感じています。 頑張りますので、応援して下さい」。 ここで男女の司会者コンビから、「沖元さんは明日、『ばかもの』 のフィルムを抱えて東京へ帰られます(笑)」 と紹介があったのでした。 そして同日、関係者試写があり、それを白石美帆さんがご覧になられたという訳です。 編集の洲崎さん 「今日は、皆さんの映画愛に満ちたご意見を聞けて、嬉しかったです。 それを励みに、これからも頑張っていきます。 素敵な映画祭なので、長く続けていって下さい」。 猪腰助監督 「成宮寛貴です(笑)。 本来なら役者を連れてくるべきなのですが、予算の都合で助監督になりました。 毎日、美味しいお酒と料理を頂けて、ほんとに良い所でした!」。

 前日までのゲストの方々からも。 林海象さん 「今回はプロデューサーとしてでしたが、次回は監督作品と一緒に来ますので!」。 荒井晴彦さん 「脚本家特集、ありがとうございました。 監督より偉いとは言わないが、同等に扱ってほしい。 まだ、日陰の花です。 生きてる内にもう一度、脚本家特集を!」。 野村正昭さん 「シンポジウムの司会、楽しかったです。 また面白いシンポに加われれば、と思います」。 後で倉敷のOさんから、荒井さんと井上さんが共同でシナリオを執筆された映画が、間もなく完成予定という朗報をお聞きしました。 これをきっかけに、どんどん荒井脚本が映画化されますように!

 懇談タイムです。 参加者仲間と雑談した後、「ばかもの」 の編集を担当された洲崎さんともお話させてもらいました。 シンポで一応準備していながら発言できなかったので、誰か関係者の方に感想をお伝えしたかったのです。 「 『ばかもの』、良かったです。 シンポジウムで誰も手を上げない時があったなら挙手しようかと思っていたのですが、ずっと発言が続いたので」 と、白石さんのブログに書き込んだのとほぼ同じ内容をお話ししていくと、すぐに打ち解けた表情を見せて下さいます。 どきっ...!! おそばで拝見すると、すっごくお綺麗な方ではないですか。 シンポでも、業界の方にしてはちょっとキレイかも、という感じだったのですが、やはり緊張して頬が強張っておられたみたいです。 今はリラックスされているので、表情が柔らかさを取り戻していますし、優しい目がとっても、とっても魅力的で!
 河井さん、ごめんなさい。 ひかりちゃん、悪い。 中村さん、すまない。 サクラちゃん、勘弁な。 黒沢さん、悪しからず(笑)。 私にとっての今夏の 『湯布院』 のヒロインは、大逆転で洲崎さんに決定したのでした。 彼女との事は内緒にして心の引き出しにこっそり仕舞っておこうかとも思ったのですが、その内どこに入れたか分らなくなりそうなので、やはりここへ記すことに。

 とても話しやすい方なので、映画全般についていっぱいお喋りします。 昔から金子監督が好きで、彼女の方から 「何でもしますので」 とアプローチして、今回初めて本編の仕事を一緒にする事になったのだとか。 「女優がみんな綺麗に撮られてましたね」 と言うと、洲崎さんは 「金子監督と犬童監督の2人が、特に上手いと思ってるんです」 と教えてくれます。 私も、異論はありません。 彼女は映画学校とかは出ておらず、東映に掃除でも何でもする下働きのスタッフとして入り、ここまで来たのだそう。 2年前の秀作、平山秀幸監督の 「しゃべれども しゃべれども」 の編集もなさっており、「大好きなのでDVDも買ったんですよ」 と言うと、キラキラする笑みをこぼしてくれます。 「あの年、平山監督がこの映画祭のゲストでおいでになり、“ 伊東四朗さんや国分くんの落語の完全版が収録されるならDVDを買おうかと思ってるんです ” とお話しすると、“ 入りますよ ” って教えてもらったので、早速予約を入れたものです」。 あれは撮影後すぐに 「特典映像に付けたいね」 という話が現場で出て、ネガを切る前にフルバージョンをビデオにダビングしていたのだそう。

■30日(日) ■ ≪ ファイナルパーティー 22:00〜 ≫ *終盤

 半分 “ ほの字 ” 目線で書き綴っている洲崎さんとの会話は尚も続きますが、これは私が記憶しておきたいがため(笑)。 どうぞ、スルーして下さい。 平山監督とは 「OUT」 の編集助手として初めて仕事をして、以後はずっと組んでおられるとの事。 「しゃべれども〜」 の脚本家である奥寺さんとはすれ違いになってしまい、残念そうな表情を見せておられました。 平山監督には2005年の 『ゆうばり映画祭』 でもお会いした事をお話しします、「お別れする際、“ またどこかの映画祭で会いましょう ” と言ってもらい、一昨年の 『湯布院』 でその思い出を打ち明け、再会を喜び合ったんですよ」。 「しゃべれども〜」 では、香里奈さん演じる五月が演目を変え、丸々新しい噺を覚えて、それを愛の告白代りにするシーンで泣いてしまった事を白状すると、嬉しそうに 「奥寺さんの力ですね」。
 テレビ放映された 「明日に向って撃て!」 が、一番初めに “ 面白い!” と感じた映画なのだそう。 特に、ラストのストップ・モーション。 私は同作も勿論好きですが、ジュージ・ロイ・ヒルの映画で一番なのは 「リトル・ロマンス」 だと答えます。 洲崎さんはご覧になっていないとの事。 「ローレンス・オリヴィエも出てますし、このラストもストップ・モーションの名シーンになってるんですよ」 とプッシュすると、「わぁ、観ます!」 と笑顔。 金子監督の 「プライド」 も大好きなんです、と話題を変えると、そばにおられた猪腰助監督に、「こちらの方、『プライド』 が大好きなんですって!」 と声を掛けられます。 お2人に、「続編も観たいです!」。 残念ながら、その予定はないのだとか。 昨夜は、「プライド」 主演の満島ひかりちゃんと、ワイワイお喋りしたのだと教えてくれます。

 私が 『青春18きっぷ』 で片道11時間かけて往復するのだと言うと、目を丸くされました。 洲崎さんは、白鳥さんのスクリプター講座が催された2005年の本映画祭には、一般客として参加されたのだそう。 泊まったのは、事務局を通じて申し込んだ、この会場そばの相部屋の宿。 その際、同室だった人に自分は映画の仕事をやっているのだと打ち明けると、「今度はゲストで来られますように、って言ってもらったんです」。 そして今日、何とその女性と再会、「 “ ほんとにゲストで来られたのね!” と、すごく喜んでくれたんです」。 鼻の奥が、つんとしてしまいました。
 そんなお話を続けていたら、途中で、実行委員長からの締めの挨拶が行なわれることに。 中断して、注目します。 「 『黄金花』 の木村監督は91歳。 “ その歳まで委員長をやれ ” という声も聞きましたが、まあ、それは無理です(笑)。 来年は少し形を変えることになるかもしれません」。 そしていつものように謙虚(?)に、「もし開催できたなら、おいで下さい」。

 そろそろ潮時。 洲崎さんとお別れの挨拶 ・・・ ではなく、再会の約束を交わします、「きっとまた近い内に、おいで下さいね!」。 メアドを訊くか、こちらからお教えするか、はたまた本映画祭の拙レポを書き込ませてもらっている当掲示板のアドレスでもお伝えしておけば良かった(悔!!!)。 とにかく、洲崎さん始めゲストの皆さんのお蔭で、「笑う警官」 を観た後は、尻すぼみの印象だったのに、一転して、“ まだまだ帰りたくない!” ほどの気持ちにしてもらったのです。 最高のファイナルパーティーになりました。 あぁ、それにしても、洲崎さんとは今度いつお会いできることか。 今年初参加した 『高碕映画祭』 の授賞式に来年も足を運びたいと考えているので、もしも 「ばかもの」 が3月の同映画祭と同じ時期にタイミングよく公開されたなら、東京の公開館での初日舞台挨拶の回のチケットを取ってしまいそうです。 “ 洲崎さんもきっと映画館まで来られる筈 ” と期待して(笑)。 その前に、何かの映画の編集クレジットの表示で、彼女の名前と再会できるかもしれません。 これからは、エンドロールになったからといって、すぐ席を立たないようにしなければ。

 ゲストの皆さんへお別れの挨拶をして回ることに。 濱口監督へは 「ぜひ、早く商業映画を撮って下さい!」 とお願い。 横に岡部さんがおられたので、「お話する機会がなかったのですが、『PASSION』 の中で一番感情移入できたのは、岡部さんが演じられた役だったんです。 お2人とも、またゲストでおいで下さい!」。 何人もに囲まれている河井さんにもしばらく待って、「まだこんなに注目されていない昨夜の内からお話ししておいて、良かったです(笑)」。 最近はテレビドラマ 「中学生日記」 に出演されたそう。 「 『PASSION』 で教師役をやったので、それを見てくれたのかと思ったのですが...」、謎の女役(笑)なのだとか。 「いっぱいお話できて、本当に嬉しかったです。 また、おいで下さいね。 ご本人にお会いできるのが一番ですが、スクリーンでも再会できますように!」。 女優さんとこんなにお喋りできたのは、今回の河井さんが初めてでした。 これも、とっかかりを作ってくれたS原さんのお蔭です。 そのS原さんは、来年もご参加できそうとの事。 「少なくとも金・土・日の3日間は来られると思います。 来るたび知り合いが増えて、今年もかなりの収穫がありました。 でも、知った人が多くなるとシンポで発言しにくくて(笑)」。 きっと、来年また、ここでお会い出来ることでしょう。 その前に、『宮崎映画祭』 へ2度目の参加が叶えば最高なのですが。 今回S原さんがお連れ下さった宮崎のHさんや福岡のRさんも、これからは常連になって頂きたいもの。 2年前の本映画祭に弾丸ツアーもどきの強行軍で参加された、Rさんともお知り合いの千葉の浜野さんもおいでにならないかなぁ。 もちろん、高崎の友人や、名物論客・滋賀のOさんが 「あの子にも、よろしゅう伝えとくれやっしゃ」 とおっしゃっていた水戸の黒さんたちも。

 後ろ髪を引かれながら、宿への田舎道を急ぎます。 お風呂は交代制のため、もしも映画祭への参加者が宿泊していて先に入られ長湯されると、就寝時刻が遅くなってしまいますから。 幸いそういう事もなく、1時前には床につくことが出来ました。 明朝は4時過ぎには起床して最終的な荷造りをすると共に、買い置きのパンで朝食を済まさなければ。 駅まで大きなバッグを持って歩くので、それまでお天気がもってくれますように。 普通はその夜の内に記す本レポ用のメモも、始発電車に乗ってからです。 さて、レポはもう1回だけ続きます。 「20世紀少年 <最終章>」 がエンドロールの後にも、まだ10分ぐらいあったように(同作は未見なのですが 笑)。

湯布院映画祭レポート09(19)

 翌31日(月)の明け方も、雨に見舞われることはありませんでした。 今映画祭では、とうとう一度も折り畳み傘の出番はなし。 降った事はあったものの、その時間帯はずっと会場内にいましたから。 涼しくて過ごしやすかったし、ラッキーでした。 天候に恵まれたのが大きかったのか、昨年よりは動員が増えたので、ひと安心。 ただ、今年も通路までぎっしりという人気作品がなかった事もあり、観客数の減少傾向に歯止めをかけられたとは、どうも言えないみたいです。 それで、昨夜のパーティーでの、委員長のああいう締めの挨拶になったのかもしれません。 常連の参加者は、年々高齢化。 もっと、若い層が増えてくれれば良いのですが。
 曇りのためまだ薄暗い中を、由布院駅始発の5時41分の各駅停車に乗り込みます。 大分駅で乗換え、小倉へ向かう車中で8時半頃に短時間雨に遭ったものの、小倉が近くなった頃からはずっと青空。 4日前湯布院に向かった時以上にきれいな瀬戸の海を右手に眺めながら電車に揺られ、岡山駅へは17時過ぎに帰りついたのでした。 車中ではずっと、会期中に半分ぐらいしか読めていなかったパンフを熟読したり、今映画祭に関して色んな所へ書き込むための下書きを行なったりしながら。

 いつの間にか、閉幕から1ヶ月以上が経ちました。 レポで取り上げた話題の中で、その後なんらかの動きがあったものについて、 ご紹介しましょう。 まず、白鳥あかねさんが脚本を執筆された 「脇役物語」は無事撮影が終了したとの事。記事になったので、知りました。
全国で1館でも多く上映されますように。 岡山でも、是非。
 「黄金花」 の配給を行なう 『太秦(株)』 が手掛けており、小林三四郎さんに鑑賞をお約束していたドキュメンタリー映画 「台湾人生」 は9月26日(土)に岡山のミニシアター 『シネマ・クレール』 にて公開。 初日には、酒井充子監督が舞台挨拶に来館され、上映後は2階ロビーにてトークも行って下さいました。 私はこの日の上映は時間が合わなかったため別の日に観たのですが、同日は他の作品を鑑賞しに同館へ足を運んだので、ほんの少しだけ監督のトークを拝聴できたのでした。

 また、毎年の本レポでお馴染みの脚本家:今井雅子さんとは、9月19日(土)に1年半ぶりで再会。3年前のちょうど 『湯布院映画祭』 の時期に生まれたお子さんにも初めて会わせてもらったのでした。 彼女の映画脚本作 「ぼくとママの黄色い自転車」 が8月22日に公開されたのですが、 クライマックスの舞台となった小豆島で9月19日に上映会が開催されることになり、バカンスを兼ね一家で東京からおいでになったのです。私の住む岡山県からは2つの港より小豆島行きフェリーが出ており、自宅から片道2時間ほどで着けるため、当然のように出かけていったという訳。2回の上映での入場客は、600人を超える盛況ぶり。 島の人口が約3万人ですから、総人口の2%以上が来てくれたことになります。地元だけあって、小豆島のシーンでは色んな意味で沸いてました。
 本作の井口プロデューサーもおいでになっていたのには、些かびっくり。 実はこの日、同プロデューサーの最新作が同じ香川県内でクランクインしていたのです。 それで、島へ渡ってこられたのだとか。 偶然にも程がある!(笑) その作品 「きなこ 〜夢を追いかける犬〜」 に ついては、1週間後ぐらいに撮影現場がマスコミに公開され各紙で 記事にされましたから、詳細を知ることが出来ました。 公開は来年の夏。『第35回湯布院映画祭』 と同じくらい待ち遠しいです(笑)。今井さんとは、今度は 『湯布院』 か、どこかの映画祭に彼女がゲストとして招待された時にお会いしたいもの。

 さて、本レポの最終回を記している今日は10月6日(火)ですが、最初の頃のレポに、“ 8月27日(木)に湯布院へ向かう際、小倉で途中下車して 「ノーボーイズ、ノークライ」(渡辺あや脚本) という映画を観ようかと悩んだが、映画祭のプログラムを優先した ” 旨、書きました。 ようやく昨日、同作を観る事が出来たのです。 岡山県とは瀬戸内海を挟んだお向かい、香川県高松市のミニシアター 『ホール・ソレイユ』 にて。 実は 「ぼくママ」 の小豆島での上映会を主催されたのが当館であり、スタッフのOさんと会場でご挨拶する機会を持て、「 『ノーボーイズ〜』 は岡山での上映が決まっていないので、10月にそちらで公開されたなら、久しぶりに岡山から観に行こうかなと思ってるんです」 とお話していたものですから。 仕事の休みを、メンズデーである月曜日にするのにも成功しましたし、“ これはもう行くしかないな ” と(笑)。
 5年ぶりとなる 『ホール・ソレイユ』 はビルの4階と地階に1スクリーンずつあるのですが (今井さんの日記に写真が掲載されてあるので参照して下さい )、 「ノーボーイズ〜」 のかかっている4階の受付にちょうどOさんがいらしたので、「先日はどうも」 から始まって色々とお話させてもらったのでした。 昨年、今年と、お客の入りがあまり良くないのだそう。 岡山のミニシアターでも、たぶん同様の筈。 今回、私が入場したからといって大勢に影響などありませんが、それでも “ 岡山から来てくれた! ” と思ってくれれば、少なからず志気が上がるのでは。 そう信じて、今後は何年も間隔を空けずに足を運ぶようにしなければ。 ちょうど11月には、これまた悲しいことに岡山での上映が決まっていない 「色即ぜねれいしょん」(湯布院ゲストの向井康介氏の脚本) が 公開されますので、もしかしたら早速に再訪となるかも。 とにかく、各地のミニシアターには頑張ってもらわなければ!
 「ノーボーイズ、ノークライ」は、「ジョゼと虎と魚たち」 と 「メゾン・ド・ヒミコ」 と 「チェイサー」 を足して、3で割ったような映画。 正直、それら3本ほどには惹き込まれませんでしたが、スクリーンで観られて良かったと思える作品になっていました。 エンドクレジットを眺めていると、湯布院ゲストの河井青葉さんのお名前が! え、出てた?! どの場面に登場されたのか判っていなかったのです。 河井さん、ごめんなさい! ファイナルパーティーで教えてくれれば良かったのに。 ちょっとしか出番がなかったため、口にするのを忘れられていたのでしょうか。 でも、まあ、エンドクレジットで河井さんのお名前に気づいただけ、ましだと自分を慰めておきましょう(笑)。 とにかく色んな意味で、本レポ完結前に観られて良かった作品でした。

 そうそう、一つ訂正を。 ファイナルパーティーの項で、“ 荒井さんと井上さんがシナリオを共作した映画がもうすぐ完成 ” と記しましたが、 あれは “ シナリオが完成 ” の誤りでした。 荒井脚本の映画化を願っていたので、この耳が都合いいように聞いてしまったみたいです(笑)。 久々のオリジナルなのだとか。 ご本人はあまり納得されていないようですが、得てしてこういう時こそ、あれよあれよという間に進んでいくもの。 何とか映画化が実現し、来年の 『湯布院』 での上映が決まって、今度こそ井上さんも正式ゲストとしておいでになれますように!

 いつもなら、本レポが終ると、今年もたっぷりと楽しませてくれたお礼も兼ね、映画祭に “ ある協力 ” をするのですが、 今回はパスです。 2年続けて計3度も些か失礼なことをされましたし、これ以上繰り返され本映画祭を嫌いになりたくもないですから。 それに、年末には車検が控えており費用を確保しておく必要がありますし、他の映画祭へもっと参加するための貯金にも回したいもので。 その貯金を使っての、泊りがけでの遠方の映画祭行きは、次回はどこになるでしょうか。 3月の 『高崎』 かな。
 12月の 『函館』 も、2月の 『あきた十文字』 『ゆうばりファンタ』 も、行きたいのはやまやまなのですが、いかんせん、 遠い....(『函館』と『ゆうばり』は一度ずつ参加経験あり)。 今回の 『湯布院』 にゲストでおいでになりお話しできた方々が、来年6月(たぶん)の 『宮崎映画祭』 に呼ばれる事になったなら、私も行ってしまいそうです。 「お会いしたかったので、岡山から来ました!」 と喜んでもらいたくて(笑)。

 さて、もう、ネタも尽きました。 今年のレポもまた、1日の上映回数や観客のお尻の痛さを考慮して程よい上映時間に編集したものでなく、 監督が自分のやりたいようにまとめたディレクターズ・カット版的な大長編になってしまいましたが、最後までお付き合い頂き、 ありがとうございました。 まだ、お会いした事のない方、いつか、どこかの映画祭にご一緒できたら、良いですね。 そして、私がレポで、実際よりかなりオーバーに盛り上げた書き方をしているのかどうか暴いて下さい(笑)。


                                     (終)